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話題のワンオペ中華『ムーダンジアン』の魅力。「名店の技×発想力」で紡ぐオリジナル料理

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築地場外市場で仕入れたキハタの切り身をセイロで蒸す

2軒目のオーナーシェフからも多くを学んだ

「料理のベースは『赤坂璃宮』で学んだ広東料理ですが、酒を楽しめる中華料理を出すように心がけています」

この考え方は『赤坂璃宮』を辞めた後、4年間働いた中華料理店で学んだ。2軒目のオーナーシェフは、酒を美味しく飲める料理を出す人だった。しかも割烹出身だったこともあり、自由な発想で、型にはまらない中華料理を作る人だった。『赤坂璃宮』で広東料理の基礎を叩き込まれ、2軒目のオーナーシェフからはもっと自由に中華料理を作っていいことを学んだ。

「『赤坂璃宮』だけしか知らずに独立していたら『赤坂璃宮』のマネゴトしかできなかったはずです。それでも上手にできる人もいるのかもしれませんが、自分には無理。絵を描くには複数の絵の具が必要です。いろいろな経験を積み、複数の絵の具を手にすることで絵を描けるようになるのではないでしょうか」

餃子の皮の作り方も赤坂璃宮で覚えた

やりたい店を具体化したら、結果的にワンオペだった

2軒目を辞めた後、キャパの大きいバーに転職。この店で人間関係に悩まされ、大勢の客相手の飲食店にも嫌気が差した。もう一軒、別の店で3年シェフをした後、36歳で『ムーダンジアン』をオープンした。

「自分がやりたいことをしようと考え、ワンオペを選びました。弟子を育てていくのが僕ら料理人の仕事だと理解していますが、1人でできるなら1人でやっていきたい。弟子に教える時間があるなら新しいメニューを考えたいです」

自分が行きたい店を作りたかった。それが客単価5,000円以下の中華料理店だった。人を使えば料理の単価が上がる。それを抑えられるのがワンオペ。だが、弟子を頑なに拒んでいるわけではない。志願者がいれば話をし、条件面があえば「働いてもらうこともやぶさかでない」という。

入船を選んだのは周辺に住んでいる人が多く、家賃もそれほど高くないのも魅力だったからだ。屋号には、実家の『牡丹江飯店』を英語表記した『ムーダンジアン』を選んだ。

祖父が作った『牡丹江飯店』の名入の器も使っている

自由な発想で酒を美味しく飲める中華料理を開発

2軒目の修業先のオーナーシェフの影響もあり、自由な発想でオリジナル料理を次々と考案してきた。

そのひとつが春巻きだ。春巻きはどこの店でも似たような料理が出てくるが、『ムーダンジアン』では四季折々のオリジナル春巻きを提供している。

「春巻きの由来を調べたら春の食材を巻いて揚げていたようなんです。だったら旬の食材を使うのもありかもと思い、旬の春巻きを作ることにしました」

5月は「白えびと新ごぼうの春巻き」、7月は「トマトとズッキーニとチーズの豚バラの春巻き」など、旬の食材を複数使う春巻きをメニューに掲げている。

この日は春の食材を使った「ホタルイカと雪ウルイの春巻き」が登場

春巻き同様、マーボー豆腐もどこの店にもある。『ムーダンジアン』では、開業当初「夏野菜マーボー」を出した。汁気が少なく、豚ひき肉がごろごろ入ったキーマカレー風のオリジナルマーボーが予想以上に好評だった。それをさらにアレンジし、「海鮮と野菜のマーボー」を始めた。

「海鮮と野菜で作ったらもっと酒のつまみになるのではと思い、『海鮮と野菜のマーボー』を考案しました。自分自身酒が好きなので、酒飲み目線でメニューを考えてしまうんです(笑)」

白飯と一緒に「海鮮と野菜のマーボー」を食べる人も多いという。

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。