新橋『スタンドバイミー』ヒットの裏に戦略あり。なぜ一流シェフの味を250円に!?
フランス料理のシェフが手掛ける、遊び心溢れる料理が250円~。加えて、トップシェフの考案した料理も楽しめるという新スタイルの立ち飲みで1日3回転する人気店が、東京・新橋の『STAND BY Mi(スタンドバイミー)』。オープンは、2020年9月。運営するのは、『烏森百薬』や『新橋銀座口ガード下 THE 赤提灯』など、独創的な店づくりで話題の株式会社ミナデインだ。斬新なコンセプトの背景にある狙いと、ヒットの要因を取材した。
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料理を作るのは、星付きフレンチで経験を積んだシェフ
シェフを務めるのは、フランス料理の経験が豊富な北山海氏。ミシュランの星を長年維持するフランス料理店で10年修業をした後、独立開業の準備として経営を学ぶべく、グローバルダイニングに転職して店長兼料理長を務めた。ミナデインへの入社は、フランス料理店時代の後輩からの誘いがきっかけだが、「独立するならビストロのようなカジュアル業態を考えていたので、自分がまだ経験したことのない居酒屋業態で、かつ立ち上げから携われるのが魅力だと感じた」と北山氏は話す。
名物は一皿250円の「ひと口おつまみ」と「トップシェフレシピ」
アラカルトで約30品を揃えるメニューのうち、同店の代名詞となっているのが一皿250円の「ひと口おつまみ」と、予約困難なレストランなどの実力シェフが監修した「トップシェフレシピ」の二つ。「ひと口おつまみ」は、一人客でも数種類の品を楽しめるメニューとして考案したもので、気軽に食べられるピンチョスをイメージしたものが多く、フランス料理店の前菜のような華やかな仕立ての「サバタルト」から、ゆで玉子にタコさんウインナーをのせた「シャウエッセンエッグ」のようなポップなものまで8品を揃えており、「3品盛り合わせ」で注文するお客も多いという。
「ひと口おつまみ」の「おすすめ3種盛り」700円。自家製パンチップの上にラタトゥイユと炙り〆サバ、ハーブやエディブルフラワーを飾った華やかな「サバタルト」、遊び心溢れる「シャウエッセンエッグ」、「トマトトマトトマト」
一流シェフと消費者をつなぐ新たな場を提供
一方、「トップシェフレシピ」では、『トレイス』河島英明氏や、『クラフタル』大土橋真也氏など、客単価数万円の高級店のシェフが監修した料理を4品用意。しかも480円~とこちらも破格の値段だ。この「トップシェフの料理を立ち飲みで楽しめる」というコンセプトは、同社代表取締役社長・大久保伸隆氏のアイデアから生まれた。「ミナデイン」という社名の由来にもなっているように、同社には「様々な業界のプロフェッショナルとの協働によって、コミュニティや持続可能な価値を創造する」という企業理念があり、店づくりをする際にも自社のみならず、業界内外でさまざまなコラボレーションを行うことで新しいシナジーを生み出している例が多い。監修した料理はレシピを作ってもらうだけでなく、最初は調理指導もしてもらうので、キッチンスタッフにとっても得るものが大きい」と北山氏は話す。
『トレイス』河島英明氏監修の「牛ほろほろ肉」880円。牛ホホ肉をブランデーやフォンドボーで煮込み、バゲットと一緒に網脂で包んで焼いた一皿。オーダーごとに焼いてソースをかけて提供する。グラスワインは480円~
