『日本酒原価酒蔵』が実践するリピーター戦略。「スタッフ力」を磨くユニークな仕組みとは?
利益を最大化するために、リピーターを徹底的に増やす
『日本酒原価酒蔵』に関しては、FL比率や家賃比率、営業利益といったビジネスモデルもオンラインで公開されている。渋谷本店でいえば、FL比率は53%で、うち原価が30%、人件費が23%と理想的な数値であり、営業利益は22%とかなり優秀だ。
「一般的な飲食店の数値は参考にしていない。目指しているのは、利益の最大化」と語る中村氏がそれを実現するために最優先しているのが「リピート率の向上」だという。
「お客様に価値を提供できているかを一番測れるのが、リピート率だと考えています。まずはいかにリピーターになってもらうかを考えて、そこを確保したうえで利益を上げていくのが理想です」
そもそも中村氏がリピーターをここまで大事にするようになったのは、過去に苦い経験をしたからでもある。
「創業した2012年当時は、飲食店の検索といえば食べログをはじめとするグルメサイトでした。そこで、評価の高い店の口コミの写真点数や文字数などを100軒ほど分析したところある傾向が読み取れて、それを実践したら評価が一気に上がったんです。グルメサイトの勝ち方を把握してたんですね。ところが『日本酒原価酒蔵』が開業した2015年頃から、アルゴリズムが変わって以前のようにはいかなくなってしまった。もともと弊社は空中戦による新規客の獲得を得意としていたのですが、以前のような効果を上げられなくなったことで、外部環境に依存してリピーターが全然とれていないことに気づいたんです」
それからは、ありとあらゆることを決定する際に「お客さんのためになるか」を徹底して考えてきたという。
「最初に取り組んだのは、2時間制の廃止でした。より多くのお客さんに利用してもらうためにやむなくならいいんですけど、自分たちの売上のために2時間で退出してもらうのはおかしいなって」
同時進行で社内の評価制度も整え、オペレーションの磨きこみや接客サービスなど、QSCの向上にも力を注いできた。
自社開発アプリを通じて、ファンづくりとモチベーションアップを実現
加えて、リピーターの獲得と販促の効率化に大きく貢献しているのが、自社で開発したアプリ「リピつく」だ。2018年から導入し、現在の会員数は約24万人。属性や来店間隔など、アプリから集計できる客観的なデータをもとに、改善を繰り返している。
さらにこのアプリがユニークなのは、割引やポイント付与といった一般的なサービスだけでなく、お客が頑張っているスタッフにポイントをプレゼントする「投げ銭」機能を搭載している点。お店のファンづくりに繋がるとともに、投げ銭ポイントの獲得数に応じてボーナスを支給するなどスタッフへの還元も行い、現場のモチベーションアップを図っている。
