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『日本酒原価酒蔵』が実践するリピーター戦略。「スタッフ力」を磨くユニークな仕組みとは?

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日本酒は常時60~70種類。初心者の来店動機を高めるため、有名銘柄を中心にラインナップしている

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給与に直結する社内評価制度で、主体的に努力する人材を育てる

「店舗展開を進める上では、各店の店長が経営者と同じように働くことが求められます。そのためには、店長の頑張りが給与に反映される仕組みが必要」と中村氏。そこで社内評価制度として導入しているのが、「KPI(重要業績評価指標)」。その項目は、①原価、②人件費、③アプリ、④アンケートの点数、の4つで、これらを達成するほど給与に反映され、店長は能動的、主体的に努力するようになるという。

「以前はもっと項目が多かったんですけど、管理のための管理で負担が大きくなってしまったため、本当に必要なものだけに絞り込みました」と中村氏。経歴や年齢はいっさい無関係のシンプルな制度でやる気を引き出すことに成功し、実際に同社では20代で給与45~60万円という店長もいる。

「昔は提出物の遅れとかもチェックしていたんですけど、たとえば週報を上げることと、アルバイトからの相談が同時に起こったら、後者に対応したほうがその店のためになりますよね」

渋谷本店のファサード。客層は幅広く、女性客の来店も多い

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「心理的安全性」の高いチームで、最高のパフォーマンスを目指す

こうして個々の能力を高める一方で、チーム全体として中村氏が最も大事にしているのが「心理的安全性」だ。

「心が平和なチームが、一番パフォーマンスがいいという実験結果もあるそうです。飲食店はチームでパフォーマンスを上げる仕事なので、自分の感情でイライラしたりする人は、どんなにスキルや経験があっても評価の対象にすらしない。昔はそういう人も複数いて、変わるのに2年くらいかかりましたけど、今はアルバイトから社員になりたいという人も多いし、組織風土はめちゃくちゃいいと思います」

離職率も低く、コロナ禍で辞めるスタッフもいなかったという。

「日本酒を原価で提供する」という業態の面白さだけでなく、徹底した評価制度による人材育成、集客を増やすためのアプリ戦略など、中村氏から学ぶことは非常に多い。さすがは飲食店経営のオンラインスクールを主宰するだけのことはある。

現在は何年後に何店舗、といった明確な目標は立てていないというが、今後も首都圏を中心に直営店の出店を進めていくという『日本酒原価酒蔵』の興隆にも注目だ。

『日本酒原価酒蔵 渋谷本店』
住所/東京都渋谷区道玄坂2-6-14 ホマレヤビルB1
電話/03-5422-3383
営業時間/15:00~23:30、土・日・祝12:00~23:30
定休日/なし
席数/68

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/