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竹田クニ氏が語る2024年の外食トレンド。激動の世界情勢、時代と世代による消費者動向の変化を読む

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■アルコール・ダイバシティの浸透 -日本人の半数以上がお酒を飲まなくなっている-

日本人の55.1%が「飲まない(飲めない)」「やめた」「ほとんど飲まない」と回答、若年になるほどその傾向が高い

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「アルコール・ダイバシティ」が浸透し、定着しつつあることを実感しています。前回の記事でもご紹介したデータをあらためて示させていただきますが、厚生労働省が行った飲酒習慣に関する調査で、日本人の55.1%が「飲酒の習慣がない」と回答。つまり、半数以上がお酒を飲まなくなっているわけです。

飲酒をしない傾向は若年になるほど高まる傾向があります。20代、30代の女性の飲酒人口割合が逆転しておりますが、結婚・出産等のライフステージに関係があるものと推察されます。

これからの世の中は、酒を飲む or 飲まない…という2軸でだけではなく、シーン(食事機会)の性質や個々人の飲みたい、飲みたくないも含めて、飲酒について多様な選択が出来るアルコール・ダイバシティの考え方がより進むと考えられ、飲食店にも十分な対応・準備が求められます。

■コロナ禍前比の外食市場規模は食事業態9割、飲酒業態7.5割
-飲酒市場においては“7割市場”が現実に。一方で店による好/不調の差も拡大-

首都圏・関西圏・東海圏における外食市場規模は、2023年10月時点でコロナ禍前の2019年同月比88.1%ですが、飲酒業態については75.9%にとどまっています。「コロナ禍によって外食市場は7割規模になる」という有識者、経営者も多かったのですが、概ね予想とおりと言えるでしょう。

・外食市場調査(2023年10月度)より
①外食市場規模の 2019 年同月比(コロナ禍前比)は 88.1%で前月(同 88.1%)と同水準
②「食事主体」業態は 19 年比 94.4%、「飲酒主体」業態同 75.9%、「軽食主体」業態同 77.6%

一方、エリアや店による差は拡大しており、例えば神田エリアのある居酒屋企業のでは、2023年の業績がコロナ前2019年対比約140%で推移しています。前述した会社宴会からプライベートシーンもエリア、店によっての差が大きくなっており、全体傾向はあるものの、より優勝劣敗が進んでいるとみるべきでしょう。

<定性的観点>

■消費の“あり方”を問う意識がより高まった -モノ→コト→イミ消費へ-
消費者の価値観が「モノ消費(have)」→「コト消費(do)」→「イミ消費(be)」に変化しつつあることはコロナ禍前から提唱していました。

〈イミ消費とは〉
商品・サービスそのものが持っている機能や効能という「価値」だけでなく、付帯的に持っている社会的、文化的な「価値」に共感し、選択するという消費行動を言う。消費により、その商品・サービスの価値が持つ意味や意義に対する貢献感や満足感を得ることが特徴である。

<イミ消費キーワード>
環境保全、地域活性、サスティナブル、社会貢献、他者支援、健康、感謝、正義、フェアネス、歴史、文化、伝統、など

近年世界で起こっている、戦禍や地球環境問題、経済格差や貧困問題を通じて、自らの消費、食の在り方を問う意識は年々高まっていると言えます。また経営においても、SDGsに対する取り組みや、ESG経営を実践する企業の存在など、これからの地球環境、社会の中でサスティナブルであることに対する問題意識もまた高まっていると言えます。

消費者の価値観は「モノ消費(have)」→「コト消費(do)」→「イミ消費(be)」へと変化しつつある

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■日常食は節約、娯楽は思い切って…メリハリのある外食消費
飲食店に限らず、日本経済全体が物価上昇トレンドにある中、日常消費における価格に対する消費者視線はシビア。一方で「ハレの食事」の頻度はやや減りながらも、せっかくの食事機会を思いっきり楽しもうという消費者意識が高まっていることを感じています。

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。