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溝の口『中ノ食堂』、ナチュラルワインを武器に客単価1.5倍に【連載:居酒屋の輪】

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店頭のかまど型ワインクーラーに並ぶナチュラルワイン。常時 100本以上を揃える

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客単価を押し上げるナチュラルワインの価値

佐藤さんが取り扱うナチュラルワインは、実際に飲んで美味しいと思ったもの、応援している生産者のものが中心。味わいだけでなくバックグラウンドまで理解しているからこそ、ワイン好きとの会話が弾み、あれやこれやとゲストの興味も広がる。結果として客単価も押し上げられ、系列の居酒屋業態の客単価が4,000円である一方、『中ノ食堂』は6,000円と1.5倍になった。

「葡萄だけでなく、生産者さんの考え方や知識といった人生観もギュッと凝縮されているナチュラルワインですから。やはり客単価の低いお店では提供できません。そもそも『ジョウモン 溝の口店』だって200〜300円の串がメインです。1串100円以下で焼き鳥を出すような大手チェーンの大衆店が多い溝の口では高単価な居酒屋でしょう。オープン当初は『この街で、この価格帯はちょっと厳しいんじゃない』といったご意見もたくさんいただきました。でも、多くの方に料理や空間を好きになってもらえて、今も大勢のお客さまがリピートしてくださっています」

佐藤さんが注ぐのは山形産デラウェア100%のオレンジワイン「デラヤロウ」(1,200円)

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しっかりと価値を提供すれば、次第にファンは増えるもの。大々的な告知がない状態でリニューアルオープンした『中ノ食堂』に客足が途絶えないのも、系列店全体でお客の心をしっかりと掴んでいるからだ。取材当日も客席から「『炉ばた 灯台』が満席だったのでこっちに来ました」「ここって『ジョウモン(溝の口店)』の系列らしいよ」といった話題がちらほらと聞こえていた。

取材当日のお通し(400円)として提供された「農園野菜と山利しらすサラダ」

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自分にしかできない居酒屋とは?

収穫を手伝った際にワイナリーのオーナーから「野菜も必要でしょ? 良い農園あるよ」と紹介されたのが、農薬や化学肥料を一切使わず、年間約100品目という多種多様な野菜を育てる「お日さま農園」。佐藤さんの故郷でもある山形の優れた食材やワインが次々とリンクし、今回のリニューアルオープンへとつながっていった。

「サラダに使用している7〜8種類ほどの野菜は『お日さま農園』直送のものです。その美味しさを皆さまに感じていただきたいと思ってお通しで出しています。抜群に素材が良いから、オリーブオイルと醤油のシンプルな味付けだけでナチュラルワインに合うんですよ」

佐藤さんの料理は、毎日丹念に仕込む一番出汁をベースにしながら、主に砂糖、塩、醤油、酒、みりんといった馴染みのある調味料でバランス良く味が整えられている。収穫に適したタイミングで「お日さま農園」から直送される野菜は多種多様で、それに合わせて日々のメニューを調整するのも経験がものを言う。「まだまだ若手スタッフには真似ができない仕事ですから。僕が現場に立つしかない、という実情もありますね(笑)」と佐藤さん。ベイシックスで様々な業態を学んだことが血肉になっていると、独立までの経緯も教えてくれた。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。