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「元祖・最強レモンサワー」の『素揚げや』、低アル戦略で“ストロング系回避”のニーズ取り込む

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低アルコール商品の勝算

ストロング系市場が縮小する状況は、レモンサワーが主力商品の『素揚げや』を経営する宮崎明氏にとっても他人事ではない。同店の人気商品の「(元祖)最強レモンサワー」は氷が入っていない分、アルコール度数は7%とストロング系に近い。2杯目からは凍っていたレモンが解けるために氷を入れるのでビールと同程度の5%程度になるとはいえ、飲みやすさが特徴のレモンサワーはついつい飲み過ぎてしまうリスクがある。

『素揚げや』の「(元祖)最強レモンサワー」

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こうした社会の動きを踏まえて、経営する2店舗のうち別館では4月15日から低アルコール商品の売り出しを正式に開始し、ノンアルコール商品のメニューを大幅に強化することとした。その状況を見て、本館でも5月の連休明けから導入を考えている。

3月末現在、『素揚げや』では8種類のレモンサワーを販売しており、口頭で「低アルコールでもできます」と案内しているが、これを正式なメニューとして商品ラインナップに加える。低アルコールの最強レモンサワーは濃度3.5%と半分にし、2杯目からは氷を入れるためにさらに下がって3%程度にする。価格はこれまで1杯目が550円、2杯目は385円だったものを、それぞれ462円、330円にする予定(税込、別館での価格、本館はグラスが大きいので別価格を検討)。

もちろん、勝算はある。現在、ソフトドリンクの売上はドリンク全体の20%程度で、そのほとんどがレモンスカッシュ。最強レモンサワーのノンアルコール版で、見た目も味も変わらない。注文するのは1杯目に最強レモンサワーを頼んだ人が多く、同じグラスにノンアルコールのレモンスカッシュを注ぐ。そうすると2杯飲んだ客は1杯目が濃度7%のため、3.5%という低濃度のレモンサワーを2杯飲むのとアルコール摂取量はそれほど変わらない。今までレモンスカッシュを頼んでいた人は、これからは最初から低アルコールの最強レモンサワー(2杯で3.25%程度)を頼むのではないかという推測は成り立つ。

これを価格面から見てみよう。

・最強レモンサワー550円、2杯目最強レモンサワー385円で合計935円(高濃度コース)
・最強レモンサワー550円、2杯目レモンスカッシュ330円で合計880円(高濃度+ノンアルコールコース)

そして、低濃度は価格を下げて割安感を出す。

・最強レモンサワー(低アルコール)462円、2杯目最強レモンサワー(低アルコール)330円で合計792円(低濃度コース)

別館は2杯目の最強レモンサワーが385円で、低濃度のそれは330円にする予定という。このあたりの価格設定は難しいが、客の立場からすれば「同じ価格ならアルコールが多く入っている方が特だ」という意識が働きかねない。価格を下げれば「健康にも良く、財布にも優しい」という理由となり、現行の濃度から低濃度へのシフトは容易になる(価格は全て税込)。

『素揚げや』のメニュー表。低アルコールのレモンサワーは50円安く提供している

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原価率との兼ね合いもあるので、価格が下がることで直ちに経営を圧迫することはないとはいえ、客単価が下がる不安はありそう。その点を聞くと、逆に客単価の上昇が期待されるとする。

「今の20代のお客さんは最強レモンサワーを1杯、それにナカ(お代わり)1杯でほとんどの方が終わりです。低アルコール商品にすれば単純に杯数が増えるのではないかと考えています」

本館の客単価はオープン以来5,000円超で、現在は5,300円程度。20代を中心にアルコールを飲む量が減っているのに客単価が落ちないのは、その分、料理を注文してくれるからだという。『素揚げや』では「素揚げ鶏」というキラーコンテンツを持ち、素揚げ野菜も京野菜が人気で、季節に合わせて産地から直送の野菜(高知四万十町の狼桃トマトなど)を仕入れるなどの努力が実っている。

そのようなことから「低アルコール、ノンアルコール商品を充実させても客単価は下がらないのではないかと、ほぼ確信をしています」と言う。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/