坪月商45万円超の渋谷『極楽酒場 げんてん』。全従業員が「自分事」で取り組むパワフル経営
コロナ禍の前後で客層が一変も、アップデートのきっかけに
そうなると気になるのはリピート率だ。冒頭にもあるように、『げんてん』は平日でも満員御礼の人気店だが、常連客の割合はどのくらいなのだろうか。店長の鈴木氏は次のように話す。
「実はコロナ禍の前後で、ずいぶん変わってきています。コロナ前は仕事帰りに立ち寄ってくれる、30代後半から50代の会社員の方たちが中心でした。『げんてん』は駅から近いといっても、坂道の上のさらに路地を入った場所にあり、わざわざウチを目当てに足を運んでもらえるような立地ではなかった。だからコロナ前は近隣に勤める常連さんがほとんどでした」
コロナ禍前はアルコール注文率の高い客層が多かったので、メニューは煮込みなどの、ツマミ系が中心。同店はいわゆる大衆酒場としてその機能を果たしていた。しかしコロナ禍が明けてからは20代の若者が急増したそう。やはり「ハイから」セットのインパクトなのだろうか。
「確かに『ハイから』セットの存在も大きいとは思います。19時までの入店でハイボールに唐揚げが1個付いて100円というものですが、もともとは特に若者を集客しようという意向はなく、コロナ禍休業から再開できた感謝の気持ちをお客様に還元したいと思って、期間限定のつもりで始めたものでした。ところがあまりにも話題になったので、やめる機会を逸してしまったという感じです(笑)」(鈴木氏)
鈴木氏曰く、客層が大きく変わったきっかけは、『げんてん』に来店したインフルエンサーのSNS投稿。そこから話題になり、みるみるうちに若者客が増えていったという。鈴木氏は若年層に刺さった理由をこう分析する。
「新たに来ていただけるようになったお客様の投稿を見ると、料理についてだけではなく、『丁寧な接客をしてもらえた』と発信していただくことが多いですね。我々が当たり前のようにやっている気遣い、ホスピタリティが若い方には新鮮だったようです」
メニューは名物を除いてほぼ一新。安値のバリューから質のバリューへ
インフルエンサーによる情報拡散という“幸運”も重なってお店は大繁盛。SNSを見た若者客が連日押し寄せ、現在は予約必須の状況となっている。こうした客層の変化に合わせて、お店のスタイルも変化していった。
「コロナ禍前まではアルコールを注文していただくことがお店の利益に直結していましたが、若い年代のお客様はあまりお酒を注文されません。仲間とおいしい料理を分かち合い、その時間と空間を楽しむという方が多いように感じます。だからメニューは名物以外、ほぼ一新しました」
そうしたアップデートの中で鈴木氏は、できるだけ良い素材を使って、より美味しい料理を提供したいという気持ちがさらに強くなったと話す。
「SNSに上げる人が増えているので、料理の見映えにはこれまで以上に気を遣うようになりました。だし巻きにイクラを乗せてみたり、お皿を変えてみたりと、いろいろ考えていますね。SNSというツールに関してはあまり意識してこなかったので、これは新しい発見でした」
