日本橋のカフェ『パークレット』はなぜ人気? アメリカ人夫妻の「温かな店づくり」
1日中さまざまな人が訪れる、公園のようなカフェベーカリー
店名の『パークレット』は小さな公園、憩いの場、坪庭を意味する。夫妻が親しんだカリフォルニアのベイエリアのレストランでは、パークレットと呼ばれるレストランのアウトドアダイニングがコロナ禍で流行したそうで、そこからも着想を得たという。
「堀留児童公園には、朝はラジオ体操をする人たち、通勤前のビジネスパーソン、子連れの家族、保育園の子どもたち、昼には周辺で働く人たちがランチに来たり、カップルや観光客が遊びに来たりさまざまな人が来ます。このお店も公園と同じように、いろいろな人が行き交う、公園のような公共性の高い場所になっています」とジェイジェイさんとケイトさんは話す。
内装を手掛けたのは『SOIL NIHONBASHI』のコーポラティブオフィスにも入居するADX。隣接する堀留児童公園側に大きなガラス窓があり、ケヤキの大木で造られたテーブルも印象的だ。カフェベーカリーと公園との接面に家具やアートが設置されており、公園とお店が地続きになるような工夫もみられる。店内奥にはアーティストの作品を展示するギャラリースペース「堀留画廊」もある。キッズ席も準備し、誰でも利用しやすい空間を目指した。

右手前から時計回りで「自家製ポークハムとりんごのトースト、ホースラディッシュソース」(1,200円)、「リコッタチーズとレモンカードのトースト」(900円)、「ローストビーツとハーブ、アボカドドレッシングのグリーンサラダ」(1,300円)、「グラスワイン」(1,000円)
サンフランシスコのベーカリー文化と、日本食材を掛け合わせたフードメニュー
食事メニューは、サンフランシスコのベーカリー文化をベースとしながら、日本の食材を取り入れている。「『Tartine Bakery』や『THE MILL』など僕たちが好きなサンフランシスコのお店のメニューを参考に、日本の材料を取り入れながら作っています」と二人が語る通り、パンには北海道産の小麦粉を使用するなど国産食材を多用している。
メニュー開発においては、創業時のメンバーでもあり現在世田谷区の羽根木でパンとワインのお店『Crumb』を営む酒井マロニさんと一緒に日々ブラッシュアップを行ったという。その結果、アメリカ西海岸の趣がありながらも、日本人にも親しみやすいメニューが生まれていった。
名物のサワードウブレッドは、小麦粉やライ麦粉に水を混ぜ合わせ、自然発酵させた天然酵母を元種につかったパンのこと。このサワードウブレッドやカントリーブレッドを使ったトーストメニューをメインで展開している。
また、子どももおいしく安全に食べられるよう、手を尽くす。国産の豚モモ肉を自家製スパイスブレンドでマリネし、ゆっくり低温で火入れした自家製ポークハムや、牛乳と生クリーム、柑橘、塩を使った自家製リコッタチーズをのせたトーストなど、手作りが多い。
また、グリーンサラダに使う野菜は、千葉県印西市にある柴海農園から仕入れたオーガニックのもの。このほかバナナブレッド、スコーン、クッキーなど、素材の味を優しく引き出すメニューがショーケースに並ぶ。
オーガニック農法を取り入れたコーヒーや、ナチュラルワインやビールも取りそろえる
ドリンクはソフトドリンクだけでなく、アルコールもラインアップ。コーヒーは栽培方法を見つめ直し、土壌の再生と気候変動問題の解決へ寄与することをミッションにアメリカのポートランドで発足したスペシャルティコーヒーロースター『Overview Coffee(オーバービューコーヒー)』の日本焙煎所(広島県尾道市瀬戸田)で焙煎されたコーヒーを提供している。
ナチュラルワインは、北海道時代に知り合ったワインインポーター『二番通り酒店』に、白と赤をおまかせで注文。クラフトビールも北海道『Hobo Brewing』のものを採用しているほか、コラボレーションイベントを開催するなど、今なお北海道時代のつながりを夫妻は大切にしている。
現在平日は平均200~300人、休日は350人ほどが来店。客単価は1,000~2,000円ほどだ。平日でも満席状態が続き、休日は行列ができることも少なくない。
