月給100万円を払える飲食企業に! 中目黒『nou』が事業多角化を進める理由【連載:居酒屋の輪】
「林SPF」を使用した名物を居酒屋価格にアレンジ
「林SPF」との出合いから、良質な豚肉の旨みを閉じ込めたメンチカツ、3日間かけて作る鶏白湯スープ&自家製マー油で楽しむ水餃子など、『nou』を代表するメニューが誕生。新しい立ち呑み業態では、より手頃な価格で提供できるようアレンジを加えるという。
「『nou』や『iro』はシェフをはじめ、サービスマンやソムリエ、みんなが完璧なプロフェッショナルなのですが、そういったお店を作るのは本当に大変なんですよ。そこで今回の立ち呑み業態では“仕事内容の単純化”をテーマに掲げました。食材や料理のクオリティを保ちながら、アルバイトスタッフ中心で営業を行う予定です」
新しい舞台は渋谷の新ランドマークとも言われる商業施設。言わずもがな既存店と比較してテナント料は高額である。そのうえ立ち呑み業態となれば、フードメニューの価格は抑えなければいけない。経営的に食材の原価率も30%以下が目標という。
この難題に対して「オペレーションの単純化と合わせ、ワンポーションのサイズを工夫すれば、十分に解決できます」と板垣さんは事もなげに答える。これは、ここ1年で感じているニーズの変化を反映した経営方針だ。
アラカルトの導入で月商がV字回復、約2倍に!
「コロナ禍が落ち着いてから『少しずつ、いろんなものをたくさん食べたい!』という自己選択型のニーズが高まっています。実際に『nou』はコース料理だけのお店でしたが、アラカルトの提供を開始してから売上が急激に伸びたんですよ」
コロナ禍の制限が解除されて飲食店に足を運ぶ人は増加した反面、頻度が増したことで1店舗あたりに使う予算は減っているというのが板垣さんの分析。苦戦を強いられているのが、『nou』のような客単価8,000円から15,000円程度の中価格帯レストランだ。原材料高騰を反映したコース料金の値上げも響き、コロナ禍で450万円ほど売り上げていた『nou』の月商は、一時350万円近くまで落ち込んだという。
そこでSNSでのアンケート結果などを反映し、2023年8月からアラカルトの提供を開始。予算の幅と利用シーンが広がったことで、1日1回転だった客席が3回転するまでに。「あれもこれも食べたい!」と注文数も自然と増加し、結果的に客単価もアップ。売上は落ち込んでいた時期の約2倍、月商700万円近くまで伸びる月も増えてきた。こうした過程で蓄積してきた小皿メニューのノウハウを、立ち呑みスタイルの新業態でも活かす訳である。
