月商700万円を誇る『ハカタホタル中目黒』。博多ブランド×SNSで20~30代女性を集客!
SNS戦略のポイント
ほたる事業部の麻布十番店が成功したとはいえ、メインとなる客層は異なるため、集客は一から始めないといけない。半年ほど苦しい状況が続いた後、店舗のマネジメントに当時34歳の井上竜一氏(現ほたる 事業部マネージャー)が抜擢された。井上氏は16歳の時にアルバイトで飲食業界に入り、抜擢された時点でターゲットとする20代に近く、かつ、キャリアは十分、料理人としても、マネジメントでも活躍できるという打って付けの人材であった。
オープンに至るまでの経緯から当然のように①(若者向きの商品、サービス等の提供)は意識されていた。その商品として開発されたのが「すいとーよ」「今日は帰さんけんね」などの博多弁が書かれたグラスである。「このグラスから(繁盛が)始まりました。これはほたる事業部の本部長が発案して自社のデザイン部が作ったもので、オープンの時に揃えたものです。これが『可愛い』ということで若い女性がインスタで発信してくれて、そこから徐々に若い女性がいらっしゃるようになりました」と井上氏は説明する。この点が②(若者向きの商品、サービス等の提供)の成功に繋がっていく。
グラスの博多弁の成功の流れに合わせ、新たに店舗に加わった井上氏がクマを模したアイスクリームを浮かべた「メロンクリームソーダサワー」(820円)、フルーツをたくさん乗せた「フルーツサワー」(価格は季節によって変動)などインスタ映えする商品を開発。これらが次々とSNSにアップされ、それが客を呼ぶというサイクルが出来上がった。現在では「メロンクリームソーダサワー」は注文率80%を誇る。
「インスタなどはお客さんがアップしてくれます。店がアップするより効果があります」と井上氏は言う。店のアカウントでアップしても所詮は広告であるが、個人のアカウントでアップされれば中立性のある記事と同じ性質となる。商品とは利害関係のない者が、自らの知り合いに「これ、いいでしょ?」とレポートするのであるから、その効果は大きい。
インスタグラムやXで求められる投稿は「一発芸」のようなもの。長い前振りは不要、オチだけが求められ、パッと見てその面白さが分かるものが人気を集める。グラスに書かれた博多弁はインパクトがある上、店のオリジナル、しかもコストをかけて作っているということからSNS向きで、そこで客の心をつかみ、さらにメニューで「それ以外のネタもあるよ」と用意したことが成功の要因だと思われる。
SNS対策と一口に言っても、店がSNSを使って頻繁に発信するだけで効果が得られるわけではない。発信方法、発信する内容にどこまでコストをかけるかなどの戦略が的確であったことが成功した要因といえよう。
①の若者対策は他にもある。昨今の若者は大量のアルコール摂取を控えるようになっているため、ノンアルコール、低アルコールのラインナップを充実させた。若者の需要を取り込めるだけでなく、アルコール分が低くなることで原価が下がり、経営面ではプラスに働く。
また、スマホのオーダーシステムの導入も大きい。店舗は三階建で一階にキッチンがあるためオペレーションに手間がかかる。当初はインターホンを使用も、なかなか機能しなかった。しかし、スマホのオーダーシステムとインカムを使用することでオペレーションはかなり楽になったという。「説明するよりも、若い人は勝手にスマホでどんどんやってくれますから」と井上氏。客層のメインが若者のために経営の効率化が可能になったのである。
こうして20代から30代の女性が多く来店し、「1階のカウンター10席がすべて若い女性が並ぶことも珍しくありません」(井上氏)という状況が生じた。その華やかな女性客を通りから見たせいか、若い男性客が入ってきて立ち飲み席で飲むという、客が客を呼ぶ現象も発生している。
