オープン3か月で坪月商56万円の渋谷『HUIT』。「ストーリーのあるワインと料理」で客の心を掴む
シンプルにおいしい&生産者のストーリーが感じられるワインを厳選
出店地に選んだのは、長年松原氏が働いた渋谷『権八』のほど近く。物件探しでは渋谷駅から近く、10~15坪、路面店と条件を絞りこんだ。業態は和食ではなく、松原氏がもともと好きだったワインのお店だ。
コンセプトは「ナチュラルワインに絞らず、シンプルにおいしいと感じるワインと、それに合う新鮮な食材を使った料理を大人たちがカジュアルに楽しめるお店」を掲げた。「僕の思うビストロは大衆酒場に近い。けれど、自分と同い年以上の大人たちが楽しめるお店にしたかったんです」と松原氏はその経緯を明かす。
特筆すべきはイタリアから直輸入している、ここでしか味わえないワインを揃えていること。しかし小難しい知識がなくてもシンプルに「飲んでおいしい」と感じられるラインアップにしてある。
松原氏は試飲会でも資料は読まずにまずワインを飲んで、おいしいと思ったら生産者の話を聞いて仕入れるかどうかを決めているという。ワインを選ぶポイントとしては、飲んでおいしくて、その上で生産者のストーリーが感じられるワインであることだ。現在直輸入をしているイタリアのワイナリー「Vini Loreggian」は『HUIT』開業前に訪れたイタリアで、ワイナリー三代目のリサさんから伝え聞いたストーリーが印象に残っているという。
「外食は『経験』が大事だと思うんです。感じの良い接客やおいしい料理は当たり前。『あのお店に行ったら楽しいし、新たな発見がある』そういう風にお客さまに思ってもらえるよう、僕らも生産者のストーリーテラーになる必要があると思うんです」と松原氏は志向する。
とはいえお店で提供するワインは、イタリアワインだけに限定しているわけではない。アルゼンチンやスペイン、日本など40~50種類のボトルワインを揃え、グラスワインも赤・白6本ずつで12~14種類をラインアップしており、ナチュラルワインも揃える。
この種類の豊富さについて松原氏は「バーでは『こんな感じのカクテルちょうだい』といったオーダーをしますよね。『HUIT』でもそういう風にワインをオーダーしてもらいたいと思っているんです」と元バーテンダーならではの理由があった。
ワインのグラスは木村硝子を採用し、料理を盛るお皿は美濃焼。「かっこいい大人たちがカジュアルに使えるお店」というコンセプトに沿うよう、細部まで本物志向にこだわっている。
