名物は100円の鶏焼売も坪月商は125万円! 池袋『岩瀬蒸店』が語る狭小店の力【居酒屋の輪】
池袋の栄町通りは、昭和の風情漂うディープな横丁。その細い路地の奥で昼から賑わうのが、鶏焼売の立ち飲み屋『岩瀬蒸店』だ。100円から提供する手間暇かけた看板メニューでお客の心を掴み、坪月商は驚異の125万円に到達している。
栄通りは「小学生の時から馴染みの場所だった」と笑顔で語るのは、店主のテっちゃんこと金大徹さん。
「ここは母ちゃんが営んでいた韓国料理店でした。小学6年生のときから、ランドセルを背負って、ここでご飯を食べていたんですよ(笑)。当時、通りは少し寂れた雰囲気だったけど、今は活気が戻り、まるで再び火が灯ったようで嬉しいです」
15時のオープンと同時に、お客の笑い声とスタッフの元気な掛け声が響き合う。その気軽で楽しそうな雰囲気に新たなお客が引き寄せられ、夜が更ける程に盛り上がりは増す。
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3.5坪の賑わいが生む空間的価値
2022年3月、当時27歳だったテっちゃんが開業した『岩瀬蒸店』。店内はわずか3坪、外も含めて3.5坪という狭小店のため、「1年後に月商200万円まで行けば申し分ない」と考えていたという。
「母ちゃんと二人で生きていくには十分な収入ですが、ハードルは高いと思っていました」という目標売上は、わずか半年で達成。1年後には月商250万円を超え、雑誌『月刊食堂』にて「坪月商70万円超え!メガトン級ヒット店」として掲載されるまでに。2025年4月の月商は435万円。坪月商約125万円という過去最高売上を記録した。
「なぜ繁盛しているのか? 正直、僕にも分かりません(笑)。広告費ゼロ、集客は口コミだけ。毎日全力でお客さんを喜ばせているだけですよ。坪月商が高いのは店が狭いからでしょう(笑)」と謙遜するテっちゃんだが、どう考えても坪月商125万円は驚異的だ。
「うちの店はデザイン性が高いわけじゃない。でも『賑わっている』こと自体が最大の空間価値だと考えています。スタッフの掛け声、お客さんの笑い声、狭い空間だからこその一体感が、独特のグルーブを生むんです。だから、お客さんをぎゅうぎゅうに詰め込んで、楽しんでもらっています(笑)」
混雑時には20人以上で埋まるという約3.5坪の空間。ライブ会場さながらの密集ぶり、テンポの良い接客が独特のノリとなり、お客の感情を揺さぶるグルーブ感を生み出す。
混雑時のオペレーションも大変だが「料理を後ろに回してもらえます?」「そのお酒を取ってもらえます?」など、お客を頼るコミュニケーションもグルーブ感を生む演出になるという。「子どもの頃に憧れた、ガヤガヤした昭和の立ち飲み酒場を再現したかった」とテっちゃんは説明する。
「初来店の次の日にまた来てくれる方も多くて。リピート率は高いと思います。でも、常連さんだけのお店にはしたくない。新規のお客さんも居心地良く過ごせる環境づくりを心がけています」
現在はリピーターが6割、新規が4割ほど。「常連ばかりの店はいずれ衰退する」という教えはテっちゃんの恩師、福岡の立ち飲みカルチャーを牽引する『岩瀬串店』のオーナー、大橋智和氏によるものだ。
