名物は100円の鶏焼売も坪月商は125万円! 池袋『岩瀬蒸店』が語る狭小店の力【居酒屋の輪】
地に足ついた経営と未来への挑戦
「客単価の高いお店を開くなら、栄通り以外の場所で」と心に決めているテっちゃん。スケルトンから動線にこだわりデザインを作り込み「蒸と串を融合させたお店」を構想中だ。その前段階として『岩瀬蒸店』2階の空きスペースで開業したのが『岩瀬飯店』である。福岡の『岩瀬串店』での経験を活かしつつ「変化球ではなく直球勝負したい」と、オープン前から高級店や百名店に通い詰め、焼き鳥の研究を重ねた。
「勉強させていただいたお店は山程ありますが、最も自分に刺さったのが新宿『道しるべ』さん。技術の高さはもちろん、お店の雰囲気も相まって、一言で表すなら“粋”なんですよ。大将の人柄も良く『岩瀬飯店』まで足を運んでもらえて。僕の焼き方を褒めてくれました」
客単価1万円を超える人気店なども手本にし、日々研鑽を続けている焼き鳥。中心価格帯は1串300円程度をキープしつつ、丹波赤どり、京赤地鶏、はかた地どりなど、各地の銘柄鶏を備長炭で焼き上げていたが、現在は休業中という。
「社員の一人が留学のためお店を卒業することになり、忙しくなりすぎて、もう一人も辞めてしまいまして……。しばらく休業していますが、2025年6月には再オープンの目処が立ちました。僕が1階と2階を行き来して、オペレーションを潤滑にする予定です」
独立志向の社員に対して「独立まで見送れるように商売の理念を教えたい」と意気込むテっちゃん。これから多くの若手を育てることが、恩師や飲食業界への恩返しにもなるだろう。
母と子の絆が紡ぐ栄町通りの温かさ
取材の最後、テっちゃんのお母さんからも話を聞けた。テっちゃんが小学6年生のとき骨折で手術を受けたことが、独立開業の契機だったそう。
「昔は焼肉屋さんで働いていたけど、夜遅くまで仕事だったので。『もっと子ども達との時間を大切にしなくちゃ』と開いたのが、このお店でした。まさか、こうして息子と一緒にお店に立つ日が来るなんて、想像もしてなかったけど(笑)」
家庭料理店の稼ぎで3人の子どもを立派に育て上げたお母さん。「福岡で色々身につけて帰ってきて、すごい子だと思った」と誇らしげに話し「今はお客さんがいっぱいで大変だけど、親孝行になってますよ」と、こっそり教えてくれた。
母子で店に立つ姿は、失われつつある居酒屋の原風景そのものだ。鶏焼売だけでなく、そうした人情や絆にも惹かれ、都会に疲れた大人たちが『岩瀬飯店』に集まるのだろう。栄町通りの鶏焼売の立ち飲み屋は、おいしさだけでなく、愛と感謝が詰まった温かな存在なのだ。
『岩瀬蒸店』
住所/東京都豊島区東池袋1-13-12 栄町通り1F
電話/なし
営業時間/15:00~24:00、日曜15:00~22:00
定休日/不定休
坪数・席数/約3.5坪・約20席(スタンディング)
『岩瀬飯店』
住所/東京都豊島区東池袋1-13-12 栄町通り2F
電話/なし
営業時間/18:00〜25:00
定休日/不定休
坪数・席数/約3坪・約15席(スタンディング)
