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名物は100円の鶏焼売も坪月商は125万円! 池袋『岩瀬蒸店』が語る狭小店の力【居酒屋の輪】

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2024年11月オープンの『岩瀬飯店』。こちらも3坪の狭小店である

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地に足ついた経営と未来への挑戦

「客単価の高いお店を開くなら、栄通り以外の場所で」と心に決めているテっちゃん。スケルトンから動線にこだわりデザインを作り込み「蒸と串を融合させたお店」を構想中だ。その前段階として『岩瀬蒸店』2階の空きスペースで開業したのが『岩瀬飯店』である。福岡の『岩瀬串店』での経験を活かしつつ「変化球ではなく直球勝負したい」と、オープン前から高級店や百名店に通い詰め、焼き鳥の研究を重ねた。

「勉強させていただいたお店は山程ありますが、最も自分に刺さったのが新宿『道しるべ』さん。技術の高さはもちろん、お店の雰囲気も相まって、一言で表すなら“粋”なんですよ。大将の人柄も良く『岩瀬飯店』まで足を運んでもらえて。僕の焼き方を褒めてくれました」

客単価1万円を超える人気店なども手本にし、日々研鑽を続けている焼き鳥。中心価格帯は1串300円程度をキープしつつ、丹波赤どり、京赤地鶏、はかた地どりなど、各地の銘柄鶏を備長炭で焼き上げていたが、現在は休業中という。

「社員の一人が留学のためお店を卒業することになり、忙しくなりすぎて、もう一人も辞めてしまいまして……。しばらく休業していますが、2025年6月には再オープンの目処が立ちました。僕が1階と2階を行き来して、オペレーションを潤滑にする予定です」

独立志向の社員に対して「独立まで見送れるように商売の理念を教えたい」と意気込むテっちゃん。これから多くの若手を育てることが、恩師や飲食業界への恩返しにもなるだろう。

高級店の品質を目指しつつ価格は手頃に。スタンディングでの営業だ

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母と子の絆が紡ぐ栄町通りの温かさ

取材の最後、テっちゃんのお母さんからも話を聞けた。テっちゃんが小学6年生のとき骨折で手術を受けたことが、独立開業の契機だったそう。

「昔は焼肉屋さんで働いていたけど、夜遅くまで仕事だったので。『もっと子ども達との時間を大切にしなくちゃ』と開いたのが、このお店でした。まさか、こうして息子と一緒にお店に立つ日が来るなんて、想像もしてなかったけど(笑)」

家庭料理店の稼ぎで3人の子どもを立派に育て上げたお母さん。「福岡で色々身につけて帰ってきて、すごい子だと思った」と誇らしげに話し「今はお客さんがいっぱいで大変だけど、親孝行になってますよ」と、こっそり教えてくれた。

母子で店に立つ姿は、失われつつある居酒屋の原風景そのものだ。鶏焼売だけでなく、そうした人情や絆にも惹かれ、都会に疲れた大人たちが『岩瀬飯店』に集まるのだろう。栄町通りの鶏焼売の立ち飲み屋は、おいしさだけでなく、愛と感謝が詰まった温かな存在なのだ。

写真右端の赤い服がお母さん。名前・顔出しNGだが気さくに話してくれた

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『岩瀬蒸店』
住所/東京都豊島区東池袋1-13-12 栄町通り1F
電話/なし
営業時間/15:00~24:00、日曜15:00~22:00
定休日/不定休
坪数・席数/約3.5坪・約20席(スタンディング)

『岩瀬飯店』
住所/東京都豊島区東池袋1-13-12 栄町通り2F
電話/なし
営業時間/18:00〜25:00
定休日/不定休
坪数・席数/約3坪・約15席(スタンディング)

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。