備蓄米、随意契約で売渡し開始。飲食店が注目すべき政府米放出の現状とは
2025年6月、農林水産省が実施する「随意契約による政府備蓄米の売渡し」が開始された。市場価格を下回る見込みのこの施策は、飲食店経営者にとって原材料費の安定や仕入れ先の選択肢拡大に繋がる可能性がある。ここでは本制度の概要、対象となる米、受付状況や価格、そして飲食店への影響について整理する。
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随意契約による備蓄米売渡しとは
政府は食料安全保障の観点から、一定量の米を備蓄している。その一部を特定の条件下で民間に売り渡すのが「随意契約による売渡し」制度だ。今回は、令和3年産(2021年)および令和4年産(2022年)の政府備蓄米が対象となる。
売渡し対象の米は「うるち玄米」であり、等級は3等以上。対象数量は令和3年産が10万トン、令和4年産が20万トンとされている。購入できるのは、年間1万トン以上の米穀取り扱い実績または見込みがあり、かつ「食糧法第47条第2項」に基づく届出を行っている事業者に限られる。このように、一般消費者向けではなく、業務用流通を前提とした制度設計である。
申込殺到で一時休止も、6月初旬から販売開始へ。価格は5kg2,000円前後か
買受申込みは2025年5月26日より開始されたが、翌27日には予定数量の上限に達する見込みとなり、申込みが一時休止された。その後、5月30日に受付は再開されたものの、農林水産省の発表によると、メールでの受付件数は既に約1,300件に上ったという。このため、申込みは6月2日17時をもって再び一時休止され、申込みが予定数量を超過した場合は国が数量を調整する方針だ。この反響は、飲食業界が直面している原価高騰と、不安定な米の流通事情に対する関心の高さを物語っている。
今回売り渡される備蓄米は、全国の販売事業者を通じて6月初旬から順次店頭に並び始めている。価格設定は各事業者によって異なるが、5キログラムあたり税込2,000円前後での販売が多く、これは2025年5月時点の市場価格と比較して割安だ。販売形態も店頭販売に限らず、オンライン注文や業務卸など、各社の強みを活かした多様な方法で提供されている。
政府備蓄米は一定の品質基準を満たしているため、飲食店にとっては品質面でも安心感が高い。備蓄米の随意契約による売渡しは、原材料の上昇に頭を悩ませる飲食店にとっても、注視すべき動きと言えるだろう。今後追加販売や制度拡充が行われる可能性もあるため、継続的な情報収集と仕入れ戦略への反映が求められる。
