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「業務改善助成金」の対象が拡充。賃上げとともに飲食店の経営体質を強化する方法

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深刻な人手不足の中、令和7年度の最低賃金が改定され、全国加重平均は時給1,121円(昨年度1,055円)となった。これにより、すべての都道府県で時給が1,000円を上回っている。このような背景もあり、厚生労働省では中小企業・小規模事業者を対象とした「業務改善助成金」を、9月5日から拡充した。今回は、飲食店経営者も活用できる「業務改善助成金」の内容と、受給までの流れについて紹介する。

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9月5日から対象事業者が拡大。賃金引き上げ計画の事前提出が省略可能に

「業務改善助成金」とは、中小企業・小規模事業者が事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、同時に生産性を向上させるための設備投資などを行った場合に、その費用の一部を国が助成する制度だ。

助成対象となる「生産性向上のための設備投資」には、POSレジなどの機器・設備の導入や、業務フロー見直しに関する経営コンサルティング、顧客管理システムの導入などが挙げられる。助成額は、引き上げる賃金額や労働者の人数に応じて決まり、最大で600万円だ。助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金によって異なり、1,000円未満であれば原則として5分の4(80%)、1,000円以上であれば4分の3(75%)となっている。

今回の拡充における大きな変更点は、「対象事業者の範囲拡大」と「手続きの簡略化」の2点だ。まず対象事業者の範囲については、従来の「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内」という要件が緩和され、令和7年9月5日からは「事業場内最低賃金が、新たに改定される地域別最低賃金額未満」の事業者であれば対象となる。

次に手続きの簡略化については、これまでは申請前に賃金引き上げ計画を提出する必要があったが、令和7年9月5日から同年度の地域別最低賃金改定日の前日までに賃金の引き上げを実施した場合に限り、この計画の事前提出が省略できるようになった。

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「業務改善助成金」を受給するまでの流れ

「業務改善助成金」を受給するまでの主な流れは以下の通りだ。

1. 交付申請:事業計画などをまとめ、都道府県労働局に申請書を提出する
2. 交付決定:提出された申請書をもとに審査が行われる
3. 事業の実施:交付決定後、計画に沿って賃金の引上げや設備投資などを実施する
4. 事業実績報告:事業完了後、労働局に実績報告書と助成金支給申請書などを提出する
5. 助成金受給:実績報告書などの審査を経て交付額が決定、支給される

申請にあたっては、いくつか注意点がある。特に重要なのは、必ず交付決定後に設備投資などを実施する点だ。交付決定前に導入した設備は助成の対象とならないため、手続きの順番を間違えないよう注意が必要となる。

また、賃上げの実施時期や、就業規則などで引き上げ後の賃金を明確に定めるといったルールもあるため、事前に管轄の労働局へ確認しておくと安心だ。

最低賃金の引き上げは、経営への影響も少なくない。しかし、「業務改善助成金」は単なる賃上げ対策というだけでなく、店舗の生産性向上にもつながる絶好の機会と捉えることができる。これを機に生産性を高め、強い経営体質を築くためにも、「業務改善助成金」の活用を検討してみてはいかがだろうか。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com