10月の食品値上げは3,024品目、半年ぶりのラッシュ。物流費・人件費高騰を乗り切る対策とは
原材料費や人件費の高騰が続くなか、帝国データバンクが10月の価格改定動向調査を発表した。それによると10月は4月以来半年ぶりに3,000品目を超える値上げとなり、特に「酒類・飲料」分野の品目が多い。また、物流費や人件費といった国内要因による価格改定が目立つ。今回は、この調査結果をひもときながら、飲食店が取り組める具体的な対策を解説する。
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値上げの主な要因は、物流費や人件費など国内の事情へシフト
10月の値上げは3,024品目にのぼり、前年10月(2,924品目)から100品目(3.4%)増加した。これにより、前年同月を上回るのは10か月連続となり、2022年の統計開始以降で最長の連続増加期間を更新している。
今回の値上げの背景として特に注目したいのが、物流費と人件費の上昇だ。物流費を要因とする値上げは、昨年の68.1%から78.8%に上昇した。2024年4月から適用された、トラックドライバーの時間外労働を規制する「2024年問題」が、ドライバー不足や運賃の引き上げに拍車をかけているとみられる。
さらに人件費を要因とする値上げも昨年の26.5%から50.2%へと急増。ここ数年の賃上げによるコスト増が、時間差で価格に反映されているかたちだ。
食材費と人件費の合計が売上に占めるFL比率は、飲食店経営において60%以下が理想とされる。しかし、これらコストの上昇を受け、多くの店が価格改定の判断を迫られているのではないだろうか。
「酒類・飲料」は2,262品目。飲食店に求められる対策とは?
2025年10月の値上げ品目のうち、最も多かったのが焼酎やリキュール、日本酒などアルコール飲料を中心とした「酒類・飲料」で、全体の7割以上を占める2,262品目にのぼる。この分野で単月に2,000品目を超えるのは、2023年10月以来2年ぶりだ。
値上げ要因の内訳を見ると、物流費や人件費といった国内要因が増加する一方で、「原材料高」も96.1%と依然として高い水準を維持している。その反面、「円安」を理由とするものは12.4%まで減少した。こうした状況から、「酒類・飲料」の価格高騰が飲食店の利益を圧迫する流れは、今後も続いていくと考えられる。
では、「酒類・飲料」の値上げにどう向き合えばよいのだろうか。例えば、自家製シロップを使ったサワーやオリジナルのノンアルコールドリンクなど、付加価値の高いドリンクで利益率を確保する方法が考えられる。
また、単に価格を上げるだけでなく、「松竹梅」のような価格帯の異なるプランや、特定メニューとのセット割引を導入するなど、お客が選びやすく、納得しやすい工夫も必要だろう。オペレーション面では、ドリンクサーバーの導入やスタッフの動線見直しによる効率化も有効な手段といえる。
10月の値上げ動向は、コスト構造が国内要因へとシフトしていることを示している。メニュー構成や人材活用のあり方を、根本から見直す時期にきているのかもしれない。
なお、11月の値上げ予定品目は9月末時点で99品目にとどまり、値上げラッシュは一旦小休止となりそうだ。このタイミングを捉え、自店の経営と向き合い、コスト高を乗り切るための強い体質づくりが求められている。
