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砂田兄弟の新店、渋谷『C'est ouf』はホテル仕込みのフレンチ!? 若手“異端児”たちの新たな挑戦

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オープンキッチンで調理をする熊谷シェフ

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大衆酒場の砂田兄弟が「フレンチ」を名乗ることに意味がある

「この店での何よりのチャレンジは、クマちゃん(熊谷氏)が作る本格創作フレンチと、僕らの代名詞である大衆居酒屋・立ち飲みをかけ合わせることで生まれる“心地いい違和感”に、いかに付加価値を付けられるかです。だから、もともとの僕らの得意分野と同じ大衆的という意味を持つ『ビストロ』や『バル』でなく、あえて『フレンチ』を名乗ることに意味がありました」

そう語るのは、弟の康太氏。大衆立ち飲み、カフェと、これまですべてマス向けの店を展開してきた砂田兄弟が今回、フレンチという“ハイソ”な境地へ挑戦することの話題性がまず、最初の価値付けだったと話す。

熊谷氏とは、出会ってすぐに意気投合したという二人。「初めて話した時から、もう5、6回は深く語り合った仲なんじゃないかと思うほど馬が合って、『大人気』には月に数回というレベルではなく異常なほど通っていました(笑)」と熊谷氏も笑って見せた。

そんな熊谷氏の料理への熱意や飲食店に対する価値観に感化され、砂田兄弟はかねてから「いつか一緒に店を」との思いを抱いていたという。ゆえに、この物件と熊谷氏のジョインが決まり、その舞台が整った時、熊谷氏のアイデンティティともいえる「フレンチ」を掲げたことには、砂田兄弟なりの彼へのリスペクトも垣間見える。

シグネチャーの『C'est ouf アミューズプレート』(1人前2,000円 ※写真は2人前)。既存メニューの盛り合わせではなく、この一皿だけの品が7、8種並ぶ(写真提供:C'est ouf)

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変化を恐れず自分たちがワクワクすることを貫く
「流行ることが正解」の風潮に一石を投じたい

一方で、大衆居酒屋で立て続けにヒットを飛ばした砂田兄弟はなぜ、枠にとらわれない挑戦を続けるのか——。背景には、「自分たちがワクワクすることをする」という創業時からの強い軸があるとしつつ、彼らを取り巻く環境の変化を前向きに楽しんでいると話してくれた。

その一つは、年齢だ。『大人気』創業時、30歳だった健太氏は34歳に、28歳だった康太氏も31歳になり、大衆酒場の賑わいだけではない「外食の幸福感」に魅力を感じる機会が多くなったと、康太氏は振り返った。例えば、やや高単価の日本料理店でゆったりと酒を酌み交わす楽しみだったり、プロのバーテンダーが自分のためだけに作る一杯をじっくり味わう時間だったり。あえて少し多く人の手をかけることで生まれる付加価値には、馴染みの店に仲間と集い、ワイワイ楽しく飲むことで得られる充実感とは異なる幸福があると話す。

さらに、「物価高騰の影響は大きい」と経営者の視点からの正直な気持ちも吐露した。あらゆる食材の値が上がり、運送費、人件費、光熱費とコストばかりが増え続ける今、コスパを重視した飲食店展開では大手チェーンには叶わないというのだ。「大手ではない自分たちにしかできないことを」。それを前向きに捉え、砂田兄弟流にアウトプットした結果の一つが『C'est ouf』なのだろう。

ドリンクはワインの他、銘柄ウイスキー各種もそろえる(写真提供:C'est ouf)

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「特に渋谷は、模倣店であふれています。すでに流行っている店に似通った店が増え、『流行ることが正解』という風潮が強い。僕らはそれにアンチテーゼを唱えたいんです。新しいことには賛否もあるでしょうし、ロケットスタートはできないかもしれない。でも、チームで一つ一つ課題を解決して改善していくからこそ、店の糧になる。僕らが目指すのは、流行りにのった瞬間的な繁盛ではなく、自分たちがワクワクすることを貫いて、それが結果的に着実に根付くこと。変化や挑戦を怖れず、常に自分たち自身で導き出した正解を進んでいきたい」(康太氏)

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。