砂田兄弟の新店、渋谷『C'est ouf』はホテル仕込みのフレンチ!? 若手“異端児”たちの新たな挑戦
立ち飲みからの転換は「幸福になれる母数」が多いから
その言葉どおり、『C'est ouf』のオープン当初に大きく掲げていた「立ち飲みフレンチ」というキャッチーなスタイルを封印し、わずか3か月で一部のスタンディングスペースを残して着席スタイルにシフト。ホテル仕込みの本格創作フレンチを大衆的に立って楽しむというギャップの面白みは惜しかったと話すが、人材、客層、フェーズなどさまざまな現状を鑑みた末、今の『C'est ouf』にとってはそれが最適解だと迷いはなかったと話した。
着席の最大のメリットは、あらゆる「時間」に余裕ができることだろう。お客はゆっくりと過ごすつもりで来店するため、提供スピードや効率性の優先度が大きく緩和され、調理から盛り付けまでシェフはより本来の力を発揮できるようになる。ましてや、熊谷氏はホテルレストランで長年培った一流のフランス料理術の持ち主だ。カウンター越しに、その手仕事が間近で見られるとなればお客の満足度は上がり、皿や提供スタイルに幅が出たことで料理全体のクオリティも高くなる。そのすべてが、お客の幸福感につながるのだ。
「特にこの店は、厨房に立つシェフやスタッフ自身が、店全体の空気をつくれる空間にしたいと思ってデザインしました。一部の立ち飲み席でこれまでのラフな楽しみ方を残しつつ、椅子を設けたことでより、彼らが自分のリズムと世界観をより表現できるようになったと思います」(健太氏)
着席への転換に合わせてメニューも一新。盛り合わせスタイルの前菜やパイ包みのハンバーグなど、確かな本格フレンチを“砂田流”に味わってもらえるよう試行錯誤を続ける。ゆくゆくはフルコースの展開も視野に入れているという。
「着席にした方が、『幸せになる人の母数』が増えると判断した」と康太氏。それは働くスタッフも例外ではなく、納得いくまで料理に手をかけられるシェフ、さらには、その技術や料理をチーム全員で最大限共有するための選択でもあるのだ。
変わらない気持ちで、変化を続ける
最後に、今後のビジョンを尋ねると「『あの二人、誰より飲食業を楽しんでいるよな』と常に思われる存在でありたい」と二人は口をそろえた。自身もスタッフも、やりたいと思ったことにチャレンジできる、もしくはここでならチャレンジしたいと思える環境を作り続けるのが目標だ。
「変化を恐れず、僕らが新しいことに挑戦する姿を見せ続けることで、スタッフ、お客さん、同業者……、少しでも誰かに何か刺激や幸せを届けられたら嬉しい」(康太氏)
「今まで大事にしてきたものを、ずっと大事にしていけたらいいですね」(健太氏)
変わらない気持ちで、変化を続ける。「砂田兄弟ならきっとまた何かやってくれそう」という期待感は、まだしばらくは消えそうにない。
『C'est ouf』
住所/東京都渋谷区桜丘町30-9 Shibuyahills B1F
営業時間/15:00~23:00
定休日/不定休
坪数・席数/15坪・12席+スタンディング
https://www.instagram.com/cest_ouf_tokyo/
