開業3か月でビブグルマン選出! 渋谷『ナイトマーケット』が提供する「心躍る食体験」とは
生産者との対話から生まれる、食材本位のメニュー開発
『Night Market』の料理の根幹を成すのは、内藤氏がこれまで培ってきた経験、特に食材との向き合い方にある。
「僕の料理の考え方は、食材ありきで構成することがほとんどです。『レフェルヴェソンス』にいた頃、生江シェフが生産者の方をすごく大事にしていて、お店で使う食材は現地に赴いて、どういう人がどういう場所で作っているかを理解した上で使おう、というポリシーを持っていました。その影響を色濃く受けていますね」
その言葉通り、青山ファーマーズマーケットでの買い付けに加え、全国の生産者とのネットワークも活用している。例えば、静岡県浜松の「バジルハウス」という生産者からバジルを仕入れているという。
「バジル一つとっても、ただ種類が多いだけでなく、適切に処理・管理されたものが届きます。お店でもその良い状態を保てるよう、保存方法を徹底しています。フレッシュハーブの鮮烈でみずみずしい香りは、東南アジアらしさを表現する上で何にも代えがたい要素。そこは自信を持っているポイントです」
「東南アジア×日本」を象徴する、2つの看板メニュー
生産者から届く日本の旬の食材と、東南アジアの伝統料理。この二つをつなぎ合わせることで、『Night Market』ならではの独創的な一皿が生まれる。その哲学を象徴するのが「クラシック節のフォー」だ。
「ベトナムを代表する麺料理のフォーに、和食の基礎ともいえる鰹節を合わせる。これは僕の料理哲学を色濃く表しているメニューだと思っています。東南アジア的なものと、日本的なものを合わせると、意外なほど相性が良く、新しい発見がある。これは『An Di』のときから作り続けている定番で、今後も通年で出し続けていきたい一品です」
もう一つ、オープン以来、多くのお客を魅了しているのがタイの青パパイヤサラダ「ソムタム」だ。
「今の時期はサンマを、その前はカツオを使っていました。炭火で香ばしく炙った魚の半身を、ソムタムの上にのせて提供しています。この料理で喜ばれるのは味だけでなく、プレゼンテーションにもあるんです。ソムタム専用の陶器の鉢と木製のすり棒を使って、お客さまの目の前で青パパイヤの千切りやニンニク、ナッツなどを和えていくんです」
トントン、とリズミカルに響く音、そして立ち上る鮮烈な香り。機械で処理するのとは全く違う、五感に訴えかけるライブ感は、まさに現地の夜市さながらだ。
「これも、主役はあくまでサンマ。『サンマをどうすれば一番おいしく、東南アジア料理として表現できるか』という発想が軸にあります。食材が持つ本来の個性を消さない味付けのラインは、常に守りたい。フレンチの技法で日本の食材を表現したのが『レフェルヴェソンス』だとしたら、僕がやっているのは、その枠組みを東南アジア料理に置き換えることなんです」






