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西荻窪のカフェ『yuè』が完全予約制に。“制限”することで得た自由とゆとり

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店内は木の温もりがあふれる穏やかな空間

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完全予約制への転換のきっかけは「理想と現実」の双方へのアプローチのため

そんな『yuè』が昨年4月、事前オーダー制の完全予約スタイルへと一新。週4回の営業日を、主に食事の日とスイーツの日に分けた2時間・2回転制とし、予約時に食事のセット内容もすべて聞き取る形へと踏み切ったのだ。

これまで4年にわたり、席予約はおろか、ランチやカフェ使いに優先的な時間を設けることもなく、できる限り柔軟な店づくりを大切にしてきた二人がなぜ今、“制限”することを選んだのか。背景には小さなことの積み重ねがあるとしつつも、「おいしいものと一緒にくつろげる場所」への一途な思いと、経営面での現実的な課題を話してくれた。

奥はテーブル席に。全9席のためプライベートな時間が過ごせる

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「当たり前のことなんですが、できるだけいつでも好きなものを楽しんでもらおうと思うと、常に少し余裕を持った量の仕込みや準備をしなければいけません。でも、すごく落ち着いている日もあれば、季節や日によって、開店前からお並びいただいたり満席だったりで、せっかく来ていただいたのにお断りせざるを得ないことやお目当てのものが売り切れてしまうこともしばしば……。そのコントロールが難しいなとずっと感じていました」(祐貴さん)

「ゆっくり過ごしてほしいと思っていても、外でお待ちの方がいる方がいると店内で過ごす方も忙しなくさせてしまって。二人だけでやっているので、お待ちの方の対応をしているとどうしても手が止まってしまうことも心苦しさの一つでした」(沙代さん)

予約時のセットにオプションメニューの追加やドリンクの変更が可能(+100円〜)

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加えて、昨今の物価高……、特に米価格の高騰の影響は大きかったと率直な気持ちも吐露した。以前の『yuè』の場合、営業時間を通して食事のオーダーが可能で、かつカレーのテイクアウトにも対応していたため、ある程度の炊飯の余剰は不可欠だったという。しかし、例えばいわゆるランチタイムにカフェ利用客が重なれば、必然的に米のロスが大きくなるのは明白だ。

物価高を目の当たりにした時、店の良いところであるはずの自由さが、自分たちの首を締めることになったと振り返る二人。いよいよ何か策を講じなければと新しい枠組みを模索し始めたのは、ちょうど米の値上がりが顕著に見られた1年前頃。その後、春の繁忙期が重なった今年3月、一人ひとりのお客の顔さえまともに見られていないことに気づいた時、立ち止まらなけらばと決断したという。

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RIN

ライター: RIN

カフェライター・エディター。街の小さな一軒からトレンドカフェ、昔ながらの喫茶店まで、カフェという場を通じて幸せを提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。ライフワークは"スコーンの人"(IG:@rin_125)。