下北沢『where』がカフェとレストランを共存させる意味。届けたいのは「食体験の感動」
昼は上質なカフェ、夜はイタリアンをベースにしたレストランとして、二つの顔を持つ下北沢の『where(ウェア)』。ミシュラン星付き店出身のオーナーシェフ・小林大樹氏が、カフェとレストランの共存に込めたメッセージと共に、その食哲学と経営戦略に迫る。
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カフェとレストラン、それぞれの弱点を補い合って生まれた『where』
「600円のコーヒーひとつで、リストランテ時代には来られなかった友人や知人が『おいしい』と喜んで来てくれる。それだけでも、カフェとレストランを共存させた意味は確かにあったと感じています」
約5年にわたりミシュランの星付きイタリアン、参宮橋『Regalo(レガーロ)』で腕を磨き、姉妹店の中目黒『AUDACE(アウダチェ)』のシェフを経て、自身の店『where』をオープンした小林大樹氏は冒頭、穏やかながらも力強い口調でそう言葉にした。
『where』は、カフェとレストランの二つの顔を持つ店。昼は選りすぐりのコーヒーと自家製ワッフル、笹塚『dough-ist(ドウイスト)』のパンを使った本格サンドイッチが楽しめる上質な「カフェ」を、夜はイタリアンをベースにした多彩なアラカルトとおまかせコースが堪能できる「レストラン」をうたい、大きくメニューを棲み分けるスタイルをとる。
料理人としてキャリアを重ねる間も、カフェで過ごす時間が常に精神安定剤だったと語る小林氏。カフェを開きたいという気持ちが強くあったと話す一方、飲食店経営学を多少なりともかじれば、それだけで潤沢な利益を生む難しさは目の当たりにしてきたと振り返った。
「ただその反面、これまでいたようなリストランテと呼ばれる業態では、食への関心度や収入、家族構成によって、地元の友人すら一度も来られなかったことに少し寂しさも感じていました」
レストランの食事が、一定以上の富裕層しか触れる機会のない“お金持ちのエンタメ”と化しつつあることを憂いていたと、複雑な気持ちを吐露した小林氏。そこで導き出した答えが、カフェとレストランの共存だった。昼営業を、“夜営業のカジュアルダウン”といった位置付けにしないことで、夜のレストランのブランディングにもつながっているという。
強みを生かすために安売りはしない。カフェとレストランに異なる価値をつくる
当初カフェでは、業態特有ともいえる多様なニーズに応えようとするあまりに、さまざまな要望を取り入れすぎて輪郭がぼやけてしまったと、小林氏はこの日あらためて、自らを省みた。
自分がカフェを運営する意味や、『where』というカフェにとって本当に必要なものを見直し、9月にはカフェをリブランディング。昨今の物価高騰と大手との競合回避から価格競争とは明確に一線を引くこと、さらに、オペレーションや中長期的なブランディング面から、好評だったパスタランチの大幅縮小を決断し、クオリティと独自性は確かに保ちつつ、より属人性が低いメニューに移行する戦略へと舵を切ったのだ。
中でも注力するのは、小林氏自身が感動するほどほれ込んだという『ドウイスト』のパンを使ったサンドイッチ。特殊なオーブンで蒸気をあてながらリベイクすることで、芳醇な香りと独特のもちもち食感をよみがえらせたパンに、自家製ハム、照り焼きチキン、季節メニューなどの具材を挟み、複数の前菜を添えて提供する。カフェという言葉から想像するクオリティを遥かに超えるおいしさに、早くも幅広い世代から大きな注目を集めている。





