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坪月商40万円を売る学芸大学『つきかげ』。焼酎×鶏料理への偏愛を「高収益」に変える技術

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『つきかげ』店長の高野裕貴氏(左)とオーナーの赤川登希夫氏(右)

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東京・学芸大学。感度の高い飲食店がひしめくこの街に、2025年7月、7.5坪・12席の小箱『つきかげ』がオープンした。手掛けるのは、同エリアの繁盛店『ひとひら』などを展開するオーナー・赤川登希夫氏。そして、店の全権を委ねられたのは、焼酎のプロと信頼される料理人・高野裕貴氏だ。

なぜ赤川氏は、自らの“隠れ家”にするはずだった好条件の物件を、高野氏に託したのか。そして、なぜ雇用ではなく将来的な譲渡という出口を用意したのか。焼酎と鶏料理への偏愛を生かした店づくりと、独立支援の新しい形に迫る。

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『つきかげ』があるのは『ひとひら』の数軒隣。付近には古くからの焼き鳥店も多いため、あくまで「鶏料理と焼酎の店」をうたう

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『代官山ひなた』のイベントで焼酎に覚醒。「紅茶のような香り」が変えた料理人人生

二人の出会いは、草野球のグラウンドだ。当時、赤川氏は独立前、高野氏は別の店で腕を磨く料理人であり、チームでバッテリーを組んだ間柄だった。

その後、高野氏は渡米し、ロサンゼルスなどで和食店の立ち上げに携わったが、ビザの関係で帰国を余儀なくされる。その際、真っ先に連絡を取ったのが赤川氏だった。時を同じくして、赤川氏は次の展開を模索していた。

「元々、2号店を彼に任せたいという話はずっとしていたんです。タイミングが合わずに流れていましたが、彼が帰国し、僕も新しい物件に出合った。ここなら面白いことができると確信したんです」(赤川氏)

元々フレンチだった店舗を赤川氏が「どんな業態でも使えるように」と考え、温かみを残しつつ、モダンでスタイリッシュな内外装にリニューアル

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実は高野氏、帰国後は『つきかげ』のオープンに先立ち、同グループの人気店『代官山ひなた』で店長を務めていた。彼が焼酎のプロへと変貌を遂げたきっかけは、そこでのあるイベントだった。

「『ひなた』の3周年記念で、焼酎蔵とコラボレーションしたペアリングイベントを企画したんです。それが予想以上に好評で。何より僕自身が、鹿児島県指宿市の『大山甚七商店』さんが造る『宮ヶ浜 MIYAGAHARA AROMA』に出合い、衝撃を受けたんです。まるで紅茶のような香りがして、焼酎の概念が覆されました」(高野氏)

焼酎は30~40蔵ほどから仕入れ、常時130種類ほどをそろえる。値段はグラス660~1,320円ほど

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「作り手の思いや、土地のストーリーを届ける」という哲学に共鳴

そこから高野氏は、一気に焼酎の奥深い世界へのめり込んでいく。鹿児島県の『コセド酒店』を通じて蔵元と直接繋がり、営業担当と杯を交わして意気投合する。また、かつて勤めた『東京 今井屋本店』時代の後輩が鹿児島出身だった縁で、『中村酒造場』や『万善酒造』といった作り手とも繋がっていった。

「酒屋さんが蔵へ繋いでくれて、後輩が地元の名士と繋いでくれる。焼酎そのものの味はもちろんですが、そういった『人の輪』が広がる面白さに魅了されました」(高野氏)

焼酎のオーダー率は8割ほど。『つきかげ』オリジナル焼酎も登場予定だ

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アパレル出身の赤川氏が大切にしてきた「作り手の思いを届ける」という哲学を、高野氏は『代官山ひなた』での経験を通じて、自らの肌感覚として体得していたのだ。だからこそ赤川氏は、次の新店を彼に任せる決断をした。

「当初、この7.5坪の物件は僕自身がワンオペで立つか、倉庫兼趣味の店にするつもりでした。でも、高野が『焼酎と鶏の炭火焼の店をやりたい』と言い出した。彼はただ焼酎が好きなだけでなく、蔵元を訪ね、その土地の風景や仕込み水の物語まで伝えようとしていた。その姿勢が、僕が大切にしてきたことと同じだったんです」(赤川氏)

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。