武蔵小杉『Five bird』による焼鳥業態の勝ち筋。個性派焼鳥×小田原おでんの2本柱で連日満席
注文率9割! 部位ごとに味付けを変えた「焼鳥5本コース」のメニュー戦略
以前から全国の焼鳥店を訪れていた本間氏は、「素材や技術を追求するだけでは、一部のお客さまにしかその価値が伝わらない」と感じ、「多くのお客さまがおいしく感じ、価値が伝わりやすい焼鳥とは何か」を追求。その結果、味以外の部分での体験価値をプラスし、塩とタレにこだわらず部位ごとに相性の良い味付けで提供する現在のスタイルに至ったという。
焼鳥は、「ささみ カラスミパウダー×海苔」、「ハツ 生姜×ホワイトペッパー」など味付けに趣向を凝らした16品を280~420円で揃えるほか、お値打ち感を高めた「【Five bird流】必食5本コース」(1,500円)をキラーコンテンツとして用意している。
単品で注文するよりも200~300円安い価格設定とし、焼く前の串をプレートにのせて「これからこちらをお焼きします」とお客に見せるプレゼンテーションをはさむことで、鮮度の良さやワクワク感を訴求。さらにコース仕立てで1本ずつ提供することで満足度を高め、注文率を9割まで伸長させている。
焼鳥以外の串メニューでは、季節の野菜を使った「日替わり野菜串」も好評だ。5本コースの合間にその日の野菜串をプレートにのせて客前に運び選んでもらうというもので、価格はわかりやすく1本250円均一に設定。選ぶ楽しさもあってほとんどのお客が注文し、客単価のアップにも貢献している。
オペレーションが軽く、冬場に強いおでんを第二の柱に
また、焼鳥と並びおでんを看板商品と位置づけているが、その理由は大きく3つある。ひとつは、本間氏の地元である小田原の名物を取り入れたいという思いから。2つ目は、焼鳥は串打ちの仕込みからツーオーダーで焼き上げるところまで調理オペレーションの負荷が重いのに対し、おでんは仕込み置きができ、盛るだけで提供できるため生産性を高められる点。そして3つ目はマーケティングの観点から、「一年を通じて集客に波がない焼鳥という商材と、圧倒的に冬場が強いというおでんを組み合わせることでさらなる集客効果や客単価アップを狙えるのでは」という目算である。
ドリンクの主力は、100種類以上を揃えるワイン。本間氏のソムリエ資格を活かせることに加えて、「武蔵小杉駅周辺にはワイン専門店が多くニーズがあるのでは」と踏んだからだ。ワインの注文率は5〜6割で、来店客から「こんな店がほしかった」という喜びの声もあり、手応えを感じているという。

