生焼けカツ丼炎上はなぜ起きたか。【12月】飲食店の食中毒・ノロウイルス対策と衛生管理チェック
2025年11月30日、飲食店で提供された生焼けのカツ丼の画像がSNSに投稿され、大きな話題になった(参考1)。この件を踏まえ、加熱不足などの食品事故によって引き起こされる食中毒のリスクと、飲食店が取るべき予防策について解説する。
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炎上の背景:なぜ「生焼け」は起きたか?食品事故の教訓
X(旧Twitter)に拡散された「生焼けカツ丼」の投稿者は「何度か食べてる店だが、カツ丼の肉が赤い」と指摘。添付された画像では豚肉の中央部が明らかにピンク色で、加熱不足の状態に見受けられた。最終的に店がミスを認め、商品の作り直しを提案したものの、投稿者は不信感から申し出を拒否したという。SNS上では、この投稿に対し店側の衛生管理を疑う声や、調理の安全性への批判が上がっている。
今回のように豚肉などを半生の状態で口にした場合、主に以下のような食中毒リスクが考えられる。
■E型肝炎
国内での感染事例の多くは、野生のイノシシや鹿の肉を加熱不足で食べたことによるが、豚肉から人への感染も懸念されている。発熱、腹痛の他、倦怠感や黄疸などの肝炎症状を起こし、場合によっては死に至るケースもある。
■サルモネラ症
多くの動物の腸内に存在するサルモネラ菌に汚染された肉や食品を食べることで感染する。豚のサルモネラ症は世界的にも増加傾向にあると言われている。原因となる食品を食べた後、腹痛、水様性下痢、発熱などの症状が現れる。
■カンピロバクター食中毒
鶏肉での感染が代表的だが、豚肉も保菌している可能性がある。食べてから2~5日で水様性下痢、腹痛、発熱、倦怠感などの腸炎症状が出る。まれにギラン・バレー症候群に進行することもあり、死亡例も報告されている。
自治体が発表している食品衛生情報では、以下の点が呼びかけられている(参考2)。
・生肉は10℃以下の冷蔵庫内で保管すること
・豚肉、豚内臓は、新鮮であっても生で食べないようにすること
・調理の際も生焼けにならないよう十分に加熱すること
厚生労働省も豚肉(特にひき肉の場合)の中心温度を75℃で1分以上(またはそれと同等以上)加熱をするよう呼び掛けており、改めて注意しておきたい(参考3)。
12月は急増の時期。ノロウイルス食中毒のメカニズムと予防の3原則
冬に急増する病原菌の代表例が、ノロウイルスだ。厚生労働省や各自治体の統計でも、例年11月から3月にかけて患者数が急増することが示されている(参考4)。
ノロウイルスは極めて少量でも感染しやすく、アルコール消毒が効きづらい特徴を持つ。汚染された食品を直接口にした場合の他、二枚貝などウイルス汚染の恐れがある食品を扱ったスタッフや調理器具から広がる「二次汚染(交差汚染)」にも気を付けたいところだ。
一方で熱には弱く、85~90℃で90秒以上の加熱を行えばウイルスが不活化するというデータもある。つまり、以下3つの予防策の徹底が最重要となる。
1. 手洗いの徹底
アルコール任せにせず、爪の間、手首などの汚れやすい部分の洗浄を徹底する。トイレ後や嘔吐物の処理後、食材や作業が変わるタイミングでは「2回洗い」を標準化したい。
2. 加熱基準を統一する
厚切り肉や解凍した食材は、中心温度のバラつきが出やすい。冒頭の「生焼けカツ丼」の事例においても、冷凍された肉を冷蔵の肉と同じ時間で揚げてしまった可能性が指摘されていた。加熱基準(85~90℃で90秒以上など)を厨房内で徹底することで、品質管理が可能になる。
3. オペレーションを整備する
使い捨て手袋・マスク・エプロンなどを高頻度で交換し、清掃には塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)を使用する(参考5)。スタッフに体調不良者が出た場合の代替策を検討しておくなど、仕組みでリスクヘッジすることが重要だ。
ノロウイルスをはじめ、冬は食中毒が特に増える時期だ。まずは加熱基準の統一と手洗いの徹底、そして交差汚染を防ぐ動線づくりを改めて確認する必要がある。
「生焼けカツ丼」の一件は、オペレーションの緩みによってどの店舗でも起こり得ることだ。宴会・団体利用が増え、基準のばらつきが起こりやすくなる年末年始に向け、衛生チェックリストを見直し、運営体制を強化することをおすすめしたい。










