アップデートした中華で月商1,500万円。吉祥寺『シネンシス』は業界のゲームチェンジャーへ
「中華はダサい」。悪しき慣習から脱却しなければ、業界に未来はない
「中華はダサい」——、小野氏はそう憂う。だがそれは、中華を心から愛するゆえの小野氏なりの問題提起といえるだろう。「ダサい」の対象は、料理そのものではなく、業界の体質を含めた広義なものだという。『sinensis』を通して、お客も働く人も、すべての人が「かっこいい」と思える中華レストランをつくることで、業界に前向きな流れを生みたいと語った。
「中華業界では長く、職人気質の“料理人主義”が続き、罵倒や理不尽とも思える過酷な修業が美学とされてきました。今でも、数十年前で時が止まっているかのようにそんな悪質な労働環境が当たり前。ただあまりにも現実社会と厨房内とが乖離しすぎているため、若手料理人の中華離れが深刻化し、このままでは業界の縮小が免れません」
自身が師事してきた師のことは心から尊敬し、堅い師弟関係や厳しい修業のストーリーにはある種の色っぽさもあると敬意を払いながらも、「時代は変わっている」と語気を強める小野氏。有能な若手を積極的に採用し、即戦力として現場を任せているのは、彼らの能力を適正に評価し、光を当てたいという思いの表れでもあるのだ。
今、『sinensis』でメインで鍋を振るのは20歳の料理人。スタッフには月9日の公休を確保し、できる限り給与面や労働環境も優遇している。「先人たちの職人的な美しさは残しつつ、若者が憧れるような料理・職場・職人をつくらなければ、中華業界に未来はない」。小野氏は、さまざまな業務効率化で労働環境を改善し、SNSをはじめとしたメディア発信や集客に力点を置くという、現代の飲食業界の戦い方を中華業界に持ち込もうとしている。
原点の“まかない”に誓った、「広める」という使命
最後に、なぜ自身も料理人として確かな技術を持ちながら経営者としての道を進むのか、素朴な疑問を投げかけた。
「『月世界』に入った初日に師匠が作ってくれた“まかない”が、僕の原点です。忘れもしない、よだれ鶏と海南醬炒めと、鴨血の塩漬けでした。あまりのおいしさに、作りたいというよりも『広めたい』という思いが勝った。これまで手がけてきた3店舗すべてで、多くの人と接点を持てるスタイルを取ってきたのも、若手にバトンをつなぎたいのも、あの味を広めたい・絶やしたくないからです。中華業界の未来のためには、自分が今この立場に立つことが、適切で必要な手段だと思っています」
2月には、池袋に新たな店を開業予定。積極的な展開を続けることで、同業者に刺激を与えられればと意欲を見せる。中国料理の威信をかけた小野氏の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
『sinensis(シネンシス)』
住所/東京都武蔵野市吉祥寺本町2-8-3
電話/0422-27-2142
営業時間/11:30~15:00、17:30~22:30
定休日/不定休
坪数・席数/35坪・45席
https://www.instagram.com/sinensis.kichijohji/









