飲食店ドットコムのサービス

食料品消費税ゼロで飲食店経営はどう変わる?「仕入税額控除」から読み解く致命的なリスク

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

画像素材:PIXTA

画像を見る

2月8日投開票の衆院選。各党が掲げる「食料品消費税ゼロ」は消費者には朗報だが、飲食店には試練だ。外食10%との価格差による客離れに加え、「仕入税額控除」の仕組み上、納税負担が一時的に集中し、手元の資金繰りを圧迫する恐れがあるからだ。公約の裏に隠れた課題と、今から考えておくべき対策を解説する。

>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!

外食需要の変化とテイクアウトの混乱。10%の価格差が招く「顧客流出」

まず直感的に理解できる影響として、外食と中食(持ち帰りやスーパーでの購入)との間に生まれる「税率の壁」がある。今回の選挙では、自民党・日本維新の会が「2年間の期限付き」を、立憲・公明が合流した新党・中道改革連合が「恒久的なゼロ」を掲げているが、いずれにせよ導入されれば影響は避けられない。

■外食需要の減退リスク
現状でも外食(10%)と持ち帰り(8%)には2%の税率差があるが、食料品の消費税がゼロになれば、この差は一気に10%へと拡大する。例えば、店内で1,100円(税込)のランチを提供する場合、同じものをテイクアウトやお弁当として買えば1,000円で済むことになる。この100円の差は、消費者が外食をためらう心理的なハードルになりかねない。「店で食べる」という体験価値よりも「安さ」が優先され、客足がスーパーやコンビニ、あるいはテイクアウト専門店へと流れる可能性が予想される。

■テイクアウト対応の複雑化
そうなれば、テイクアウトを強化する飲食店も出てくるだろう。しかし、店内飲食(税率10%)と持ち帰り(税率0%)が混在することで、レジ業務や会計処理は今以上に煩雑になる。スタッフの教育コストやミスによるトラブルも懸念材料だ。

単なる価格競争だけでなく、「店内で食事をしてもらう」ことの意味や価値を改めて問い直さなければ、10%の価格差という荒波を乗り越えるのは容易ではないだろう。

仕入税額控除の落とし穴。「非課税」と「ゼロ税率」で何が変わる?

「お客が減るかもしれない」という営業面のリスク以上に、経営者が警戒すべきは税務の仕組み、具体的には「仕入税額控除」への影響だ。

消費税の納税額は、原則として「お客から預かった消費税」から「仕入れで支払った消費税」を差し引いた金額になる。しかし、食料品の消費税がゼロになった場合、仕入れにかかる消費税も実質的に消滅する(あるいは控除できなくなる)ため、これまでの計算が成り立たなくなる恐れがある。ここで重要になるのが、制度が「ゼロ税率(免税)」になるのか、「非課税」になるのかという違いだ。

■「非課税」の場合
仮に仕入れが「非課税」扱いとなれば、食材の仕入れ時に税金を支払う必要はなくなる。その分、日々の支払いは身軽になるが、注意したいのは納税時だ。

売上にかかる消費税(10%)から差し引ける「仕入税額控除」がなくなるため、これまで仕入れのたびに分散して支払っていた税金が、確定申告のタイミングで一気にのしかかってくる。支払いの総額は変わらなくても、納税という形で「まとめて出ていくお金」が膨らむため、これまで以上に計画的な資金管理が求められることになる。

■「ゼロ税率(免税)」の場合
形式上は課税取引として扱われるため、理論上は控除が可能となる。しかし、懸念されるのは「仕入れ価格」の動向だ。

もし、仕入れ業者の対応が「消費税分の値下げ」となれば影響は抑えられる。だが、原材料費の高騰などを理由に「税込価格が据え置き」とされた場合は注意が必要だ。実質的な値上げとなるこのケースでは、仕入れコストは変わらないのに控除できる税額だけが減るため、手元のキャッシュフローを圧迫する形になる。

1月26日の党首討論会で、高市首相は「非課税ではなく、ゼロ税率にしたい」との意向を示しており、免税扱いの可能性が高まっている。しかし、どの党の案であれ、仕入れ価格の動向を含め「飲食店が何らかの負担を負う」という構造的な懸念は残る。特に期限付き措置の場合、システム改修の負担が短期間に2度発生するため、現場の混乱はより大きくなるだろう。

画像素材:PIXTA

画像を見る

2月8日の選挙結果がいかなるものであれ、「食料品消費税ゼロ」の流れは加速しそうだ。消費者の財布の紐が緩むことへの期待を持ちつつも、経営者としては仕入れ先との交渉やキャッシュフローの管理など、不測の事態に備えた準備を始めておく必要があるだろう。

この変革期を生き抜くために。政治の動きを注視しつつ、まずは自店の数字を今一度見直すことから始めてみてはいかがだろうか。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

『飲食店ドットコム ジャーナル』は飲食店ドットコムが運営する“食”に関するWEBマガジンです。飲食業界の最新ニュースをはじめ、食にまつわる役立つ情報や、実際に働く方々の声を読者に届けていきます。