外苑前『JULIA』naoさんが語る、独学の生存戦略。未経験から高級店のシェフへ【HER TABLE】
ファインダイニングのシェフ、ソムリエ、あるいは飲食店のオーナーや店長、女将など。食の最前線で戦う女性リーダーたちは、どのように自身のキャリアを切り拓いているのか。本連載『HER TABLE』では、単なるサクセスストーリーではなく、彼女たちが歩んだ道のり、プロフェッショナルとしての仕事論、長く第一線で輝き続けるための生存戦略を紐解いていく。
第1回に登場するのは、東京・外苑前のイノベーティブ・レストラン『JULIA(ジュリア)』のエグゼクティブシェフ、naoさん。ソムリエである夫・本橋健一郎さんと二人三脚で歩んできた彼女のキャリアは、驚くほど型破りだ。料理学校も有名店での修業も経ず、独学でシェフとなり、現在は『ミシュランガイド東京』で2024年から3年連続でセレクテッドレストランに選ばれ、世界中からお客が集まる。なぜ彼女は未経験から客単価35,000円のレストランを導けるほどになったのか。そして、夫婦という最強かつ最小の単位から始まった組織を、どのように「世界を狙うチーム」へと進化させているのか。
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心理学専攻、飲食店PR、サービスを経て料理人の道へ
naoさんのキャリアは、飲食業界の王道とは対極にある。大学では心理学を専攻し、就職もその道を志していた。しかし大学教授に「あなたは人に寄り添うより、自分が楽しいと思うことを突き詰めて、発信する方が向いている」と助言を受けたという。そこから自分の楽しいことは何かを問い直し、アルバイトで経験したレストランの仕事に携わりたいと思い、卒業後はレストラン運営会社のPRやバックオフィス業務に就いた。
その後26歳のとき、「飲食の現場に興味があるなら、サービスとして携わらない?」と知人からの誘いを受け、沖縄のリゾートホテル立ち上げのために現地へ渡った。そこで現在のパートナーである本橋さんと出会ったことが転機となる。
「本橋のサービスを受けて、衝撃を受けたんです。完璧でありながら、すごく人間味と温かみがある。『この人と一緒にお店をやりたい』と直感で思ってしまった。それがすべての始まりでした」
2人は独立を決意するが、本橋さんは根っからのサービスマン。「彼がサービスするなら、私が料理をするしかない」と覚悟を決め、naoさんの料理人人生は幕を開けた。29歳のときのことだ。
夫婦2人でつくば市にワイン食堂をオープン。未経験&独学で料理人に
2012年、本橋さんの故郷である茨城県のつくば市に『本橋ワイン食堂』をオープンさせた。naoさんは当初、ジャガイモのグラム数も発注の仕方もわからず、業者に教えてもらいながらのスタートだったという。料理については修業経験ゼロの状態から、本橋さんが積み重ねてきたレシピを片っ端から再現し、味の答え合わせをしながらの試行錯誤だった。
「最初は本当に必死でした。でも、『料理人はこうあるべき』という固定観念がなかったことが、逆に良かったのかもしれません。技術がない分、お客さまがどうしたら喜ぶか、どうしたら食べやすくおいしいと感じてもらえるか、それだけを考えていました」
やがてお店を訪れるお客も増え、初期投資も無事回収し、利益が出るようになった。次のステップへと進むべく2人は2017年に東京・恵比寿へ進出し、店名を『JULIA』と改める。12席のシェアテーブルに、手で食べるフィンガーフード主体のコース料理。常識にとらわれないスタイルは話題を呼び、徐々に海外ゲストやメディアの注目を集めていった。






