“鉄板×野菜”の三軒茶屋『アズミスチール』。物件の欠点を武器に変える差別化術
三軒茶屋の若年女性を射抜く「野菜×和食」「客単価5,000円」の勝算
大戸氏は三軒茶屋という街の印象について「学芸大学に比べると若い女性客が多く、客単価も5,000円程度と少し安い」と分析していた。同社はこれまで客単価2,000円まで、もしくは8,000円以上の業態しか手掛けていなかったため、客単価5,000円は新たに開拓する必要のある客層だ。
「鉄板焼きというと肉や高級食材のイメージが強いですが、健康意識の高い女性客をターゲットにするなら、野菜を主役に据えた方が差別化できる。和食の技術をベースに、野菜の新しいおいしさを提案する業態は、このエリアのニーズに合致すると確信しました」
主役に据えるのは、江戸東京野菜を含む関東圏の生産者から直送される旬の野菜だ。千葉や神奈川の湘南など、実際に足を運んで開拓した生産者とのネットワークを武器に、鮮度と希少性の高い素材をそろえる。
名物は「里山れんこん -青海苔からし明太マヨ-」(770円)や「江戸千住葱-海老辣油-」(770円)。特に自然栽培で育てられた里山れんこんは、皮ごと食べられるほどの甘みと食感が特徴だ。あえてソースを下に敷くことで、素材そのものの味をダイレクトに感じさせる演出を施している。
また、鉄板でフランスパンをサクサクに焼き上げた「フランスマッシュバーガー」(1,320円)や、具材に原木椎茸やカリフラワーを加えた「町工場のナポリタン」(1,200円)など、鉄板焼きのライブ感と遊び心を融合させたメニューが並ぶ。
お客の追加注文を生む「中央鉄板カウンター」設計
店舗規模は10坪23席。店内は全席カウンターで、中央には象徴的な鉄板が配置されている。テーブル席を一切置かないこのレイアウトは、調理のライブ感を最優先した結果だ。
「鉄板の位置は、どの席からも調理風景が最も美しく見えるよう、微調整しました。カウンターの最大の利点は、他のお客さまに出された料理を見て『あれ、おいしそう。うちも頼もう』という連鎖、いわゆるライブアップセルが起きること。スタッフはお客さまとコミュニケーションを取りながら、その空気感を作っています」(大戸氏)
ドリンク戦略も緻密だ。若年女性に支持される「お茶割り」や、フルーツやハーブなどを使った自家製の漬け込み酒を割った「クラフトサワー」など約35種類を用意。静岡県「富士山まる茂茶園」から仕入れるこだわりの茶葉を使用したお茶ハイは、甘すぎず料理を引き立てる名物となっている。また、それぞれお酒不使用のソフトドリンクバージョンも用意しており、ノンアル需要も取り込む。この他、ビールや日本酒もそろえ、ドリンクの中心価格帯は600円ほどに設定している。
オペレーション面では、料理を約32品に絞り込むことで、食品ロスの削減と仕込み時間の短縮を実現した。原則として営業時間内に出勤時間内の仕込みを終え、残業を抑制する「健全な働き方」を両立させている。






