なぜ朝7時から満席に? 高円寺『朝から居酒屋 陽のうえ』から学ぶニッチ需要の掴み方
抜群の開放感と背徳感で“朝”需要にリーチ
とはいえ、同店の営業時間は多くの社会人にとっては仕事中の時間。朝から飲む層は限定されている。そうした前提を踏まえ、どのように集客するのか。久徳氏は、“朝に飲める良さ”をどう伝えられるかを第一に考えたという。
「いろいろなことを考えてスタートした店舗だと思います。朝に飲める人のキャパシティって決まっちゃっているので、じゃあ、その人たちをどうやって集めるのか。“朝の良さ”をどういうアプローチで伝えるか考えました。例えば、その一つが『モーニングサービス』。奥さんが『居酒屋のモーニングをやりたい』と言い出して決めたことで、朝10時までに来ていただければ、1杯目のドリンクに茹で卵とウインナーパンがモーニングサービスとして付く、というわけです」
また、店の場所決めも大きなポイントだった。朝の良さを感じてもらうためには、明るい店内であることは絶対条件。視認されづらい3階は飲食店には不利な条件であり悩んだが、その分、テラス席を用意できるというメリットもあった。
「朝から営業することは決まっていたので、とにかく窓が多くて、陽の光が入って、開放感がある物件を探しました。朝にやるなら、自然光だけでも大丈夫な店舗がいいね、と。それでここが出てきて『もう、めちゃくちゃいいじゃん』と(笑)。3階で階段しかないので悩んだんですが、やっぱりこの開放感は捨てがたい。朝を感じられるので、お客さまもみんな『気持ちいい』『優越感、背徳感がある中で飲むのが気持ちいいね』と言ってくれます。特にテラス席だと、会社に向かう人たちを見下ろしているような感じなので(笑)」(なおみ氏)
焼酎3杯分の「やかんセット」とボトル売りでリピーターを獲得
同店は2025年8月にオープンした。ゆっくり飲むお客が多いため客単価は2,000円程度と高くはないが、営業中は平日でも28席が3回転するなど上々のスタートを切っている。営業時間内で「スタートから朝10時まで」「12時から13時まで」「15時以降」の3回のピーク帯があるという。
開店当初は既存店の『小粋』や『BJ Bar』のお客が中心だったが、2か月目からは徐々に常連客が付き、SNS経由で新規客も増えていった。久徳氏は「1か月目は知り合いの人が知り合いを連れて来るという形でしたが、2か月目ぐらいから『あれ、知らない人が朝からいっぱいいる』という感じになっていましたね」と振り返る。
常連客を増やすため、考えたのがキンミヤ焼酎や宝焼酎(各2,500円)などをキープできる「ボトルセット」で、「やっぱり朝なのでゆっくりしてほしい」と久徳氏。また、焼酎3杯分をやかんに入れ、割りものや氷と共に提供する「やかんセット」(700円)も多くのお客が注文する名物メニューだ。これらは特に常連客に人気があるという。
「常連のお客さまはボトルかやかんセットを、ウーロン茶などで割って楽しまれていて、席に着くなり注文されます(笑)。また、カウンターはお客さまの間隔が狭いので、『やかんってなんですか?』と聞かれたときに常連のお客さまが代わりに教えてあげることもあって、ちょっとしたコミュニケーションが生まれています」(なおみ氏)
他にはチューハイに季節のフルーツを数種類、贅沢に入れた「フルーツサワー」(600円)も人気があるという。
料理は300~600円台! 豊洲で買い付けた魚介類を低価格で提供
メニューは定番の黒板メニューと旬の食材を使用したホワイトボードの2種類をそろえている。魚介類を使用した料理が中心で、「トロタク巻」(380円)や「いわしガリ巻」(380円)、「レアあじフライ」(600円)、「紅生姜かき揚」(280円)、「刺盛」(600円)などが特に人気のあるメニュー。1人飲みのお客を意識してポーションを少なくし、その分1皿300~600円程度に抑えているコスパの良さも魅力の一つだ。
「僕が売れない芸人をやっているので、ずっと食えなかったんですよ。それでも飲みには行きたくて、大衆居酒屋とかで安く飲ませてもらっていたんです。だから、このお店も“僕が欲しいお店”をつくった感じですね(笑)」(久徳氏)
魚介類は週に1度、なおみ氏ともう1人の女性スタッフが豊洲市場に直接買い付けに行って仕入れてきたものを使用する。「豊洲に行ったときに面白い素材を見つけたら、そこからメニューがひらめくことも多いです。『今だったらホタルイカが旬だからホタルイカのメニューをやってみる?』と。あるいはナマコが出てきたからポン酢をやろう、という感じで」となおみ氏。オープン当初は久徳氏がメニュー名や値付けも含めてメニューを考えたが、現在はなおみ氏ら女性スタッフに一任しているという。








