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飲食店を開業する時に知っておくべき法律は? 営業許可や資格、届出についておさらい

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日本経済新聞が外食主要100社を対象に調査したデータでは、2022年度の出店予定数は1220店舗だった。個人や中小企業の出店を加えれば、相当数に上るだろう。姿を消す店舗がある一方で、続々と新店が誕生している。

飲食店を開業するためには、知っておくべき法律があり、許可の申請も必要だ。今回は飲食店を開業するときに知っておくべき法律や、届出・許可申請などの制度について解説する。

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飲食店を開業する際、知っておくべき法律

【食品衛生法】
食中毒など、飲食による健康被害の発生を防止することを目的としている。具体的には、食品と添加物、器具と容器包装、表示と広告・行政が担う監視指導、検査、営業許可などについて定められている。

【食品リサイクル法】
食品廃棄物の発生抑止とリサイクルを促す法律。売れ残った食品や食品廃棄物を減少させ、かつ、飼料や肥料等の原材料として活用することが求められています。

【風俗営業法】
深夜0時から日の出までの時間帯にお酒を提供する場合、風営法に規定されている「深夜酒類提供飲食店営業」の届出をする必要がある。お酒を提供することを主な目的としないレストランやラーメン店などの飲食店は、その限りではない。スナックやパブ、キャバクラなど、「接待」をおこなう飲食店の場合は「風俗営業許可」の申請も必要。

画像素材:PIXTA

飲食店を開業する際知っておくべき、雇用関連で必要な法律

【労働基準法】
労働基準の最低基準を定めた法律。労働時間や賃金等の規制を扱う。労働者が持つ生存権を保障するため、労働契約、賃金、労働時間、休日および年次有給休暇、災害補償、就業規則などを定めている。

【労働者災害補償保険法】
略称「労災保険法」。労働にまつわる傷病を補償する労災保険について取り決めた法律。労働中の業務または通勤に起因する病気やケガに対して必要な保険給付を行い、被災労働者の社会復帰や遺族支援、労働者の安全や衛生の確保を目的としている。

【雇用保険法】
労働者の生活安定と雇用の継続、失業予防、雇用機会増大、労働者の能力向上、労働者の福祉向上などを目的とした法律。

【パートタイム労働法】
パート・アルバイト・契約社員など短時間労働者と正規社員とのの不合理な待遇差を禁止するための法律。

飲食店の営業許可を得るために必要なふたつの申請

飲食店を開業するための申請は、最寄りの保健所や消防署で行う。基本的には下記が必要なのだと覚えておこう。

【飲食店営業許可申請】
■申請をする場所:店舗を出そうとしている地域の保健所
■書類提出の期限:竣工もしくはオープンの10日〜2週間前まで
■申請に必要なもの:営業許可申請書、店や厨房の間取り図、資格証明書、申請料など

【防火対象物使用開始届】
■申請をする場所:消防署
■書類提出の期限:開業から一ヶ月以内
■申請に必要なもの:防火対象物使用開始届出書、案内図(店舗近辺の地図)、消防用設備が記入された店舗の平面図・立体図・断面図、建物の仕上げ表など

焼肉店などで、裸火を使うような場合に必要な防火対象物使用開始届は、通常なら施工業者が申請する。ただし、業者に施工を依頼しない場合には、申請を自分で行わなくてはいけないので忘れないようにしたい。

また飲食店営業許可を取得すると決めたら、工事を始める前に、計画を保健所へ事前相談することをおすすめする。自分の考えている店が、営業可能かどうかを担当者に判断してもらうのだ。

保健所の職員が完成済みの店舗まで来て行うチェックでは、流しや手洗いの数、壁や床の材質などといった箇所も見られることを覚えておこう。そのときになって、“やり直し”になるのは避けたいものだ。

業態によっては「飲食店営業許可申請」のほかに必要な届出も

飲食店営業許可を申請すれば、ラーメン店や居酒屋、レストランなどを経営することができる。ただし、希望する営業時間や提供したいメニューによっては、他の申請が必要な場合も。

夜の12時を過ぎて営業する場合……
【深夜酒類提供飲食店提供許可】
■申請をする場所:警察署
■申請に必要なもの:申請書、店舗の平面図、照明・音響・防音の設備図、食品営業許可証の写しなど

女性が接客をし、お酌まで行う場合……
【風俗営業許可】
■申請をする場所:警察署
■申請に必要なもの:申請書、案内図(店舗近辺の地図)、店舗の図面など

この他に、個人事業として店を開業する場合には税務署に「個人事業開業届」を届け出る必要がある。

飲食店の営業許可を得るために必要な資格

開業に必要な資格についても確認しておこう。まず、飲食店の営業には「食品衛生責任者」がひとり必要だ。これは、店の衛生面を管理する責任者のこと。例えば、調理師や栄養士といった資格を持っている人がなることができる。

ただし、それらの資格がなくとも「食品衛生責任者」になることは可能だ。食品衛生協会が行っている講習を受ければいいので、ハードルは高くない。また、建物の収容人数によっては「防火管理者」の資格も必要となる。

【食品衛生責任者】
調理師免許を持っていなくても、飲食店を開業できる資格

■取得方法:1日(6時間)の講習の受講
■申し込み方法:各都道府県の衛生局もしくは保健所に問い合わせる
■受講料:各都道府県によって異なる

講習は、全国に存在する協会のいずれかで受講することになる。ちなみに、講習内容は全国で統一されているそうなので、どの地域で受けてかまわない。講習を受けられる定員数が決まっているので、早めの申し込みを心がけよう。

【防火管理者(乙種)】
防火管理者とは、百貨店や飲食店などの多数の人が出入りする施設において、火災予防のために必要な業務を推進する責任者のこと。建物の収容人数が30人を超え、のべ面積が300㎡未満の店を開業する場合は「乙種防火管理者」の資格が必要となる。

■取得方法:1日間(1日5時間ほど)の講習の受講
■申し込み方法:財団法人日本防火協会のウェブサイトから、申し込み用紙をダウンロードする。受講料を振り込んだ後に、開催地の消防設備保守協会などへ提出。FAXでの申し込みも可能。
■受講料:7000円(全国一律)

以上が、飲食店の営業許可を得るために必要な申請と資格の基本だ。行政書士やコンサルタントに頼るケースも、あるいは自分ですべてやってしまうケースもあるだろうが、申請も資格所得もオープン予定から逆算して、余裕を持って行うとよいだろう。

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いずみかな

ライター: いずみかな

グルメやライフスタイル、育児などを中心に編集執筆業をおこなう。2015年からフリーランスとしての業務を開始。タウン情報誌やレストラン情報を扱うWeb媒体で取材や執筆をしており、特にケーキや洋菓子に興味がある。