ひとり飲みの極意とは? 中目黒『サンダーボルト』のバーテンダー・ルパン氏に学ぶ
男29歳。ひとりでBarに行ける大人になりたい
ひとりでBarに行って大人の社交を楽しむ……。そんなお酒の嗜み方に憧れる方もきっと多いのではないでしょうか。そこでここでは、中目黒を代表するBar『サンダーボルト』の店主、ルパン・J・葉山さんに、大人のBarの嗜み方について伺ったのでご紹介しましょう。
と、その前に…この連載について軽くご説明。
「無茶ぶり花ちゃん」と題された当連載は、『Foodist』を運営する株式会社シンクロ・フードの社員・花岡が、毎回、編集部の無茶ぶりに応えながら“食”について学ぶ…というもの。ただの「Bar講座」では終わらない、ちょっぴり大変な“無茶ぶり”が彼を待ち受けています!
まずは主役である花岡についてご紹介しましょう!

本日の主役・花岡。『サンダーボルト』の入り口でパシャリ。この笑顔はのちに苦悶の表情へ変わる
飲食店に向けて、様々なウェブサービスを提供しているシンクロ・フード。花岡は、厨房機器を販売する『飲食店.COM 厨房・備品を探そう』のスタッフとして活躍中。ハナオカ店長としてサイト上にも登場しています。じつは取材日であるこの日は花岡の誕生日、めでたく29歳を迎えました。この記念すべき日に大人のBarの嗜み方を学べるなんて幸せ者ですね!(大変な目にもあいますが…)
続いて今回の企画にご協力いただいた『サンダーボルト』店主・ルパン・J・葉山さんのご紹介。

京王プラザホテルのBarを経て独立。カクテルの腕前は超一級。そしてベンチプレス180kgを上げる強靭な肉体の持ち主。『サンダーボルト』スタッフ総出で挑んだ、腕立て100回動画も話題です
今年でオープンから9年。今や中目黒を代表するBarとなった『サンダーボルト』。この超人気店を率いるのがルパンさんです。男気と優しさを備えた人柄、そして京王プラザホテルのBarで鍛え上げた抜群の腕前。バーテンダーとして幾多の夜を過ごしてきたルパンさんだからこそ語れる「大人のBarの嗜み方」、必見です!
Barは自分のフィールドを広げる大人の社交場
花岡:僕、まだひとりでBarに行ったことがなくて…。そもそもひとりでBarに行く楽しみってなんなんですか?
ルパン:もともとBarって、ジャケットを羽織っていくような場所だったの。社交の場だからさ。そこでほかのお客さんと仲良くなって自分のフィールドを広げていくっていうのが、ひとりでBarに行く楽しみなんじゃないかな。オレも君ぐらいの年齢のときはよくひとりで行ってたよ。
花岡:それはバーテンダーとして働いていたから、勉強も兼ねてですか?
ルパン:もちろん勉強するって名目でもあったよ。でもさ、オーセンティックなBarなんかに行くと、周りは大人ばっかりなんだよね。だから、「あ、小僧が来たぞ」って浮いちゃうんだよ。そしたら、お店の人がほかのお客さんと絡めるようにさりげなく声を掛けてくれたりしてね。自然と居場所を作ってくれたのが嬉しかったなぁ。
花岡:ちなみにひとりでBarに行くときは、カウンターのどの辺に座ればいいんですか?
ルパン:新規のお客さんが来たときは、カウンターの真ん中に座ってもらう。そうするとバーテンダーと対面で話せるでしょ? 「どちらに住んでるんですか? 地元はどこですか?」みたいな話をしてたら、共通の話題を持つほかのお客さんが必ずいるわけ。君は出身どこなの?
花岡:岩手です。
ルパン:そしたら、「おーい、彼、岩手だって!」みたいな感じで、ほかのお客さんと絡めたりしてね。最初来たときはひとりぼっちだけど、そうやって少しずつ居心地のいい場所にしてあげるのもバーテンダーの大切な仕事だね。

一杯呑みながら…ってことで、人気カクテル「サンダーボルト」を注文
花岡:お酒を頼むルールみたいなのはありますか?
ルパン:Barって一軒目に訪れる店じゃないでしょ? だから、さっき何を食べてきたとか、何を飲んできたってことをバーテンダーに伝えてあげれば、その流れに適したお酒を作ってくれるはず。もちろんドリンクはお客さんが選ぶものだから自由に選んでもらっていいんだけど、そうやってバーテンダーとのセッションを楽しむのもBarの魅力だね。
花岡:バーテンダーを信頼して身を委ねろと。
ルパン:そうそう。オレ、元々はホテルのBarで働いていたんだけど、そこに訪れるお客さんってBarのサービスに慣れてらっしゃる方が多かったのね。だから「おまえみたいな若造が、オレの酒を作るのか?」なんてこともあったけど、少しずつそのお客さんが求めるお酒を作れるようになっていって……。そしたら「おまえわかってきたな」って褒めてくださるようになってさ。そうやってお客さんとの信頼関係を築こうとバーテンダーは頑張ってるから、その想いに身を委ねてみるのもいいと思うよ。
Barでは、大人の常識力さえあればOK
花岡:じゃあ逆にBarでやってはいけないことってあります? 気を付けた方がいいマナーとかって。
ルパン:常識的なことを守れていればいいんじゃないかな。たとえばほかのお客さんにケンカ吹っかけたり、高圧的な態度を取ったりするのはダメ。そういうお客さんがいたときは、「今日は飲みすぎちゃいましたね。お会計して帰った方がいいんじゃないですか?」ってお帰りいただくこともある。やっぱりBarは社交の場だからさ。「この空間はみんなで共有しているんだ」っていう意識を持ってくれているとありがたいね。
花岡:うーん、なるほど勉強になります。あと、社交の場ってことは女性と仲良くなるケースもあると思いますけど、その際に気をつけるべき点ってありますか?
ルパン:基本はさっきと一緒で、常識があればそれでいい。ただ社交の場ではあるけど、出会いの場ではないからね。出会ったその日にしつこくするのはダメ。もし女の子が口説かれて嫌な顔をしていたら、「ゴメンね、ウチの身内だから遠慮して」ってオレが出ていくこともあるよ。いやね、結果的にくっついちゃいました、なんてことはよくあると思うんだよ。でも、女の子が嫌がってるなら、それはほっとけないよね。

「うーん、呑みやすいけど、酔いそうだぞコレ!」
『サンダーボルト』のコンセプトの秘密って?
花岡:ルパンさんってもともとはオーセンティックなBarのご出身ですよね。『サンダーボルト』のようなお店にしようとした理由ってあるんですか?
ルパン:オレが初めて憧れを抱いたのは街場のBarだったの。兄に連れていってもらってね。それから「いつかBarを開きたい」って思って、専門学校で学び始めたんだけど、そこで出会った人にね、「どうせ学ぶなら最高峰のところで学べ。楽なところで学んだことは、それ以上は伸ばせない。でも厳しいところで学んだことは、いくらでもスタイルを崩せるから」って言われたの。で、当時、いろんな人に聞いたらやっぱり京王プラザホテルのBarがスゴいぞってことになって。それで卒業後すぐに京王プラザホテルで働き始めた。
花岡:もともと目指したのは街場のBarだけど、まずは最高峰のサービスを学ぼうと。
ルパン:そう。でもね、入ったら入ったで、最初はレストランのウェイターをやらされてさ、それがすごいショックで。朝から晩まで働くんだけど、お酒のことは一切学べない。それでようやく半年後にBarで働けるようになったんだけど、今考えたらレストランで働いたこともスゴく役に立ってる気がするなぁ。最初からBarで働いていたら、Barのことしかわからない。レストランで働くことで広い視野を持てたことが今でも財産になってると思うね。
花岡:ホテルのBarで学んでいると、やっぱりオーセンティックなBarに憧れを抱いたんじゃないですか?
ルパン:独立するときにオーセンティックなBarをやりたくなかったかって言うと、そりゃあやりたかったよ。でも個人で経営するとなると、今の時代はなかなか難しいでしょ。だから「Bar」と呼ばれるものよりは、「酒場」と呼ばれるものをベースとして作ろうと考えた。それがいまの『サンダーボルト』のコンセプトに繋がってるかな。
花岡:コンセプトは「酒場」だけど、ホテルで鍛えた本物の味を提供する、という。
ルパン:そうそう。学んだ場所とは違う雰囲気であっても、「このカクテル美味しいよね」ってお客さんに言っていただくことが、バーテンダーとしては一番大事だからさ。

名物カクテル「サンダーボルト」。アブサンとラムを使用して作る。レベル1~レベル5まであり、今回注文したレベル1でも30度ぐらいの強さ
ついに無茶ぶりが始まる…
編集T:ところでルパンさん、『サンダーボルト』といえば、「酒場」として賑やかに楽しめる、酒が旨い、そして…なんといってもスタッフ皆さんの男気あふれるキャラが魅力ですよね。あのYoutubeにアップされてる腕立て伏せは衝撃的でした。なんで『サンダーボルト』は、こんなにも男気にこだわるのでしょうか?
ルパン:オレね、ガキの頃は友達らしい友達が全然できなくてさ、どうしても友達の輪に入っていけなかったんだよ。そういう友達の輪っていうのにずっと憧れててさ、いつか自分でも人が集まるような"輪"を作りたいと思っていたのね。だから『サンダーボルト』も"仲間"っていうのを大切にしてるんだけど、こういう〝輪〟を守るためには義理を重んじなければいけないでしょ? 義理を重んじるには、男気が必要だよね。
編集T:その男気は、鉄で作られためちゃくちゃ重いメニューにも表れていますよね。
ルパン:ああ、あれはさ、内装の素材として使った余りものなんだよね。最初は鉄に似せた素材だと思っていたんだけど、そしたら本物の鉄でさ。出来上がったときに「こりゃあ、重すぎんだろ」って思ったけど「まあ、いいか」って(笑)。話のネタにはなるよね。
編集T:お酒選ぶだけで筋肉つきそうですもんね。筋肉といえば、というか『サンダーボルト』といえば「腕立て伏せ」ですけど、なんで朝方になるとみんなで腕立てをするようになったんですか?
ルパン:店で仲良くなった仲間と海に行くようになったんだけど、海に男ばかりで行くとさ、やれ腕相撲だ、やれ相撲だってなるじゃない? それで相撲をやったら3人ぐらい骨折しちゃってさ。まったく運動していないヤツが運動してるヤツとやったら当たり前だよって……。だから「みんなで鍛えよう、1年後のオレの誕生日までに、腕立て伏せを100回できるようになろう」ってなって。それでみんなでやるようになったの。
編集T:へぇ、そんなきっかけがあったんですね! そうそう誕生日といえばルパンさん! 今日、誕生日を迎えた男がいるんです。この花岡なんですけど……。
花岡:え?
ルパン:ハハハ(笑)。つまりこの男気の話ってさ、腕立てさせる"ふり"なんでしょ(笑)。
花岡:え?
ルパン:もう…わかったよお前ら、ヤルぞおら!
花岡:へ?
ルパン:やるんだよ! 誕生日だろ?
花岡:えーーーっ!!!

ルパン:いくぞおら! 1、2!3! ちゃんと上げろおら! 花岡:くぅ、、、。
---30回ぐらいで終わると思いきや、膝をつかせてでも本当に100回やらせるスパルタなルパンさん。
花岡:つ、つらい……。腕パンパンなんですけど。。
ルパン:来年の誕生日までには、膝つかずに100回できるようになってろよ!
花岡:は、はい…。
編集T:しっかり"ふり"に応えていただいてありがとうございました! ルパンさん、最後に、ひとりでBarに行きたいと考えている花岡世代の方に、何かアドバイスを頂戴できれば!
ルパン:まずはバーテンダーと仲良くなることだね。そうするとBarの景色が変わってくるはずだから。それにバーテンダーに委ねて呑んでるとさ、良いBarと悪いBarの違いがはっきりとわかってくるんだよ。やっぱりBarによって、お酒の知識も技術も居心地も違うからね。そうやって自分にフィットするBarを見つけていくのがいいんじゃないかな。
編集T:ありがとうございました!
花岡:あ、ありがとうございました!(な、なんだこの終わり方…)
【本日学んだこと】
・一人でBarに行くならバーテンダーに身を委ねろ
・遊びの場だけど、社交の場でもある。モラルを大切に
・腕立て100回は死ぬほどきつい
さて今回は「一人でBarに行く」をテーマに、『サンダーボルト』の店主・ルパン・J・葉山さんに話を伺いました。なんとか無茶ぶりをやり遂げた花岡ですが、恐らく1年後には、膝をつかずに腕立て100回を成し遂げていることでしょう。では、また次回!
※「無茶ぶり花ちゃん」の第2回目は7月更新予定です

最後は握手で花岡を称えるルパンさん
『サンダーボルト』
住所/東京都目黒区上目黒1-3-19 上目黒SSビル 2F
電話番号/03-6666-6773
営業時間/21:00~翌10:00AM
定休日/月1回不定休
http://www.3derbolt.com/
