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東京都の中小の飲食店に最高300万円の補助金。インバウンド対応力強化へ小池都知事「有言実行」

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Photo by iStock.com/IPGGutenbergUKLtd

東京都が都内の飲食店に向け、1店舗あたり最高300万円の補助金を支給して外国人旅行者の受け入れ強化の取り組みを支援する事業を開始、4月27日から募集を始めた。従来は宿泊施設に対する支援だけを行なっていたが、飲食店、免税店等も加え支援を強化したもの。インバウンド需要を取り込んで収益アップを狙う都内の飲食店の大きな味方になりそうだ。

激増する訪日外国人、都が対応強化

近年、訪日外国人の数は増加の一途をたどっている。2017年1月~4月の総数は911万6000人で、過去最高を記録した2016年の783万4516人から16.4%増(日本政府観光局=JNTO調べ)を記録している。こうした状況から東京都でも訪都外国人のニーズに対応した利便性や快適性を向上させるため、受入対応のさらなる強化が必要となっている。

今回の補助金制度は、具体的には「インバウンド対応力強化支援補助金」の対象を飲食店にも拡大するというもの。補助額は補助対象経費の2分の1以内で、1店舗あたり300万円が限度とされる。募集期間は2018年3月30日(金)まで。

補助の対象となる飲食店は「インバウンド対応力強化支援補助金交付要綱」(以下、要綱)で定められている。それによると飲食店営業又は喫茶店営業の許可を受けて営業している店舗(要綱5条1号)で、都が実施する「EAT東京」(多言語メニュー作成支援ウェブサイト)の「外国語メニューがある飲食店検索サイト」に掲載されている店舗(同4号)となっている。また、中小企業が営業していることが求められている(同2、3号)。つまり中、小規模な飲食店向けの支援制度である。

外国語メニューがない店舗や、あっても「EAT東京」に掲載されていない店舗は対象外ではあるが、その場合でもこれから「EAT東京」で多言語メニューを作成し、「外国語メニューがある飲食店検索サイト」に掲載された上で、補助金の申請を出して交付を受けることはスケジュール的に可能だ。

「(EAT東京掲載店舗に限ったのは)積極的に訪都外国人を受け入れている事業者を対象にしているからです。そしてEAT東京はクローズではありません。どんどん入ってきていただきたいと思います。メニューを作って申し込みをして、内容をこちらで確認して掲載になりますが、申請からおおむね1週間程度で掲載が可能です」と東京都産業労働局観光部受入環境課では話している。

インバウンド需要を取り込もうと考える中小の飲食店は、まず「EAT東京」掲載への申請をしてから、補助金申請へと進めばいい。

EAT東京」のトップページのキャプチャ

多言語対応やクレジットカード決済等が対象

もちろん、インバウンドに関連すればすべての事業が補助金の対象となるわけではない。要綱別表1-2、2-2で対象となる事業が規定されている。

■要綱別表1-2
1、店舗の案内表示、店内設備の利用案内等の多言語化(店舗周辺マップの多言語化、ピクトグラムの導入を含む)
2、ホームページ、パンフレット等広報物の多言語化
3、店舗内のトイレの洋式化
4、クレジットカード決済端末の導入や電子マネー等の決済機器の導入
5、外国人旅行者の受入対応に係る人材育成(研修会の開催、外部セミナーの受講等)
6、その他、理事長が外国人旅行者の受入対応強化のために必要と認める事業
※上記の事業には、事業実施に係るコンサルティングを含むものとする。ただし、コンサルティングのみの実施は不可とする。

■要綱別表2-2
補助事業者が補助対象飲食店内にある以下の箇所で実施する、外国人旅行者が利用可能な公衆無線LAN設置事業
1、客室及び客席
2、その他多くの客が利用する施設
※無線LAN機器の設置箇所数は、一つの店舗につき10箇所を限度とする。ただし、過去に東京都または財団が実施した補助金の交付実績を有する店舗については、10箇所から補助金により無線LAN機器を設置した箇所数を除いた数を限度とする。

コンサルティングを受ける費用も対象ではあるが、コンサルティングだけでは認められない。このあたり、インバウンド対応が学ぶだけの段階ではなく、実行する段階であるという行政の意図を感じる。補助金を申し込む場合は、所定の申請書や書類を用意して、郵送または持参して提出することになる。提出先は都庁ではなく、東京観光財団(詳細は文末)。それらを審査の上、交付の可否が決定される。

インバウンド対応力強化を進める東京都

小池百合子知事の選挙公約が具体化

そもそもこうした取り組みは昨年の都知事選で圧勝した小池百合子知事の公約に沿ったものである。小池知事は「東京大改革宣言」の中で、3つの「新しい東京」、すなわちセーフシティ、ダイバーシティ、スマートシティをつくるとしていた。これは当選後、「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」として策定された。

その中のスマートシティでは、インバウンド対応力の向上を目標としており、多言語対応やクレジットカード等決済端末の導入などの促進を掲げている。そうした大きな流れの中で、今回の飲食店への補助金制度がスタートしたと言える。

なお、補助金申請額が予算額に達した時点で受付は終了となる。予算額について都は明らかにしていないが「2020年に向けた実行プラン事業」の中では1年で150施設、2020年までに合計600施設の支援を目標としていることから、そのあたりがメドになりそうである。

来年以降については「単年度予算主義なので分かりませんが、効果があれば予算要求をするかもしれません。規模や額は効果を見てですけど、基本的にはそうなっていくでしょう」(東京都産業労働局観光部受入環境課)と言う。「2020年に向けた実行プラン事業」の履行という点を考えれば、2020年まではチャンスがあると考えていいかもしれない。インバウンド対応になかなか動き出せないでいる都内の飲食業者にとっては絶好のチャンスと言えるだろう。

【インバウンド対応力強化支援補助金(飲食店のみの詳細)】
■補助対象事業者:都内の飲食店(「EAT東京」の外国語メニューがある飲食店検索サイトに掲載されている店舗)

■補助対象事業:インバウンド対応力強化のために新たに実施する事業
・多言語化(店舗の案内表示・設備の利用案内・ホームページ等)
・無線LAN環境の整備
・トイレの洋式化
・クレジットカード決済端末や電子マネー等の決済機器の導入
・外国人旅行者の受入対応に係る人材育成

■補助額:補助対象経費の2分の1以内
・飲食店 1店舗あたり300万円を限度
 (無線LAN環境の整備は、1か所あたり1万5000円以内、飲食店は1店舗あたり最大10か所)

■募集期間:2017年4月27日~2018年3月30日まで
 郵送の場合、当日消印有効。補助金申請額が予算額に達した時点で受付終了

■申請方法:必要事項を記入し、郵送又は持参

■申請先:(公財)東京観光財団地域振興部観光インフラ整備課
〒162-0801 新宿区山吹町346-6 日新ビル2階

■その他:申請書類等のダウンロードは(公財)東京観光財団HPから
http://tcvb.or.jp/jp/project/infra/welcome-foreigner.html

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/