飲食店ドットコムのサービス

わずか4店舗の愛知『あうん屋』が手羽先唐揚げの頂点に。「照り焼きっぽい」タレで2冠狙う

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

あうん屋の運営会社(株)リアリティバイツの古川貴大社長

愛知県半田市・常滑市で4店舗を展開するにすぎない居酒屋『あうん屋』が、唐揚げの世界で存在感を増している。人気メニューの「伝説の知多手羽先唐揚げ」がイベントで次々に賞を獲得。今春行われた第8回からあげグランプリでは手羽先部門の最高位である最高金賞を獲得した。ローカル店が大手チェーン店を押しのけて人気を集めている秘密を探った。

受賞がモチベーション「獲るしかない」

からあげグランプリで最高位に立ったものの、『あうん屋』の運営会社(株)リアリティバイツの古川貴大社長(44)は淡々としている。「事業をやる中で『手羽先で勝負』と思ってやってきました。そのモチベーションとして『賞を獲るしかない』とスタッフと言っていましたから、一安心です」。

一般社団法人日本唐揚協会(事務局:東京都渋谷区、会長兼理事長:やすひさてっぺい)が主催するからあげグランプリは今年で8回目を迎える。ファンの投票で賞を決するもので、今年は11部門で争われた。手羽先部門では中間発表時点でのトップを守り、あうん屋が初の最高金賞に輝いている。

また、昨年は名古屋市の久屋大通り公園で開催された「手羽先サミット2016」(主宰:手羽先サミット実行委員会)でも金賞を受賞。今年は最高位のグランプリも視野に入れている。からあげグランプリも手羽先サミットも昨年、初めてエントリーしたが、その年にともに金賞を獲得しており、一般ファンの支持の高さがうかがえる。

「からあげグランプリも嬉しいですが、手羽先サミットは実食して、その場で投票ですから、そこで金賞をいただけたのは自信になりました」と古川社長は言う。

『あうん屋』の手羽先

人気の秘密は、しっかりと絡まる「たれ」

人気の秘密はたれにある。地元の知多郡武豊町でつくられる醤油(かつて知多醤油と呼ばれた時期もあった)をベースに、甘みを出すために水飴などを加えた自家製のたれを用いる。手羽先を揚げた後にさっとくぐらせるだけだが「たれがコテコテなので、しっかりと絡まって風味が伝わる」と古川社長。これが「こってり甘辛スパイシー」というキャッチフレーズのもと、人気メニューとなった。ある客から「照り焼きのたれっぽいね」と言われたそうだが、これまでにない美味しさを的確に表現してくれたと古川社長は感じたという。値段が2本350円、4本550円(ともに税別)とリーズナブルなのも人気を後押しする。

じつは同店では賞を獲得した知多風の手羽先とは別に、「名古屋風」の手羽先も提供している。「名古屋風」は、たれが知多風よりサラサラで、知多風ほど絡まない。さらに塩こしょうも効かせているためスパイシーな風味に仕上がっている。これが愛知県地方では一般的な手羽先ではあるが、古川社長は「知多風」という独自の味の手羽先を提案し続けて、ここまでの成功にこぎつけた。

キャッチフレーズは「こってり甘辛スパイシー」

「知多風」にこだわったのは、大学在学中に住んでいた場所の近くに知多郡武豊町里中という醤油蔵が多い地域があり、夫人の実家もその地域にあることから、そこの醤油を使って何か出来ないかと考えたのがそもそものきっかけだという。当初は手羽先といえば名古屋風という客のニーズに合わず厳しい声が多かった。そこで地元の醤油蔵にも相談して何度か試作品をつくり、改良を加えて「こってり、甘辛、スパイシー」なたれを完成させた。全国を視野に入れて知多半島としてアピールした方が場所や名前もわかりやすいと考え、知多手羽先唐揚げと命名した。

「(2006年の)オープン当時、手羽先を出すと、お客さんから『これ、違うよ』とよく言われました。それが悔しくて色々な店を食べ歩いて、醤油蔵にも相談して、凝っていったんです。今は家でも手羽先を作っているんですが、今度はピリ辛の味を提案したいと思っていて、子供に食べさせて『どうだ?』って感想を聞いてます」と同社長。

もっとも店舗の立地条件が名古屋からも離れている愛知県の一地方ということで、いい商品が完成しても、なかなか多くの人に味わってもらう機会がない。そのためイベント参加で実際に提供する機会を作る、あるいはエントリーすることで業界での認知度を高めることや、地元客以外にもアピールし食べてもらって一票を投じてもらうという戦略を採用。複数のイベントでの受賞は、それらも合わせた成功と言える。

昭和テイストを感じさせる店内

受賞効果で東京・大阪からも来客、目指すは2冠

昨年、からあげグランプリの金賞を獲得すると、地元以外の客も増えてきたという。名古屋から電車で30分ほどかかるが、中部国際空港の近くにある常滑北店、常滑南店と、常滑に隣接する半田市にある半田駅前店の周辺には、ビジネスホテルが多数あるため東京や大阪からのビジネスマンの利用が増えているそうだ。『あうん屋』は店内が昭和テイストのレトロ感覚で統一され、しかもBGMが70年代から90年代に流行したロックとあり、いわゆる「おじさん」層から支持が高いのもそうしたビジネスマンを呼び込む一因になっている。今では客層の8割が「おじさん」だという。「東京なら新橋のイメージと思ってください。ウチは年月を経るに従って、女性客が減ってます」と古川社長は苦笑する。

今年は6月9日~11日の第4回手羽先サミットでグランプリを狙うとともに、8月12日、13日のイナズマフードGPin草津にもエントリーを決めている。「酉年の今年は手羽先サミット最高金賞を獲って、からあげグランプリの最高金賞との2冠獲得を最大の目標にしています。この1年、店をやりながら、イベント出店も頑張って唐揚げの世界で名前が通ればと思っています」と古川社長は言う。

唐揚げのイベントでは『世界の山ちゃん』や『サガミ』『風来坊』などの大資本のチェーン店が強さを発揮する中、4店舗しかない『あうん屋』が互角に渡り合っているのはある種、痛快でもある。東京や大阪、あるいはまずは名古屋への進出が待たれるが、それでも古川社長は「ウチはまだそんな体力はありませんし、今のところイベントやフェスの出店強化と地元で知多醤油、知多手羽先の認知度を上げていきたいと思います。まずは地元で頑張ります」と最後まで浮かれた様子はなかった。

古民家を改装したというレトロな店構えが特徴の常滑北店

『あうん屋』
開業/2006年(半田駅前店)
法人化/2011年
運営会社/株式会社リアリティバイツ
代表/古川貴大
営業時間/17:00~L.O.24:00(日~木)、17:00~L.O.翌1:00(金・土・祝前日)
http://www.aunya-tebasaki.com

『あうん屋半田駅前店』
住所/愛知県半田市天王町1-50-1 パビロンビル1F
電話番号/0569-22-7387

『あうん屋青山店』
住所/愛知県半田市青山2-18-16
電話番号/0569-26-6266

『あうん屋常滑北店』
住所/愛知県常滑市北条2-97
電話番号/0569-35-6766

『あうん屋常滑南店』
住所/愛知県常滑市栄町2-103
電話番号/0569-35-2411

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/