「Airレジ」でランチの売り上げが2倍に。渋谷の繁盛カフェのPOSレジアプリ活用術
美味しい料理を出して、笑顔で接客するだけでは繁盛店となるのは難しい。その上で効果的な集客や、適切な客単価と回転率の実現、顧客の嗜好、傾向にマッチしたメニュー開発などで経営の効率化を進めることが求められる。2015年3月にオープンしたカフェ『VANDALISM(ヴァンダリズム)』は、リクルートライフスタイルが提供する、0円で簡単に使えるPOSレジアプリ「Airレジ」を効果的に使い、開店当時に比べランチの売り上げを約2倍、月商を約1.7倍に押し上げた。繁盛店のIT利用術を、株式会社VANDALISMの山口隆実取締役に取材した。
Airレジ基本機能で、会計の待ち時間ゼロを実現
『VANDALISM』は2015年の開店以来、通常のカフェとしての営業も行いつつ、店内でイベントを開催している。「文化の発信地である渋谷にありますから、飲食店であっても文化を発信していこうというコンセプトです。落語、お笑い、音楽、映画、演劇の5大コンテンツを中心に発信しています」と山口取締役(以下、コメントはすべて同取締役)。
イベントの開催、そしてセンター街に位置する好立地も相まって、連日たくさんの客でにぎわう同店。大勢の客により優れたサービスが提供できるよう、あらゆる業務を効率化することにも積極的だ。特にレジ打ちなどの日々行われる業務は、ITツールを上手に取り入れてスタッフの作業負担を減らすことが求められる。「Airレジ」を導入し、レジ打ちの負担を減らすことができたという同取締役は、「Airレジのおかげで、会計の際のお客さんの待ち時間もゼロ秒になりました。Airレジに注文情報を入力しておけば、お客さんから『会計をお願いします』と言われたら、iPadをそのまま持っていって『○○○円です』と見せればいいわけですから」と、その効果を語ってくれた。
山口取締役は以前は一般的なレジを利用する店舗で働いていたが、その時は「会計をお願いします」と言われてからレジに入力するので1組あたり1分近くかかってしまっていた。さらに忙しくなった場合など打ち間違いが起きやすく、やり直しのための時間が必要になる。そのような無駄な時間がなくなったことで、1組あたりの客の滞在時間が短くなり回転率アップにもつながった。
また、レジ締めの作業が一般的なレジを使っている状況より1時間は早いという。通常ならレジを締めてから集計、レジ金を数え、カードの売り上げを照らし合わせてという作業が必要。その点「Airレジ」だと売り上げ集計や現金やカードの売り上げがボタン1つで出てくるから、作業量を大幅に圧縮できる。
その結果、「週に3、4回は終電を逃して漫画喫茶に行っていた」という事態はなくなり、余裕のできた時間でスタッフとミーティングや、食事に行く時間が生まれた。
さらに「Airレジ」は、連携する決済サービス「Airペイ」を使いクレジットカードや電子マネーでの決済が可能だ。クレジットカードの手数料は3.24%からという非常に低い利率に設定されている。「ウチのような1店舗のみを運営する会社にとっては、3.24%という数字は本当にありがたいです。普通のカード会社だとまずあり得ない低い手数料です」と山口取締役は語る。
ホットペッパーグルメとの連携で集客に効果
ユニークな方法で顧客を増やしてきた同店だが、それでも集客方法が開店以来の悩みである。それは同店舗が地下1階というロケーションであることと関係している。「路面店や2階の店だと外から中が見えるので『雰囲気が良さそう』というお客さんが入ってきます。でも地下のお店は外から中の様子が分からないから入りにくいわけです」。そうした困難を解消するために「Airレジ」と連携する飲食店向けの予約台帳アプリの「レストランボード」を活用している。
外から見えない地下の店舗は、一般の顧客の取り込みには向いていないが、逆に貸し切りのパーティーには適している。「iPadに貸し切りで埋まっている日を入力すると、自動的にホットペッパーグルメに反映されます。お客さんはそれを見て空いている所に予約を入れてくれます。このやり方で今は効率良く予約が入るようになりました」。
「取りこぼし」客の取り込みにデータ分析が威力を発揮
開店以来、徐々に客を増やしてきた同店だが、人気店になると行列が出来て入れない客も出てくる。ランチタイムに諦めて帰る人たちを見て「せっかくウチの店を選んでいただいたのに…」とやるせない気持ちで後ろ姿を見るしかなかった。こうした「取りこぼし」客をどう取り込むかを考えた時に打ち出したのが、テーブル席の変更。
開店時のテーブル席は「4人掛け×3席×2列」の6組24人だったものを、「2人掛け×5席×2列」の10組20人とした。4席減ったものの、テーブル間のスペースができてゆったりとした上、一度に案内できるグループを6から10へ増加させる。この総席数を減らす「逆療法」とも言える方法が成功した。
「ランチのお客さんをAirレジで分析すると、1組あたり平均1.8人というのが分かりました。そこで4人席から2人席に変更したわけです。これによって回転率が上がり、それに伴って集客数も伸びました。ランチの売り上げは2倍になり、月商トータルでも1.7倍です」と言うように、その効果は絶大だった。入れない客が多いという悩みを抱えながら総席数を減らす大胆な方法が取れたのもデータ分析に基づく確信が得られたからこそである。
顧客管理で客の心を掴む、システムを生かした接客
経営の効率化に資する「Airレジ」だが、『VANDALISM』では、それを接客にも活用することでさらに効果を出している。
「レストランボード」と連携している顧客管理機能に客のデータを残しておけば、例えば客の電話番号を入力すると過去の来歴が一目でわかる。「お電話をいただいた時に『ありがとうございます。以前、○月○日にいらっしゃっていただきましたね』という話をするだけで、もう、お客さんの心をがっちりつかめます」。
飲食店も最後は人と人。「Airレジ」の使い方次第で、客に精神的な満足感を与えることも可能である。同店では「一生飲み放題カード」「1年飲み放題カード」「1か月飲み放題カード」を発行しているが、それらも顧客管理機能にメモとして残して管理している。
メニューの入れ替えに効果「ABC分析」
メニューの入れ替えは飲食店にとって大事な経営ポイントである。特にリピーターが20~30%という同店では、常連客が飽きないメニューを出さないとせっかくのリピートが途切れてしまうこともある。これまで「何回も食べているし、今日は外で済ましてきたからコーヒーだけでいいよ」という常連客も少なくなかったという。
そこで「Airレジ」の基本機能である商品別売上分析(ABC分析)を使ってメニューの入れ替えを行うようにした。「ランチの時間はハンバーガーが売れていますが、4種類のうち毎月ルーチンで2種類は替えるようにしました。ABC分析のトップにあるのは残し、そこに乗れなかった物は新しく開発したハンバーガーに替えていきます。そうすると常連さんも新しいメニューを頼んでくれるように。新規のお客さんは、トップの商品が残っていますから、そちらの注文は安定的に取れます。その結果、客単価を落とす事なく、効率よくメニューの入れ替えを行えるようになりました」。
今ではランチの時間に「コーヒーだけでいいよ」という常連客はほとんどいなくなったそうだ。
今後に期待するもの「ビッグデータの提供」
以上のように「Airレジ」と、連携のアプリを効果的に使うことで『VANDALISM』は順調に売り上げを伸ばしている。スタッフの熱意・努力と、システムの活用が成功の要因と言えるだろう。同時に紹介したすべてのサービスが無料のため、経営面に新たな負荷がかからない点も見逃せない。
ちなみに山口取締役が今後、「Airレジ」に期待するのはビッグデータの開示だという。
「マーケットのデータが分かるとありがたいです。例えば渋谷エリアのお昼の時間帯、晴れている日はこういう物が売れているとか、全国の飲食店ではこうなっているとか、そのあたりがAirレジに見やすく出たらいいと思います。ウチの店舗のデータを集約するのも必要ですが、1店舗のデータとビッグデータは違います。そこに期待しています」。
「Airレジ」の進歩とともに店の進歩があると確信している様子が感じ取れた。
『VANDALISM(ヴァンダリズム)』
住所/東京都渋谷区宇田川町26-9 太田ビルB1F
電話番号/03-5784-0939
営業時間/11:00~L.O.翌5:30(月~金)、土日祝は24時間営業
定休日/無休
席数/46
[提供]株式会社リクルートライフスタイル