訪日外国人が2800万人を突破。広まる「コト消費」、飲食店のインバウンド需要の今

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訪日外国人、5年連続で過去最高を更新。消費額は4兆円超
2017年の訪日外国人の数が前年比19.3%増の2869万人となったと観光庁が発表した。これで5年連続で過去最高を更新したことになる。
国別では中国が最も多く735万人(15.4%増)。そして韓国の714万人(40.3%増)、台湾の456万人(9.5%増)、香港の223万人(9.5%増)と続く。中国、韓国、台湾、香港を加えたアジア4地域で見ると、前年比21.9%増の2129万人となり、訪日外国人の70%以上を占めることになる。
消費額も大きく伸びた。16年は3兆7476億円だったが、はじめて4兆円を突破した。費用別に見ると、最も多いのは買物代(34.2%)で、飲食費(21.1%)は3位に入る。ただ、2位は交通費であるため、訪日外国人の飲食に対する消費意欲は高いと言える。事実、飲食比率は安定的に伸びている。
爆買いは失速。日本の伝統文化や体験を楽しむ「コト消費」へ
インバウンド需要の取り込みは、飲食店にとって既に重要な取り組みになっていることは言うまでもない。では、訪日外国人の消費意欲を刺激するものは何なのだろうか? 数年前までは爆買いがキーワードだった。しかしリピーターの旅行客が増えてきたことなどが要因となり、買い物から「コト消費」に消費活動がシフトしているようだ。
「コト消費」とは、特別な体験やサービスに重きを置いて支出すること。つまり、日本の伝統文化や体験を楽しむことだが、飲食店においてはさまざまな取り組みが可能だ。そば打ち体験、和服を着て食事ができる、呑み比べや酒蔵見学など事例は多い。
こうした特別な取り組みだけが「コト消費」ではない。職人がカウンター越しに注文を受け、ネタを切り、寿司を握る。そして握り立てを口に運ぶ。自国では体験できない時間に触れることは、十分なコト消費になる。ただ「注文はできたけど、食べ方が分からなかった」では、コト消費を存分に楽しんでもらうことはできないだろう。料理やサービスがどんなものなのかを正しく伝えることを忘れてはいけない。

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日々の何気ない店舗づくりも訪日外国人の「集客」につながる
インバウンド需要を取り込むには、訪日外国人がどうやって情報収集をしているのか、どのように店選びをしているのかを知ることも欠かせない。
最も役立った情報源として訪日外国人が挙げているのは「インターネット(スマートフォン)」だ。その中でも個人ブログが役立ったとしており、例えば、日本在住の同郷によるSNS投稿がこれにあたる。訪日外国人を集客していくには、単発的なプロモーションで集客を目指すよりも、日々の来店者とのコミュニケーションや、口コミを書いてもらえるような関係性作りが有効になりそうだ。
Web検索はもちろんだが、「通りすがり」に店を選ぶことも多いというデータがある。日本を感じさせる佇まいや日本人と気軽に交流できそうな大衆感、庶民派グルメがポイントになっているようだ。これは、コト消費への意欲が高まっていることの表れだとも言えるだろう。そして、訪日外国人観光客の5割は無料WiFiを必要としているため、店選びに迷ったときには、無料WiFiがある店というのも選択肢に上がるようだ。
訪日外国人のさらなる誘致活動に加え、近づくオリンピックイヤー。2018年は訪日外国人のニーズに目を向けた店舗運営にさらに取り組んでみてはいかがだろうか。
