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快進撃ダンダダン!「餃子飲み」で53店舗。震災時にロウソクで営業、花開いた地元愛と二人三脚経営

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井石代表の実行力の高さについて語る田中副社長

発電機とロウソク、震災時に「開けてくれてありがとう」

調布総本店に行くと壁に一文字30センチ四方程度の大きさで、こんな文章が書かれている。「餃子を愛し、調布を愛す。それが我らの心意気」。そうした思いをストレートに表現することで、地元に愛される店になるという思いが客に伝わりそうである。

━━地元で長く愛されるには何が必要でしょうか

井石 最終的にはお客様に喜んでもらえるために、どうするかという話です。たとえば暇な時間帯に自分の店の前だけ掃除するのではなくて、その店がある通りを全部掃除してみたりとか、そういう細かい積み重ねが街に馴染んだりということになると思います。近隣の店舗に挨拶していくとか、知っている人に挨拶するとか、細かい部分です。

━━お会計を終えて店を出ると、店員さんが外に出て「ありがとうございました」と、ずっとお辞儀をしてくれたのは驚きました

井石 もちろん会社として従業員に細かいことも求めますが、最終的には気持ちです。形だけやっても気持ちが入ってなかったらお客様に伝わりません。お客様に喜んでもらうためにはどうするか、みんなで考えてやっていくことが大事です。

地元で愛されるきっかけともいえる出来事がある。2011年3月、東日本大震災の影響で調布市でも計画停電があり、多くの店が営業をすることができなくなった。しかし、『ダンダダン酒場』は客から提供された発電機とロウソクを灯して営業を続けたのである。

━━震災当時はロウソクを灯して営業をされたとか

井石 何とか毎日店を開け続けました。ロウソクとヘッドライトを仕入れて灯りをつけたり、業者様には真っ先に連絡して食材確保のお願いをしたりと、出来る限りのことをして営業しました。

━━そういう時に来てくれたお客さんは一生忘れられないかもしれませんね

井石 そうですね。みんな「こういう感じで飲むこともないな」という感じでした。当時はスーパーとかコンビニも食品は売り切れ状態。他の店も停電で閉まっていて一人暮らしの方など、食べる所がないという状況です。そういう時にウチは店を開けていたので、すごく感謝されました。「開けてくれてありがとう」という感じで。これこそが自分たちに出来る社会貢献の第一歩であると感じました。その思いは今でも持ち続けています。

店が街に根づくためには「細かい積み重ねが大切」と語る井石代表

二人三脚経営、今では家族のような関係

2人は17年間、ともに会社経営をしているが、意見が異なったり対立することはないのか、もし、あればそのような時はどうするのであろうか。

━━意見が対立する時はどのようにしているのでしょうか

井石 意見が分かれることはあっても、対立ということまではありません。意見が分かれた場合は、長い付き合いなので、議論を重ねて一番いい方法を模索していくしかありません。

田中 お互い譲らない所は譲りません。そこはお互いがよく理解しています。ただ、「本気でこいつ譲らないだろうな」と思ったら、ちょっと引いてみたり。

━━具体的にこんなことで意見が分かれたというのがあれば教えてください

田中 ありすぎて分かりません(笑)。ほとんどのことが1回は議論しています。今でこそ出店が増えたのでそんな話をしませんが、昔は1軒お店を出すのも、彼(井石氏)は攻めたい、僕は守りたい、その議論はしょっちゅうしてきました。その結果、毎回一番いいところに落ち着きます。

━━アクセルの井石社長とブレーキの田中副社長という役割分担でしょうか

田中 どちらかと言えばそうです。たまに入れ替わりますが。

━━今の2人の関係は友情とビジネス両方ですか

井石 友情というよりは、どちらかと言うと長年連れ添った夫婦、あるいは兄弟の方が近いかもしれません。

田中 そうそう(笑)。

2人が描いているNATTY SWANKYの未来は?

毎年、自分たちの限界を超え、成長を続けるのが使命

最後に今後のNATTY SWANKYの進むべき方向を聞いた。

━━今後の御社の展開についてお考えをお聞かせください

井石 店舗数ありきの出店はしたくありません。1店舗ずつ、大切に、しっかりつくっていきます。結果、店舗数が増えたらいいなとは思いますが。

田中 社長と同じです。強い会社、いい会社を作りたいです。業態があって大きくなるので、業態を研ぎ澄ませていくことが大事です。また経営は人がやることなので、人を育てて……。「育てて」というのはおこがましいかもしれませんが、一緒に成長していける環境をつくっていきたいと思っています。

━━店舗を増やすのは、多くの方に食べていただく機会を増やすということでしょうか

井石 ウチの餃子を食べて元気になって、幸せになる人が増えてほしいという思いはもちろんあります。同時に会社を成長させなければと思っています。会社が成長しないと従業員の給料も上がらず、役職も上がりません。みんな人生を捧げる気持ちで入ってきてくれています。その中で「もう出店しません」「もう君たちの給料は上がりません」「君たちの役職も上がりません」、そんな会社には誰もついてきません。そういう意味で毎年自分たちと戦い、自分たちの限界を超えていかなければならないと思っています。

店舗に行けば従業員が元気に接客し、新宿区の本社では社員の皆さんが大きな声で挨拶をしている。育ち盛りの企業らしく活気にあふれ、自慢の肉汁餃子を武器に今後も成長が期待できる企業といえよう。

井石裕二(いせき・ゆうじ)
株式会社NATTY SWANKY代表取締役社長。1974年12月14日生まれ。20歳の時に現取締役副社長の田中と出会う。IT企業に7年間勤務した後、26歳で有限会社ナッティースワンキーを設立した。

田中竜也(たなか・たつや)
株式会社NATTY SWANKY取締役副社長。1974年12月15日生まれ。高校卒業後、18歳で「らいおんラーメン」にて修行。20歳で現代表取締役社長の井石と出会う。26歳で有限会社ナッティースワンキーを井石とともに設立した。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/