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あえてカレーで勝負して大繁盛! 『フレンチカレーSPOON』に聞く“当たる”コンセプトの作り方

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アットホームな外観で、女性客が一人でも入りやすい店。

立地が違えば客層も変わる。2店舗目『ビストロ&バルSPOON+』で気づいたこと

和田さんは現在、西荻窪の『フレンチカレーSPOON』のほかに、もう1店舗経営している。それが、阿佐ヶ谷にある『ビストロ&バルSPOON+』だ。名物の「フレンチカレー」ももちろん食べられるが、飲みに来るお客様をターゲットとし、カレーメインではなくお酒を楽しめるメニューを中心に提供している。カレーをメインにした1店舗目とコンセプトに変化をつけているのには、理由があった。

「『ビストロ&バルSPOON+』はもともと、1店舗目と同じコンセプトでやっていたんです」と和田さん。同じ中央線沿いで始めたお店だからこそ、同じ名前、同じコンセプトで店舗展開を狙った。しかしいざ店を開いてみると、実際に来てくれるお客様は、西荻窪の客層とは少し違ったという。「来てくれるお客様のほとんどが、カレーを食べに来るというより、飲みに来る方でした。同じコンセプトがはまらなかったんです」。

そのことに気づいた和田さんは、なんと半年で2店舗目のイメージ、コンセプトを変えることに決めたそうだ。店を1か月ほど休んで内装を替え、メニューを改善。名前も『フレンチカレーSPOON』から『ビストロ&バルSPOON+』に変えた。

じつはこの切り替えの早さは、和田さんの普段の考え方にある。1店舗目の『フレンチカレーSPOON』を開店したときから、半年に1回店の状態を振り返り、よりよくなるようにマイナーチェンジを繰り返しているのだという。

1店舗目も最初はお酒をビールのみの提供としていたが、今は10種類以上のワインを用意するなど、お客様の様子に合わせて内容を変えた。西荻窪は阿佐ヶ谷ほどではないが、客層の半分ほどはお酒を好む方がいるという。「フレンチカレー」がワインに合いやすいということもあり、カレー×ワインをおすすめするようになったそうだ。新しい挑戦だからこそ、完全にコンセプトを固めないようにする。あくまで大きな枠組みの中で細かな改善をすることが、長く続く秘訣なのかもしれない。

月替わりのメニューもバリエーション豊か。

独自のコンセプトを続けることの難しさと面白さ

『フレンチカレーSPOON』は今年、10年目を迎え、地元の人からも愛される店となった。ただ、独自のコンセプトや料理を作ったゆえに、続ける難しさがあるという。

「当店で出しているメニューは、料理作業の工程がとても多いです。工程が多ければ多いほど料理に差が出やすくなるので、人によって味が変わってしまいやすく、なかなか店舗を展開していきにくいということがあります」。

たとえばフランス料理の手法を使って、フォン・ド・ヴォーやチキンブイヨンなどの出汁を取る作業がある。その出汁一つを取るにも味わいに差が出てしまい、なかなか同じクオリティを提供することが難しい。フランス料理は特に、シェフによって味わいに個性が出やすい料理だ。大衆食に落とし込んだとはいえ、その点においてはまだまだ課題があるという。

しかし王道のフランス料理ではなく、あえてカレーと組み合わせた親しみやすいコンセプトを打ち出したことは、和田さんらしいフランス料理を楽しんでもらえる店となった。修業していたころの先輩も来店し、楽しんでくれているという。

「独立するときは正直、まわりから反対されました。副料理長を務めていたこともあり、次は料理長になるかもしれないというところであえてカレーを選んだことは、疑問に思う人も多かったと思います。ただ、新しいジャンルに飛びこんだことを、認めてくださる方も多くいました」。

王道から外れ、既存にないコンセプトを打ち出すことは当然、リスクもあり怖さもある。しかし、明確なイメージを持ち、立地やターゲットをきちんと検討し、マイナーチェンジを繰り返して新たなコンセプトを構築することは、大変ながら面白さもあるのではないだろうか。

数え切れないほどある飲食店の中で個性的なコンセプトを打ち出すことは、客を呼び寄せる打開策にもなるはずだ。今後開業を考えている場合はもちろんのこと、すでに営業している場合でも、改めて店のイメージやターゲットを見つめ直すことはとても重要といえるだろう。

『フレンチカレーSPOON』
住所/東京都杉並区松庵3-38-19 リヴェール西荻 1A
電話番号/03-6447-7523
営業時間/11:30~15:00 18:30~23:00
定休日/火曜日

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。