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東京駅「東京ラーメンストリート」の10年。せたが屋・前島氏「時代に合わせて常に成長」

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『塩らーめん専門 ひるがお』の10周年記念特別メニュー「名古屋コーチン尽くしの塩まぜそば」

変えない部分、変えるべき部分を見極めて進化する

時代に合わせてコンセプトを変化させ、長年注目を集め続けてきた東京ラーメンストリートだが、努力しているのはもちろん施設側だけではない。第一期から『ひるがお』を出店・運営している前島氏は、時代の変化についていくためにさまざまな面で試行錯誤をする必要があったという。

「僕らは『ひるがお』というブランドで加入させてもらっているので、ブランド自体は変えちゃいけない。でも、時代の流れによって変えなくてはならない部分も出てきました。たとえばインバウンドのお客様の増加やSNSブームなどがありますが、その都度ブレない部分と時代に合わせる部分を作っていく必要がありました。SNS映えを狙った見栄えの良いラーメンを作った際は、ファンの方々から『ひるがおらしくないね』と言われてしまったこともあります。ただ、東京駅の店舗は、一般の路面店より杯数を多く出し、利益を追求していかなければなりません。だからこそ、これはやるべきだと思い、続けました」

一方、第2期から『斑鳩』を出店・運営している坂井氏は、これまで経営してきたほかの支店との違いを実感し、接客に工夫をしているそうだ。

「東京の玄関口ということもあり、東京駅の店舗はお客様の層が本当に広いです。出張で立ち寄られる方や、カップル、ファミリー、インバウンドのお客様など様々な方がいらっしゃいます。だからこそ、何かあるたびに基本の接客マニュアルを見直しつつ、臨機応変に対応するようにしています。路面店の場合は、ありがたいことにラーメン目的で来店される方がほとんどなので、お客様がお店のルールに合わせてくださることもありますが、東京駅はそうもいきません。ふらっと立ち寄る方もいらっしゃいますし、来店される目的もそれぞれです。そうした場合に、お客様に合わせて柔軟に対応するように努めています。これは難しさもあり、やりがいを感じる部分でもありますね」

東京駅という特別な立地だけに、いつも通りの営業スタイルでは上手くいかない。柔軟にカタチを変えていくことが求められるというわけだ。さらに、東京ラーメンストリートに出店している店舗はどれもレベルが高く、その中で勝ち抜かなくてはならない厳しさがある。前島氏は「常に成長していかなければならない」と話す。

「東京駅のような場所は、活性化のために入れ替えをすることが当たり前です。だからこそ、自店が色あせてしまうと、ほかのラーメン店との入れ替えの対象にもなり得ます。味はもちろんのこと、サービスや人員配置にも気を配り、トレンドを取り入れたメニューを展開するなど、成長しなければここでは生き残れません」

坂井氏もまた、「全方位でレベルが高くないといけない」と語る。各店がこのように意識を高く持ち、良い店づくりに努めていることが、施設全体のレベルの高さにもつながっているのだろう。

10周年記念として作られたフォトスポット

施設とラーメン店が積極的に協力し合うからこそ、魅力がある

施設側、ラーメン店側、双方の意識の高さに加え、両者がしっかりと話し合い、協力しながら店舗を作り続けてきたという点も見逃せない。たとえば、ラーメン店には付き物である「行列」への対応は店任せにせず、施設からも対策を行うようにしていると佐々木氏は言う。

「『15分待ち』『30分待ち』といった目印をつける、『先に食券をお買い求めください』とアナウンスの看板を立てるなど、お客様がストレスなく並べるような対策をしています。こうしたところは、今後も現場の皆様と話し合いながらブラッシュアップしていきたいです」

さらに、前島氏は『俺式 純』を、坂井氏は『ちよがみ』をセカンドブランドとして開業しているが、これらはいずれも、東京ステーション開発株式会社との共同開発によって出来上がった店舗だ。施設側と店側が二人三脚で歩んでいるのがよくわかる例だ。

そして10周年の今年は、それぞれの店舗が記念の特別メニューを展開。施設内には10周年記念のフォトスポットを設置しているほか、10周年記念特設サイトを開設するなど、やはり強力なタッグを組んでこの記念イベントを盛り上げている。「観光で来られた方やインバウンドのお客様にも、いい思い出を作ってもらいたい」と佐々木氏は話す。

これまでの10年、東京駅を盛り上げ、多くの人に愛されてきた「東京ラーメンストリート」。今後も、ラーメン店と施設が協力し合い、さらに進化していくことが予想される。これからの展開が楽しみだ。

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。