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コーヒーの移動販売から実店舗を構える。福岡『Hand anything』の開業ストーリー

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天神にある福岡市赤煉瓦文化館。貴重な建物を見学するため、観光客も多く訪れる

2019年8月に移動販売から実店舗へ

福岡市赤煉瓦文化館は、天神一丁目にある国の重要文化財。『Hand anything』は、現在この1階に店を構えている。話は少し逸れるが、福岡市は近年、スタートアップ都市として注目を集めている。また、昔からエンジニアという職種の方やそのコミュニティも多く存在し、最近では大手IT企業が福岡に支社を構えるケースも増え、エンジニアの移住が増加中だ。そんなエンジニアたちの交流やスキルアップを目指すべく生まれたのが、福岡市赤煉瓦文化館にある「エンジニアカフェ」。カフェとは名が付くが、飲食の提供はなく、コワーキングスペースや交流イベントの会場として使用されている。『Hand anything』は、その「エンジニアカフェ」に向かい合う形で出店した。

「市が力を入れる“スタートアップ”という部分に、店を構えたいと模索していた僕がちょうどマッチしたんだと思います。お声がけいただいたときは驚きましたが、2、3日の時間をいただいて、チャレンジしたいと答えました」

コーヒーはテイクアウト用カップで提供する

国の重要文化財だけあってカフェを開くために大きな改修をすることはできない。かつて喫茶店があったというスペースに残るカウンターをそのまま利用し、制約の中、必要最低限の小さな設備だけをそろえて、コーヒーに焼き菓子、そしてアルコール類を提供する、新しい『Hand anything』が2019年8月に誕生した。お客は向かいの『エンジニアカフェ』に通う人や市が管理する2階の会議室の利用者。また場所柄、観光客が訪れることも多い。

「店を持って一番のメリットは、雨風にさらされないことでしょうか。冷蔵庫が使えるのもありがたいです。自転車で移動販売をしている時は、氷を魔法瓶に入れてアイスコーヒーを作っていたんです。氷がなくなったらコンビニに走って買いに行っていたから、アイスコーヒーだけ、提供価格が100円高くなってしまって。初めから店舗を持っていたら、なかなか感動しないポイントですよね(笑)。もちろん、移動販売の頃に比べると固定費は増えてしまいましたが、その分、コーヒーの種類を増やしたり、アルコール類を提供するようにしたりと、メニューのバリエーションを増やすことができました」

『Hand anything』は新しいスタートを切ったばかり。「まずは今のお店を軌道に乗せることが目標。文化財という独自の雰囲気を生かしつつ、どう展開していくか模索中です」と秋利さんは話す。さらに、「今後は、店舗展開、自転車を使った新規事業など、広い視野をもって取り組みたいと思います」と、声を弾ませながら話してくれた。

開業にはお金がかかるもの。そんな考えを打ち壊し、新しい発想で弱点を補い、店舗を持つ夢を叶えた秋利さん。その夢の実現は、これからも続いていく。

福岡市赤煉瓦文化館は、明治時代に建てられた建築物。趣きのある雰囲気を生かしながら店づくりに取り組む

『Hand anything』
住所/福岡県福岡市中央区天神1-15-30
電話番号/非公開
営業時間/11:00~21:00
定休日/毎月最終月曜
席数/15 
https://www.handanything.com/

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。