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食事をごちそうできる新アプリ「ごちめし」発表。被災地支援や子ども食堂にも

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10%のサービス手数料はごちそうする側が負担。しかし「誰かにごちそう」するという善意の行為は、ごちそうする側の幸福度を確実に上げてくれる

飲食店にとって得しかないサービスモデル

そうしたエピソードを経てスタートした「ごちめし」。では、飲食店にとっては具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。イベントの中盤で催されたのは、テストマーケティングの段階から関わってきた飲食店『なかめのてっぺん』などを経営する株式会社MUGENの代表取締役・内山正宏さんと、公私ともに交流のある今井さんとのクロストーク。ここで内山さんの口から飛び出したのは「(ごちめしに)参画しない理由はない」という確信に満ちた言葉だった。

内山さん(右)を交えて。今井さんが「なかめのてっぺん」の店内BGM選曲に携わったことをきっかけに親交を深めていったそう

店の様々なメニューを食べてもらうきっかけに

考えてみれば「ごちめし」は、いわゆる口コミによる集客効果を、より確実性の高いものにするサービスでもある。「あの店のあの料理が美味しいんだよ、今度ごちそうする」という社交辞令のような約束さえ、手際よく実現させることができるからだ。とはいえ、当初は懸念がなかったわけではないという内山さん。飲食店側の立場から、テストマーケティング実施時の心情を話してくれた。

「スタッフのモチベーションを上げたいときなど、彼らに飲み会の飲食をごちそうする、なんてこともしやすいですね」と話す内山さん

「正直、最初は『オープンごち』の入っているメニューだけを食べて帰る人が続出したら困るなとか、0円の会計をレジでどう処理するべきかとか、いろいろ不安はありました。でも始めてみたらそんなことは杞憂に過ぎなかった。まず、0円のメニューをきっかけに来店してくださったお客様は、必ずほかのメニューも自然と召し上がっていかれるんです。また、うちは手書きの伝票でオーダーを取っているんですが、スタッフがメニュー名の前に『ごち』という符号を書き入れることで、料理を作る人にもレジを打つ人にもきちんと伝達できるような工夫をしてくれました。レジにもごち対応時のキーを設定したことで、レシートには0円と記載されるようになったり。この辺は、スタッフ同士のちょっとしたルール決めで、何の問題もなく運用できましたね」

結果、「ごちめし」をきっかけとした来客者数は着実に増え、いち押しの一品から様々なメニューを食べてもらうこともできたと話す内山さん。その集客効果に満足している様子だった。

店舗側にコスト負担がないというシステムは画期的

登録費用も手数料もゼロ。言ってみれば、タダで店のPRができるということ

しかしながら最たる注目は、店舗にとって一切のコストがかからないという点だろう。「ごちめし」のサービス手数料を負担するのは、あくまでごちそうする側のみ。しかも飲食代は一週間以内に前払いされ、その際の店舗負担手数料なども不要。宣伝費をかけない長期的なPR手段としては、これ以上ないサービスと言えそうだ。また、今井さんと内山さんからは、

「新しいメニューを開発したときは、それを店側がお客様に『ごちる』ことで効率的なプロモーションに使えそう」(今井さん)
「よくご来店くださるお客様の記念日などでは、店でも何らかの気持ちを示せたらと思う。そんなとき『ごちめし』があれば、ワインを一本差し上げるといったサービスもしやすい」(内山さん)

といった発言も。飲食店が「ごちる」側になることで、さらなる用途が広がりそうだ。店舗登録は「ごちめし」のWebサイトから随時可能。簡単な自社情報を登録するだけなので、大きな手間がかからない点も嬉しい。

会場では、実際にアプリを使用したごちられ体験も。「オープンごち」の場合は、来店後にQRコードを読み取る

新しい「恩送り」の実現。ごちられたユーザーの6割弱がごちり返したという事実

過去に『スターバックス コーヒー』が行った実証実験では、サスペンデッドコーヒーをごちそうされた人の約半数が、同じようにごちそうしたという結果が出ている。今回の「ごちめし」本格ローンチを前に、6月から10月までの4か月間、福岡・東京エリア+帯広「結」の計58店舗、757人を対象に実施されたテストマーケティングの結果によれば、アプリをインストールした319人(58%)の内、利用率は「ごちる」が70人(22%)、「ごちられる」が122人(38%)、さらに「ごちられる」を体験したユーザーの57%がその後「ごちる」を利用したそう。これは、アプリ上でも食を通じて思いを伝える連鎖が生まれることを意味しており、新しい“恩送り”の形が定着することを予感させるものだ。

今後は、テストマーケティング期間中に福岡県親不孝通り商店会とタッグを組んで開いた「こども食堂」(10月31日まで)をはじめ、10月よりスタートした佐賀県みやき町での「子ども食堂」の実施など、複数の飲食店と街ぐるみで行う取り組みも増加していきそう。また、ごちそうする側が「ごちめし」未参画の店舗を仮登録できるようにするなど、アプリ自体の機能も充実させていくという。

「ごちめし」の普及によって、リピーターがリピーターを生む可能性もますます増えていくだろう。確かに、飲食店が参画しない理由はなさそうだ。

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田中恵実子

ライター: 田中恵実子

編集プロダクション在籍時にグルメやライフスタイル、住まいなどをテーマとしたさまざまな雑誌・Webマガジンにて取材&執筆をおこなう。現在はフリーランスとして、女性向けショッピングサイトなどの編集執筆を担当。世代より少し上の歌謡曲やJ-POPを愛聴。