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高級フレンチがビリヤニを販売!? 大崎『アロム』のテイクアウト戦略がスゴい!

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『レストラン アロム』の岡部一己総支配人(右)と永瀬友晴シェフ(左)

大崎にある人気フレンチ店『レストラン アロム』。岡部一己総支配人は新型コロナによる影響を「2月末から3月までに160人のキャンセルがありました」と振り返る。

緊急事態宣言を受け、4月14日から26日まで営業を自粛。永瀬友晴シェフと「4月なったらテイクアウトをやろう」と相談していたこともあり、27日の営業再開と同時にテイクアウトをスタートさせた。当初は単品だけの提供だったが、ゴールデンウィーク明けからコース料理も追加。それと並行し、永瀬シェフはビリヤニの試作を続けていた。

7月3日、『アロム』とは別に、新ブランド「フレンチ ビリヤニ」を設立。フレンチレストランがなぜビリヤニを売ろうと思ったのか。永瀬シェフと岡部総支配人に話を聞いた。

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『アロム』の内観

地元の食いしん坊をターゲットにテイクアウトをスタート

4月14日から12日間休業。営業を再開した27日、店内営業と同時進行でテイクアウトをスタートさせた。これまでメインで供してきた「和牛ホホ肉の赤ワイン煮」、「若鶏モモ肉のコンフィ」、「ブイヤベース風カレー」の単品販売を始めたのだ。

「テイクアウトをやったことがなかったので、売れるのかどうか不安でした。シェフと相談し、無理のないところから始めたほうがいいだろうと思い、うちの定番料理を販売させていただくことにしました」(岡部総支配人)

ゴールデンウィーク明けから、「お家でコース料理」と題して前菜とメインディッシュもテイクアウトに加えた。前菜を5品、メインディッシュを3品用意。その中から3つのパターンで料理を選んでもらうことにした。

①好きな前菜1品とメインディッシュ1品で1950円(税込)
②好きな前菜2品とメインディッシュ1品で2450円(税込)
③好きな前菜3品で1750円(税込)

フレンチレストランのテイクアウトとしては破格の値段だと言えるだろう。「気軽に買っていただける価格にしたかったので、ポーションを少なくしました」と永瀬シェフは言う。フレンチレストランの中にはコース料理を通販している店も多い。だが、『アロム』では店頭での予約販売にこだわった。地方発送もせず、なぜ手渡しを選んだのか。

「コロナで電車に乗るのも怖がっている人が多い状況でした。『アロム』未体験の近所の方に、うちの味を知っていただきたいと思い、通販ではなくテイクアウトにしたんです」(永瀬シェフ)

地元の食いしん坊に、『アロム』の料理を自宅で楽しんでもらおうと考えたというのだ。

人気メニュー「若鶏モモ肉のコンフィ」

料理を受け取りに来る人の中には子どもの姿もあった。子どもを度々見かけた永瀬シェフは新メニューを発案。子どもが大好きな「煮込みハンバーグ」を商品化することにしたのだ。1個990円の、街の洋食屋的な料理が大好評。5月は28個も注文があったという。

「でも、一番人気は、『和牛ホホの肉の赤ワイン煮』ですね。5月は68個も買っていただきました。総じて5月の売上は、テイクアウトのボリュームが大きいです」(岡部総支配人)

5月の総売上の25%がテイクアウトだった。単品とコース料理のテイクアウトが、客足が鈍った店内営業を支えてくれたのだ。

5月25日の緊急事態宣言解除後、徐々に客が戻ってきた。“ご近所作戦”が功を奏し、『アロム』の味に惹かれた北品川界隈の人が、食事に来てくれるようになった。

じつはこの店はワインのインポーターが経営している。店内でワインを販売するだけでなく、外のテラスでワインやシャンパンを飲める「角打ちあろむ」の看板を掲げた。仕事帰りや散歩の途中など、テラスでグラスを傾けるワイン好きの姿が、徐々に見られるようになっていったそうだ。

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。