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高級フレンチがビリヤニを販売!? 大崎『アロム』のテイクアウト戦略がスゴい!

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400種類ものワインが揃う

手に入れた3つ目の武器

「これからもテイクアウトを店内営業と並行してやっていくつもりです。でも、新型コロナウイルスの感染が拡大して店内営業ができなくなった場合に備えて、従来のテイクアウトとは違う“新しい武器”が欲しいと考えていました」(永瀬シェフ)

永瀬シェフは、3つ目の武器にすべく新作料理の試作を続けていた。インドの炊き込みご飯、ビリヤニである。フレンチレストランがなぜビリヤニを作ろうと思ったのか。話は4月に遡る。ある日アシスタントシェフの岡村竜二さんが、賄いにビリヤニを作った。

「ビリヤニは一度も食べたことがありませんでした。でも、突然食べたくなり、レシピを調べて作ることにしました」(岡村さん)

岡村さんが用意したビリヤニを、永瀬シェフも岡部総支配人も完食したという。「特におこげが美味しかったんですよ(笑)」と永瀬シェフは嬉しそうに語る。

この料理をテイクアウトに加えられないものか。そう考えた永瀬シェフは、ゴールデンウィーク明けのある日、岡村さんと一緒に、都内のビリヤニ専門店へ向かった。専門店のビリヤニは美味しかった。けれど、もう少し日本人向けに改良すれば、『アロム』の“新しい武器”になると確信した。

「フランスに羊を使った『ナヴァラン』という地方料理があります。それとビリヤニを合体させたら、面白い料理になりそうな予感がしました。鍋で炊いたビリヤニをテイクアウトで販売している店もあります。でも、温かいものを食べてほしかったので、鍋焼きうどん用のアルミ鍋を使うことにしました」(永瀬シェフ)

「フレンチ ビリヤニ」(1500円)

どうすればおこげができるのか、10回以上試作を繰り返した。バスマティライスを炊く際の水分量や炊き加減を工夫。鍋底にギーを塗っておくと、美味しいおこげができることもわかった。フランスでは、ナヴァランにハリッサという辛味を付けて食べる。そのハリッサも自作し、スモークしたカシューナッツとセロリをビリヤニに添えることにした。

6月中旬にビリヤニが完成。アルミ鍋を10分弱火にかける。火を止めたら、カシューナッツとセロリを入れてかき混ぜる。おこげの芳ばしい香りと、燻したカシューナッツや爽やかなセロリの香りが入り混じった複雑な風味……。スパイシーなカレーではなく、フランス料理の延長線にあることから、「フレンチ ビリヤニ」(1500円)と命名。7月3日から販売を始めた。しかし、4月末から展開してきたテイクアウトメニューには載せないことにした。

「ビリヤニやカレー好きなマニアックな人に発信したかったんです。そのためにもレストランとは別チャンネルで、ビリヤニを販売しようと判断しました」(永瀬シェフ)

「フレンチ ビリヤニ」は『アロム』とは別の顧客がターゲット

4月下旬にテイクアウトを始めたのは、『アロム』未体験の地元の食いしん坊に、『アロム』の味を知ってもらいたかったからだ。そして今度は、「フレンチ ビリヤニ」という“第3の武器”で、フランス料理の客ではない、新しい客を呼び込もうと考えたのだ。

「だから、あえて『アロム』と一緒にしませんでした。『フレンチ ビリヤニ』を取りに来たら、フレンチレストランで作っていたことがわかってもらえればいい。チラシを用意しましたが、『アロム』の電話番号は書きませんでした」

『アロム』とは別に、フェイスブックもインスタグラムも「フレンチ ビリヤニ」の名前で新設した。販売チャネルも分けた。従来テイクアウトの注文は店の固定電話で受けてきたが、「フレンチ ビリヤニ」はLINEが提供する法人用サービスのLINE@で注文を取ることにした。オーダーが入ると岡部総支配人のスマホにメールが届く。ただし、受け取りはほかの料理と同様、『アロム』で手渡し。

「和牛ホホ肉の赤ワイン煮」

7月3日に立ち上がった「フレンチ ビリヤニ」だが、7月末までにオーダーが40個入った。当初、仔羊のビリヤニだけだったメニューに、8月から「ビリヤニエビ」も仲間入り。アメリケーヌソースとエビバターが香るビリヤニも販売することにした。

「5月は店内営業の売上が下がった分をテイクアウトが支えてくれました。おかげで通常の約50%の売上を確保。4月が約18%だったので、5月は予想していたよりも悪くなかったと思います。6月は緊急事態宣言が解除されたこともあり、店内営業の売上が上がり、その分テイクアウトが下がりました。でも、6月の総売上は、通常の約56%まで回復しています。お客様が戻ってきてくださるのが予想外に早かったですね」

ところが、7月第2週から感染者数が増加。キャンセルも多く、店内営業の売上が下がった。東京都の感染者数が100人を切ったら、また客足が戻ってくるのではないかと岡部総支配人は読んでいる。

「でも、それまでをどう凌ぐか。攻めることもできませんし……。店内営業が不振なのは、高級レストランであるとかないとかは関係ないと思います。ただ、コロナ禍でピンチがチャンスになったと言えるのではないでしょうか。従来レストランの売上は店内営業だけでした。コロナ危機でテイクアウトという新しい柱が増えたことだけは、結果として良かったのかもしれません」(岡部総支配人)

『アロム』の場合、もうひとつ「フレンチ ビリヤニ」という新ブランドが誕生した。フェイスブックとインスタグラムのフォロワーを増やし、「フレンチ ビリヤニ」の売上も伸ばしていきたいと考えているという。

『レストラン アロム』
住所/東京都品川区北品川5-6-1 大崎ブライトタワー1F
電話番号/03-6277-4108
営業時間/11:30~13:30、18:00~20:30
定休日/日曜・祝日
席数/全26席だが、5組のみで営業中

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中島茂信

About 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。