ニュースレターの購読はこちらから(無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
※お申し込みの前に、個人情報の取扱いについてご確認いただき、同意の上お申し込みください。
powered by 飲食店.COM ログイン

福岡『鮨料理 一高』、新たなファン獲得して躍進。店主・木宮氏「コロナは良い転機」

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

『一高』の外観。外からは中の様子が伺えないが、テイクアウトのお弁当を取りに来たお客さんが店内の様子を見る機会が増え、その後、イートインへの来店に繋がっている(写真提供:一高)

「1年で職人を育てる」人材育成の仕組み作り

そんな木宮さんが、『一高』開業時より取り組んでいるのが「人材育成」だ。木宮さんの実家は、宮崎県の有名店『一心鮨 光洋』。木宮さんも、福岡で開業する前は『光洋』で働いていたという。店は70席ほどと広く、多くの鮨職人が在籍。しかし、なかなか従業員が定着しないのが悩みだった。そこで木宮さんは、人材育成について考え直すようになったのだとか。

「きっかけはホリエモンが数年前に発言した、『鮨職人になるために、何年も修行するのはバカ』という言葉。それで改めて、鮨職人になるためにどんな過程があるのかを書き出していったんです。学びたいのは『鮨を握ること』。なのに、書き出していったら、『鮨を握る』のは最後に学べることで、その前段階にやるべきとされることが非常にたくさんあったんですよね」

「鮨を握る」までの道のりが長く、モチベーションを保ち続けることができない……、それが上手く人が育たない原因だと木宮さんは考えた。技術習得に時間がかかることは、鮨に限らず高級店ではよくみられることだが、そこを変えたいと思った。とはいえ、今すぐに店の考えを変えることは難しい。そこで、母である女将と話し合い、木宮さんは鮨業界の発展のために別の道を進むことに。縁があり、移住覚悟でシンガポールへ渡り、和食料理人として働きはじめた。

「シンガポールには、和食を学びたい若者がたくさんいました。学びたいという意欲がすごく高くて、日本人の料理人が来たとなるとみんな喜んでくれた。シンガポールでは、能力が高い人はどんどんいい条件で働くことができるんです。日本では、飲食店は10年で9割以上が閉店してしまいます。つまり、つぶれることが前提で働いているといってもいい。給与が高いイメージもない。それなら日本ではなくて海外でチャンスを掴む和食料理人がいてもいいんじゃないか、と。そう考えて、 “海外で活躍しながら和食文化を伝えられるような職人”を育成し始めたんです」

現地の料理人に和食を教えながら、1年間で和食職人を育てる独自のメソッドに自信が付いた木宮さん。アジアへのアクセスに便利な福岡に『一高』を出店するために、帰国を決めた。

「応援弁当」として無料配布する「うなぎ弁当」。大ぶりで分厚いうなぎは見るだけで力がみなぎりそう(写真提供:一高)

若手の料理人を育てるランチ限定店『鰻焼き 鰻田官兵衛』

木宮さんの考えた教育プログラムで大切なのが「経験する」こと。「修業中は、インプットの機会はあっても、アウトプットできる場が少ない。でも、成長するには、学んだことを実践して繰り返すことが重要なんです」と木宮さん。そこでオープンさせたのが、『一高』の店内を使ったランチ限定店『鰻焼き 鰻田官兵衛』だ。木宮さんのもとで働く若手料理人が、メニューを考え、調理を含めた店の回し方、接客などを学んでいく。

「僕のもとについてくれたら、2~3週間でメニューを一つ任せるんです。材料はなんでもいいから、やってごらんと。僕は何も口を挟みません。これについて、お客さまからクレームがあっても、それはすべて自分で対処してもらう。失敗がある一方、『美味しい』という喜びの声も、すべて成功体験として自分のものになっていきます。僕の役割は、アウトプットするための場の提供、つまり環境づくりなんです。これがあるだけで、人は爆発的に成長できる。自分の責任で本気で対応し、経験を重ねるからこそ、1年で職人になることができるんです」

この教育プログラムは、学びたい意欲のある料理人の卵を刺激。SNSや口コミで広がりを見せ、調理専門学校の学生や若手の料理人が、飛び込みで店を訪れることもあるという。

コロナは新しいことにチャレンジする良い転機

木宮さんに今後をたずねると「『応援弁当』で、鰻をとても喜んでもらえたから、次は鮨じゃなく、鰻で何か新しいことをやってみたい」と、声を弾ませる。

「コロナを良い転機とみるか、運が悪かったとみるかはそれぞれですが、僕たちは『ありがたい』と思っています。『コロナのせい』と口癖にすることなく、新しいことにチャレンジする良い転機となったとポジティブに考えたいですね」

これまで業界で“当たり前”だった常識を見直し、独自のアイデアと行動力で新しい道を切り拓いてきた木宮さん。あふれるポジティブな空気は、あの、おかずが溢れるほど詰まったお弁当からも感じ取ることができる。「コロナのおかげ」とカラリと笑うその前向きな眼差しは、これからも多くのお客や後輩料理人たちを魅了していくだろう。

『鮨料理 一高』
住所/福岡県福岡市中央区荒戸1-222 ロワールマンション大濠101・102
電話番号/092-791-5868
営業時間/昼の部①12:00~②13:00~/夜の部①17:00~②18:30~③19:30~④20:00~
定休日/火曜・水曜
席数/15

Pocket
follow us in feedly

Foodist Mediaをフォローして最新記事をチェック!

ニュースレターの購読はこちらから(無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
※お申し込みの前に、個人情報の取扱いについてご確認いただき、同意の上お申し込みください。
[PR]
戸田千文

About 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。