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飲食店の“密”回避に有効!? 『お食事処 asatte』の「ダイナミックプライシング」導入記

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厨房で調理中の車店長

コロナ前から増益のための布石としてDPを考えていた

取材日(9月7日)は台風の影響で、晴れていたかと思うと突然雨が降ってくるような天気だった。12時半過ぎに店内を覗くと4名が食事中。14時に入店したときは、6席が埋まっていた。ところが、閉店の20分前ぐらいからひっきりなしに客が来店。10分後には満席になった。しかも外では2名が待っていた。コロナ前から閉店前の駆け込み客が多かったそうだ。

「1日おきに来店される方もいて、いつも同じ時間帯にお見えになります。この界隈に勤務されている方は、フレキシブルに昼食をとられているみたいです。店が空き始める14時以降に来店する方も大勢いらっしゃいます。でも、以前は同じ時間帯にお客様が集中することはほとんどありませんでした。今日はかなり偏っていますね」

料金が安くなる時間帯を狙ってくる人もいれば、単に空いている時間帯を好んで来店する人もいる。その日のメニューで来店数も異なるようで、この日は人気メニューの豚の生姜焼きだった。あまり人気のないメニューの日は客足が鈍るそうだ。1日1メニューの定食屋なので、客としては選択の余地がない。食欲をそそられないメニューの日は、他店に流れることもあるというわけだ。

「来店数には、いろいろな要因が関係していると思います。僕らにできることはメニューを決めることだけ。客数をコントロールすることはできません。ただ、以前に比べて客が減ったのは確かです。それがDPの導入が要因なのか、コロナの影響なのかどうかはわかりませんけど」

この日は豚の生姜焼定食

ちなみにDPの価格はどうやって決めているのだろうか。

「客数を時間帯ごとに毎日集計しています。その数字を見て、あまりにも偏った時間帯があれば価格を調整します。でも、特に決まった計算方法があるわけではありません。感覚で価格を決定する部分も大きくなってきました。“密”を防ぎつつ、利益も出さなければなりません。それにはどうすればいいのか。正直言って、試行錯誤の繰り返しです」

価格を変更すべきかどうかは、数週間のスパンで判断するようにしているそうだ。最後にDPというシステムの導入が正解だったと思うかを尋ねた。

「それを判断するには、まだデータが足りません。じつは、オーナーはコロナ前からDPの導入を考えていました。より利益を上げるためにDPを採用するつもりだったようです。アフターコロナを見据え、DPと売上の推移のデータを蓄積しておくつもりです」

まずは“密”を回避する策として取り入れたDP。今後の運用次第では、より利益を出すための武器になっていくかもしれない。飲食店のカタチは、コロナを機にドラスティックに変わろうとしている。

『お食事処 asatte』の外観

『お食事処 asatte』
住所/東京都渋谷区千駄ケ谷3-2-8
電話番号/03-6434-9451
営業時間/11:30~15:00、18:00〜21:00(夜は一律1000円)
定休日/なし
席数/12
※ダイナミック・プライジングを導入しているのは平日のランチ営業のみ

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。