消費税込み「総額表示」の義務化から2年。飲食店が抑えるべきルールとポイントを確認

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2021年4月から、消費税の「総額表示」が完全に義務化された。以前は特例措置で税抜き価格のみを表示することが認められていたが、現在は飲食店においても、メニューや看板などで税抜き価格を表示する場合には、総額表示のルールに従った表記を行う必要がある。本記事では、飲食店が遵守すべきルールについて改めて解説する。
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誰もが支払いをしやすい「総額表示」。いつから始まった?
総額表示とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う事業者が、値札やチラシなどでその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含む)を含めた価格を表示すること。この総額表示は2004年から義務付けられている。
しかし、消費税が5%から8%、さらに10%と段階的に引き上がることが決まり、総額表示のままでは増税のたびに値札や印刷物などを訂正する作業とコストが発生することが想定されたため、特別措置法(消費税転嫁対策特別措置法)が施行され、総額表示は猶予されていた。2021年4月1日からは総額表示が完全義務化されている。

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消費税を含む総額表示におけるルールは?
例えば1,000円の商品を「総額表示」する場合は、以下のようになる(標準税率10%が適用されるケース)。
■正しい表示方法
・1,100円
・1,100円(税込)
・1,100円(税抜価格1,000円)
・1,100円(うち消費税100円)
・1,100円(税抜価格1,000円、消費税100円)
<ポイント>
・「1,100円」という支払総額を表示していれば、「消費税額」や「税抜価格」は表示しても、しなくてもよい。
・「1,000円(税込1,100円)」であっても、消費税額を含んだ価格を明瞭に表示していれば「総額表示」に該当する。「(税込1,100円)」の文字が小さい・うすいなどは明瞭と言えない。
■NGな表示方法
・1,000円+税
・1,000円(税別)
・1,000円(本体価格)など
メニュー表によくある税抜き価格を大きく見せる表記は「総額表示」か
居酒屋などのメニュー表でよく見られるのが、第一印象を重視し、「1,000円(税込1,100円)」といった形で、税込価格を一回り小さな文字で表示しているもの。総額表示のポイントは、実際に支払う価格である「税込価格」が明瞭に表示されていれば「総額表示」に該当するため、このような表記も認められている。
なお、現在の「税抜価格」を基に「税込価格」を設定する場合、1円未満の端数が生じることがあり得る。その場合、端数を四捨五入、切り捨てまたは切り上げのいずれかの方法により処理してもよいとされている。

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総額表示義務化に際して飲食店が確認すべきこと
総額表示は、消費者に販売する商品やサービスすべてに義務付けられる。飲食店が確認しておきたいのは次のようなものだ。
・メニュー表
・店内ポップ
・チラシ、広告
・ホームページ
・ダイレクトメール・メールマガジン
・商品に貼り付けた値札
口頭で価格を伝えるときは総額表示でなくてもいいとされている。ただ、今後お客が総額表示に慣れていくと、誤解が生じることもあり得る。口頭でも総額表示をクセづけていくことが望ましいだろう。
軽減税率はいつまで? テイクアウトを行う飲食店が注意すべきこと
テイクアウトやデリバリーを行う飲食店も多いが、これらには軽減税率が適用される。
軽減税率制度は、2019年10月の消費税10%への引き上げとともに始まった、飲食料品を中心に税率を8%に据え置く措置だ。“措置”であるため適用期間に期限があると思われがちだが、消費税法の改正がない限り制度は存続する。つまり、終了時期は決まっていない。
テイクアウトやデリバリーは消費税率が8%、イートイン(店内飲食)は消費税率が10%と、消費税率が異なるため、それらのサービスを行う店舗は、分かりやすい価格表示を行おう。
・例① 店内飲食(10%)とテイクアウト(8%)の両方の税込価格を表示する
からあげ丼 1,100円(店内飲食)/1,080円(テイクアウト)
・例② どちらか片方だけの税込価格を表示する
からあげ丼 1,100円 ※テイクアウトの場合は税率が異なるため別価格となります。
飲食物以外の店内販売品は軽減税率が適用されないことに注意
飲食店において、食品やグッズなどを店内販売するケースもある。レジ前での菓子販売など、持ち帰りを前提とした販売は軽減税率の対象であるが、グッズ等の販売には軽減税率は適用されないことを注意しておきたい。これらも分かりやすく総額表示をすべきだろう。
インボイス制度が始まったらどうなる?
インボイスとは、取引ごとに消費税率を区分した請求書(適格請求書)のこと。インボイス制度は正式名称を「適格請求書等保存方式」といい、仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要になる。総額表示義務同様、インボイス制度も消費税に関わる制度のひとつだ。
総額表示の対象総額表示の義務付けはインボイスには適用されない。最終的な請求額である税込金額の記載さえあれば、個別の取引品目は、外税表記・内税表記のどちらを用いても問題ない。また、表記方法は任意で決めることができる点も押さえておこう。
飲食店経営者においては、店舗での総額表示ルールを今一度見直し、顧客への分かりやすい表記の徹底を図っていきたい。
