飲食店のコロナ対策、注意すべきは「マイクロ飛沫感染」。アクリル板だけでは不十分?
新型コロナウイルスの影響で、多くの飲食店が感染症対策に取り組んでいる。検温や手指消毒といった手頃な対策から、最近はテーブルにアクリル板を設置する店舗も増えてきた。これらの対策は本当に有効なのだろうか。
3月30日、国際医療福祉大学教授で感染対策のスペシャリストである和田耕治氏などが登壇したオンライン座談会「飲食店における感染対策について」が開催された。主催したのは大阪医科薬科大学准教授の伊藤ゆり氏。そのほか、大阪大学助教の村木功氏、千房株式会社代表取締役社長の中井貫二氏、弊社・株式会社シンクロ・フードの細川晃が参加。飲食店の感染対策についてクロストークが行われた。
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飲食店が注意したいのは「マイクロ飛沫感染」
新型コロナウイルスの感染者数が増加する中、飲食店利用における感染対策を今一度考えるべく開催された今回の座談会。まずは感染対策のスペシャリストで国際医療福祉大学教授の和田氏から、現在の感染状況や飲食店が気にかけておくべき感染対策について解説があった。
和田氏によれば、感染リスクが高まる場面は5つ。飲食店に関係するところでは、「飲酒を伴う懇親会」「大人数や長時間におよぶ飲食」「マスクなしでの会話」が挙げられる。
これらの感染リスクについては、これまでも政府から注意が促されてきた。飲食店はもちろん、一般市民にも情報が定着しているだろう。実際に首都圏の一般市民3,239人へのアンケートでは、「大人数や長時間に及ぶ飲食は感染リスクが高いと思いますか?」という質問に対して、リスクを感じている人は「そう思う」「ややそう思う」の回答を合わせると92.3%にも上った。
飲食店の利用者もリスクをしっかりと認識しているように思える結果だが、和田氏は「細かい感染経路に関して理解している人は少ない」と語る。特に感染の大きな原因となっている「マイクロ飛沫感染」についての理解度の低さを問題視しているようだ。マイクロ飛沫感染とは、飛沫感染と空気感染の中間にあたるもの。エアコンの風などで空気中にマイクロ飛沫が流れ、5~7mの範囲であれば感染に及んでしまう。
「日本では主に接触感染・飛沫感染への対策はしていても、マイクロ飛沫感染への対策があまりできていないお店が多いです。しゃべっているとどうしても目に見えない飛沫が出てきます。1~3マイクロの、重力で下に落ちていかない小さな飛沫が流れていき、それを吸い込んで感染することもありえます。大きなクラスターが発生したときには、このマイクロ飛沫感染が起きていると考えられているんです」
例えば、以下の居酒屋でのクラスター事例では、エアコンの風によるマイクロ飛沫感染の様子がよくわかる。黒い「〇」が初発患者、赤い「〇」が感染してしまった客・従業員、そして白い「〇」が感染しなかった客だ。
この居酒屋は、店内の入口側にエアコンがあった。時期は11月で肌寒く、窓も締め切っていたとされ、感染者の飛沫が図のような流れにのって感染したと予想されている。
そのほか、近隣国である韓国や中国でも、マイクロ飛沫がエアコンの風で流れて感染した事例がニュースで取り上げられている。どれほど頻繁に起きているかははっきりとしていないというが、「ずっと会話をしているような場所ではこのような感染が起きているのだろうと予想できます」と和田氏。この解説から明らかであるように、特に会話が発生しやすい飲食店では、接触感染・飛沫感染への対策に加え、マイクロ飛沫感染への対策が欠かせないといえる。
換気、黙食、客への呼びかけ……有効な感染防止対策は?
では具体的に、マイクロ飛沫感染の対策とは、どのようなことを行えばいいのだろうか。和田氏によれば、最も重要なのは換気すること。また、客に会話をできるだけ抑えてもらうことや、収容人数を調整することも大切だという。
実際に取り組みを行っている店舗や自治体もある。例えば、福岡のカレー店『マサラキッチン』が提案して話題となったのが、食事を静かに楽しんでもらう「黙食」。「感染リスクがかなり抑えられて、とても良いアイデアだと思います」と和田氏はいう。
あるいは、松戸市では客向けにポスターを作成。「料理を楽しみ 会話を控える」「飲みすぎない 長時間の利用は控える」などのメッセージを提示した。客に感染対策を直接お願いすることが難しい場合は、貼っておくだけで注意喚起になる。市全体で、感染が広がりにくい街づくりを行っている。