【前編】飲食店が「事業再構築」を進めるには? 事業計画見直しの具体的なコツを解説

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新型コロナの影響で消費者のニーズは少しずつ変化。これに伴い、業態転換を検討する飲食店も増えつつある。しかし、事業再構築と言われても、何から手をつければいいのかわからない経営者も多いだろう。そこで今回は、飲食店が事業を再構築する際に必要な取り組みや考え方を、2回にわたって紹介していく。
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コロナ系融資の据置期間中の今こそ、事業再構築の計画を立てる必要がある
この2年間で、新型コロナウイルスの影響を受けた飲食店の多くは、日本政策金融公庫か信用保証協会経由で、ある程度は必要な資金を調達できたかもしれない。しかし、コロナの影響は依然続いている。1回目に借りたコロナ融資の資金が枯渇し、2回目のコロナ融資による資金調達を必要とする中小企業も次第に増えているだろう。
また、当面の資金は手元にあるといった場合でも、据置期間(元本返済猶予期間)が終了すれば、手元資金を含めた元本返済が始まり、資金繰りを圧迫することは目に見えている。つまり、据置期間中の今こそ、既存事業からどのような新事業を展開するか、事業再構築の計画を立てる必要があるのだ。
事業再構築と言えば、事業再構築補助金を思い浮かべる人も多いだろう。要件に当てはまれば魅力的な制度であるが、新事業の内容や売上減少率など細かい要件が多く、申請サポートを受けるにも支援料が高額なケースが多いため、申請を断念するケースは多い。
とはいえ、新事業の構想を描くこと自体は決して無駄ではない。たとえ補助金の要件に当てはまらずとも、そのイメージを実際の事業再構築に活かせるからだ。そこで今回は、具体的に事業再構築を検討していくうえでのステップや、その考え方について紹介する。
まずはお店の強み、こだわりを明確にしよう
事業を再構築するにあたり、自店の強みを明確にしておく必要がある。その強みを活かすことで、事業再構築を検討していくことが大切だ。そこで活用してほしいのが、経済産業省が推進する「ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)」である。
ローカルベンチマークとは、「業務フロー・商流」、「4つの視点(経営者、事業、企業を取り巻く環境・関係者、内部管理体制)」、「財務分析」の3つのシートに事業にまつわる詳細な情報を記入することで、自社の経営状態や強みを把握できるツール。国が推進するツールであるため、補助金の申請や金融機関への相談時にも活用可能だ。
特にここで紹介したいのが、「業務フロー・商流」と「4つの視点」についてである。

ローカルベンチマークの「業務フロー・商流」を記入するシート
■業務フロー・商流
業務フローの主な目的は、自社の業務の流れについて整理しながら、「差別化ポイント(自社のこだわりや工夫)」を発見すること。飲食店の業務フローと言えば、仕入れ・仕込み→ご案内・オーダー取り→調理→提供→お会計というのが一般的な流れになるが、各プロセス(付随して発生する業務も含め)に、他店と差別化できるポイントがあるかを考えてみる。
一方で、商流とは取り引きの流れのこと。仕入先や協力先の選定理由などを洗い出すことで、自社のビジネスがどのような取引関係から成立しているのかを把握していく。この作業によって、仕入先(協力先)の重要性や変更の可能性を検討するきっかけにもなるだろう。
また当然ながら、顧客から選ばれている理由を知ることも、自店の強みを把握するうえでの大きなポイントになる。この時、業務フローの差別化ポイントが顧客に伝わっているのかについても考えておこう。
■4つの視点
経営者や事業、企業を取り巻く環境・関係者、内部管理体制という「4つの視点」から、企業の現状を整理していこうとするもの。それぞれの立場から多角的に事業を見つめ直すことで、新たな長所や短所が明確になる。
①「経営者」の視点
まずは、事業経営者の経営理念やビジョン、後継者の育成も含めた今後の展望などを改めて確認する。企業の規模が小さいほど、経営者が与える影響は大きくなりがちだ。
②「事業」の視点
次に、自社の強みと弱みを明確にするため、自社がどのような仕組みで、どのように利益を挙げているのかを明らかにする(IT化の取り組みについても)。
③「企業を取り巻く環境・関係者」の視点
続いて、客層の規模・競合店の動向、取引先・顧客との関係、従業員の満足度などを確認する。仕入先や取引金融機関へヒアリングを行なっても良いだろう。
④「内部管理体制」の視点
最後に、品質管理や情報管理体制は整っているか、事業計画・経営計画が従業員と共有されているか、商品・サービスの開発体制、人材育成の取り組みはどうなっているかなどをチェック。組織としての整合性はとれているだろうか。
これらのステップを通じ、会社の現状を見える化したうえで、次のアクションにつなげていく。
