12坪で月商700万円超え! 『一味玲玲』が行う、未来志向の販路拡大とリブランディング
アンテナショップ的な『餃子百珍 一味玲玲』、
実験的店舗の『一味玲玲はなれ』を続々オープン
2021年9月には、商業施設からの声がけをきっかけに、東京駅八重洲口に6店舗目となる『餃子百珍 一味玲玲』を開業。従来の店舗とは違う「味の新大陸 楽しい中華の旅 餃子を探す私の大冒険」といったコンセプトを掲げた。店名の「餃子百珍」は江戸時代に日本で出版された豆腐の料理本『豆腐百珍』にインスパイアされたネーミングで、わかりやすく餃子に特化した店舗であるとアピールしている。「拉麺百珍」などとしてブランド展開することも考えての店名だ。「『一味玲玲』=餃子のイメージを持ってもらいたく、このようなコンセプトにしました」と保志さんは語る。
餃子はどの店舗も中国出身の点心師が皮から手作りしており、富士高原の美豚と30種類以上のスパイスを使い、防腐剤や保存料、ニンニク不使用で仕上げたレベルの高い内容になっている。『一味玲玲』の餃子を真似しようとするお店も多いというが、餃子にかける原価率の高さと門外不出の秘伝のスープの再現が不可能のため、他店は真似できないのだという。
「『餃子百珍 一味玲玲』は東京駅という立地からもアンテナショップ的な位置付けにしており、色々チャレンジしています」と保志さん。例えば13〜17時の客足が減るアイドルタイムに、薬膳茶を提供しカフェ需要を獲得しようと試みている。13種類ほどの薬膳茶を、体調に合わせて飲んでもらうという面白い提案だ。実は保志さんは漢方の勉強をしながら、大井町にある『宝茶坊研究所』で薬膳をベースにしたお茶の研究も行っている。「今後はフルーツパーラーとコラボレーションして中国のエッセンスを取り入れたパフェをお茶と共に提供しようと計画しています」とアフタヌーンティー需要も取り込もうとしている。
2022年10月にオープンした『一味玲玲はなれ』も従来の店舗とは違い、実験的な店舗としている。
「従業員2〜3人で回せる規模の店舗としています。そしてこちらではクラフトビールやワインも取り揃え、今後は料理とのペアリングを提案できるような内容にしていきたいと考えています」と新たな取り組みを始める予定だと話す。
毎月のように新たな取り組みを行っている保志さんだが、どのようにアイデアを思いつくのだろうか。
「季節もののイベントとかもありますが、この材料が余っているとか、この時間が空いているとか、いろいろ課題があるじゃないですか。そこから何かできないかって考えていくと結構アイデアが思いつく、というのはあるかもしれません」
ネット販売をメインに、百貨店などでの惣菜販売も予定
保志さんがリブランディングを行って2年ほどが経ち、店の売上に変化はあったかと尋ねると「ほとんどない」と意外な答えが返ってきた。しかしリブランディングという種蒔きは、新たな事業という形で芽吹き始めている。
「近々百貨店で、『一味玲玲』の惣菜や餃子が販売されます。千葉に製造工場があるので、今後はオンライン販売だけでなく、店子や催事場など販路を広げていこうと思っています。オンライン販売も自社サイトだけでなく、食べログモールやぐるなびEC、dancyuや大人の週末などのサイトに出店しています。新たに白い麻辣醤と赤い麻辣醤も販売予定です」と新たなビジネスや商品開発に意欲的だ。
そんな保志さんに今後の展望を尋ねると、これまた予想外の答えが返ってきた。
「店舗自体、売上の目標というものは設定していません。あまり先のことは考えず、まずはクオリティを維持することを大切にしたいです。むしろ家族経営の飲食店ですし、いまの店舗数でも多い。優秀な人材確保も難しくなってきていますし、実店舗を減らしてオンライン販売やほかの販路を広げる方向に舵を切ると思います。僕らが面白いと思うものを、面白いと思ってもらえたら嬉しいですね」
長い目で飲食店の経営を考えたときに、先の見えない世の中において無闇な多店舗展開は確かにリスクになる。自分たちの規模に応じた経営方法で、実店舗以外の営業スタイルを模索するというのもこれからの飲食経営者に必要な視点だろう。保志さんからはそんな今後の飲食店経営に必要なヒントを教えてもらったように思う。
『一味玲玲はなれ』
住所/東京都港区新橋3-16-8 B1
電話番号/03-6435-9980
営業時間/16:00~23:00
定休日/土日祝