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個人飲食店も「賃上げ促進税制」対象に。40年ぶりの物価上昇率、下がる実質賃金

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画像素材:PIXTA

総務省は10日、東京都区部における2022年12月の「消費者物価指数」を発表。上昇率は前年同月比のプラス4%で、1982年以来40年ぶりの高い伸び率となった。こうした情勢を考慮し、多くの企業が賃上げに踏み切っている。しかし、激しい物価の高騰には追い付いておらず、実質賃金は下がる一方。飲食業界でも同様の傾向が見られる。

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東京都区部において、7か月連続の物価上昇

総務省が10日に発表した2022年12月の東京都区部消費者物価指数は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合が103.9となった(2020年=100、中旬速報値)。上昇率は前年同月比で4.0%。2022年11月の上昇率は3.6%で、伸び率は7か月連続でアップしている。生鮮食品を含めた総合指数でも4.0%の上昇を示した。

品目別では、生鮮食品を除く食料が7.5%と前月の6.7%からさらに伸びている。食用油は32.5%、炭酸飲料は15.6%上がった。電気代や都市ガス代も値上がりが続き、エネルギーは26.0%上昇している。

また、11月の全国指数は前年同月比で3.7%上がっており(東京都区部の指数は、全国の物価動向の先行指標となる)、全国的に著しい物価上昇が起こっていることがわかる。

総務省 報道資料「2020年基準消費者物価指数 東京都区部 2022年12月分(中旬速報値)」より

飲食店の平均給与も上向き傾向、しかし激しい物価上昇に追い付かず

こうした情勢のなか、すでに多くの企業が昨今の急激な物価上昇に応じた賃金の引き上げを実施している。日本商工会議所の調査によると、賃上げを行った理由について「物価が上昇しているため」と答えた企業は、2021年12月調査比で26.5%増加した。

日本商工会議所「商工会議所LOBO(2022年12月調査結果)」より

飲食業界の平均給与も、わずかだが上向いている。弊社の求人トレンド調査レポート(関東版)によると、2020年12月の東京都の平均時給データは1,136円(前年同月比-2円)、2021年12月は1,171円(前年同月比+35円)、2022年12月は1,207円(前年同月比+36円)と推移しており、少しずつではあるが上昇が見て取れる。

しかし、このような賃上げの動きが、激しい物価上昇に追い付いているとは言い難い。厚生労働省は6日、2022年11月の実質賃金が前年同月比3.8%減と、8年6か月ぶりの下落幅になったことを発表。食品や光熱費などさまざまな品目の値上がりに賃金の伸びが追い付かず、家計への圧迫を感じる人は多いようだ。

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2023年開始分の事業からは個人事業主も対象。「賃上げ促進税制」

そんななか、経済産業省は2022年4月より「賃上げ促進税制」を施行している。中小企業者等が前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度だ。2023年から開始する事業については個人事業主も対象となり、給与等の増加額の一部を所得税から税額控除できる。個人経営の飲食店も対象に含まれるため、賃上げを実行する場合はぜひ確認したい。

2023年の春闘について日本労働組合総連合会(連合)は、5%の賃上げ(ベースアップ相当分3%程度)を目標にすることを決定した。経団連も物価高を重視し、ベースアップを中心とする賃上げに理解を示している。今後の動きを注視していきたい。

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小晴

ライター: 小晴

美容系雑誌編集者・ライターを経てフリーライターに。品川区のローカルニュースサイト「品川経済新聞」記者として、多くの飲食店取材に携わる。趣味は食べ歩き・飲み歩きと銭湯。